眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

スマッシュ・ヒット(宇宙リリース)

2024-05-03 00:41:00 | ナノノベル
 長年培ってきたものが、サード・アルバムでついに爆発した。

最優秀アルバム賞…1位
最優秀作品賞…1位
ゴールデンアルバム賞…1位
アメージングアルバム賞…1位
エンターテイメント・アルバム賞…1位
モースト・インポータント・アルバム賞…1位
革命的アルバム賞…1位
今世紀最大のアルバム賞…1位
抱いて眠りたいアルバム…1位
天国まで持っていきたいアルバム…1位
レコード店員がおすすめするアルバム…1位

やったー♪

 あらゆるチャートを独占した。私は一気に一流アーティストの仲間入りを果たすだろう。生きてきた中で最高の充足感に包まれている。来年は忙しくなるぞ。
 プロデューサーは難しい顔をしてテーブルの前にいた。

「残念な知らせがある」
「えっ」
 今この時にそんなものがあるはずがない。

「発売禁止になるかもしれない」
「どうして?」
「国の方から待ったがかかった」
 原因はAIによる未来予測にあるらしい。私のアルバムはよすぎるために、危険と判断されたのだ。

「朝から晩まで君のアルバムを聴いてすごす人がいるそうだ」
「ありがたい話ですね」
「月曜日からだ」
「それで」

「困ったことになるらしいんだ」
「私の作品がわるいんですか」
「やりすぎたな。よすぎるんだよ」
「そんな馬鹿な話がありますか」
 法を犯したわけじゃない。日頃の行いに問題があったわけでもない。ただ純粋に作品を作り上げたというだけだ。

「国民の意欲を奪ってしまうというんだ。あらゆる意欲だ。創作への意欲。労働への意欲。愛することへの意欲」
「与えるということはないんですか」
「ああ」
「どこにそんなエビデンスがあるんですか」

「AIの指摘だ。それは絶対なんだ」
「人間の作ったものじゃないんですか」

 私は街へ飛び出した。
 どこまで行っても私の最新シングルがエンドレス再生されている。
 しかし……
 それもまもなく止められてしまうだろう。

(私はやりすぎてしまったのか)

 きっとこの国の市場(器)が小さすぎるのだ。
 10年に渡る活動期間を振り返りながら私は空を見上げた。
 大宇宙時代……。
 これからのリリースはあの先にある。

「星だ」





コメント
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