ロジャース委員会報告とは、スペースシャトル「チャレンジャー爆発事故」の調査報告書だ。
なぜ思い出したかといえば、兵庫県知事のパワハラ問題から。
なぜ爆発事故を起こし7名の乗員の命を失ったか、の原因の詳細な報告書だ。
スペースシャトルの技術的問題とともに、多くのページをさいたのは組織問題だ。
何回も発射延期になったチャレンジャー号、延期で寒い冬になり、ブースターの会社の技術者から真冬のOリングの危険性が何回もだされ、延期を求めていた。
会社のトップやNASAも、それを握りつぶしてGOサインを出してしまった。
技術者の懸念を無視した組織の問題、技術者=現場とみれば、兵庫県の「組織」とダブってくる。
現場(=技術者)からの声を聴こうとしない「組織」、最近はリーダシップばかりが強調され、トップダウンを良しとする「組織」の風潮がある。
「組織論」における今回の兵庫県知事はどうだったのか。
あまりにも「裸の王様」になっていたのではなかったか。
個人の資質だけでない問題の把握も必要だ。
そういえば、自民党の総裁選が始った。
自民党の組織も、国民からかけ離れてしまっている。
聞くのは財界とアメリカの声だ。
裏金問題、統一協会問題・・・誰もきちんとふれようとしない「よごれたコップのなかの争い」だ。
そもそも「組織論」以前の問題だ。
追 記
ロジャース委員会に、ファインマン図で有名な量子力学者のリチャード・ファインマン氏が参加していた。
氏はシャトルの故障率が10万分の1ということに疑問を持ち、技術者に匿名で計算させたらなんと大半の技術者が50分の1から200分の1の確率で大きな事故が起きると指摘した。まさにそれが現実となってしまった。
こうしたことも含めて氏は、NASAの安全思想に批判的な報告書を書き上げ、これを採用しなければ報告書の署名はしないと拒否した。
その結果、格下げされたが「付録F」として残された。
この「付録F」の最後に有名な言葉がある。
「For a successful technology, reality must take precedence over public relations, for nature cannot be fooled.」
エンジニアを志す人にとって重要なものだ。
技術を成功させるためには、PRや体面より現実を優先せよ。自然はダマせないから。
これは哲学的にいうと「唯物論」に位置するものだ。