毎日新聞のデジタル版・医療プレミアの記事で、え~っ!?と驚くものを見つけた。アメリカの調査だけれど、日本で実施したら一体どんな結果になるのだろう。
以下、転載させて頂く。
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「代替医療でがんは治癒する」と4割が回答、米調査 2018年11月13日 〔毎日新聞医療プレミア〕
エビデンスに反し、米国人の10人に4人が代替療法でがんは治癒すると考えていることが、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が実施した意識調査から明らかになった。調査では、米国民の多くががん患者に対してはオキシコンチンなどのオピオイド系鎮痛薬の使用を制限する規制に反対しており、医療用大麻の使用を支持していることも分かった。また、がん治療費の高さが米国民にとって主要な懸案事項となっていることも示された。
ASCO会長のMonica Bertagnolli氏は「この調査結果は、がん関連の課題を米国民がどのように考えているのかを示すバロメーターとなるものだ」と説明している。その上で「今回の調査から、早急に取り組むべき重要な課題が浮き彫りになった。具体的には、がん治療に関する誤った情報を正すこと、患者が確実に必要とする鎮痛薬を使用できるようにすること、患者やその家族が経験する経済的な負担を軽減することなど多岐にわたる」と話している。
調査は約4,900人の18歳以上の成人を対象に7月から8月にかけて実施された。そのうち約1,000人はがん患者または経験者だった。また、対象者にはがん患者を介護する家族も含まれた。
その結果、これまでの研究で標準治療を受けたがん患者と比べて代替療法のみを受けたがん患者では、がんによる死亡率が大幅に高いことが示されているにもかかわらず、回答者の39%が「酵素療法や酸素療法、食事療法、ビタミン剤やミネラル剤でがんは治癒する」と考えていることが分かった。
ASCOのチーフ・メディカル・オフィサーであるRichard Schilsky氏は「がん治療を選ぶ際には、適切に実施された研究から導き出されたエビデンスに従うのが最善の方策だ。代替療法のほとんどは厳密に有効性が検証されていないか、検証されていても患者への有益性は認められていない」と指摘している。
なお、今回の調査では、高齢者よりも18~53歳の若年層や中年層で代替医療の信頼度が高いことも分かった。しかし、代替療法のみを受けたがん患者の死亡率は外科手術や化学療法、免疫療法、ホルモン療法などの標準治療を受けたがん患者の約2.5倍であることが2017年8月に「Journal of the National Cancer Institute」に掲載された論文で報告されている。
調査ではその他、回答者の4分の3がオピオイド系鎮痛薬の処方を厳格化する新たな規制について「がん患者には適用すべきではない」と答えていた。また、過去12カ月以内に疼痛管理などの目的でオピオイド系鎮痛薬を使用したことがあるがん患者の40%が「鎮痛薬を入手しにくかった」と回答していた。さらに、回答者の10人中8人以上が「がん患者が医療用麻薬を使用することに賛同する」と答えたが、過去12カ月以内に医療用大麻を使用したことがあるがん患者の48%が「医療用大麻を入手しにくかった」と回答した。
そのほかにも回答者の57%が「がんと診断された場合の心配事は、主に家族の金銭的な負担や治療費」と回答しており、死に対する恐怖やがんに関連した疼痛、苦痛よりも金銭的な負担の方が大きな不安をもたらしていることも明らかになった。
(HealthDay News 2018年10月30日)Copyright © 2018 HealthDay. All rights reserved.
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代替医療でがんが治癒したら標準治療など要らないではないか。もちろん、たまたま治った方がいるかもしれないけれど、それが本当に代替医療の成果であるとは限らない。がんという病、そうそう甘くはない。もしそれで皆が完治するのだったら、代替医療などという名称ではなくとっくに標準治療すなわち保険適応の治療になっている筈なのに、皆、どうしてそれに気づかないのだろう、と哀しく思う。
先日、患者会の席でも話題になったのだけれど、抗がん剤治療はキツい副作用も色々あるし、確かに楽ではない。そして一旦再発・転移してしまえば、期間限定ではなく一生付き合うことになり、ここまで我慢すればおしまいという目標がないから、それも辛い。
「いつまでなのだろう、こんなに頑張ったところで結局延命にしかならない。治癒は望めない。それなのに、なぜ、こんな辛い思いを・・・」と、負の螺旋の思考に陥ると、身体に優しい(とささやきかける怪しげなサイトの)代替医療に逃げたくなるのもわからなくはない。けれど、代替医療だって副作用が皆無ということはないだろうし、良薬口に苦し、ではないけれど、そうそう甘いだけの治療など、ない。そこで限られた貴重な時間を費やした挙句、やっぱりこれでは治らない、もうダメだと思った時に標準治療に戻ってきたところで、時既に遅し・・・と悲劇も多々あるだろう。
再発・転移治療は化学療法がメインになるけれど、その目的は完治ではなく、少しでも長く今のQOLを落とさずに、副作用をうまくかわしながら出来るだけ多くの治療薬の恩恵に浴してがんと共存していくかということだ。がんの治療には当然体力も必要。体調が悪ければ悪いほど身体に対する抗がん剤のダメージは大きく、副作用も酷く出るようになるわけだ。だから、身体が治療を受け付けなくなったらいくらまだ使っていない薬、効くかもしれない薬があっても、残念ながら治療継続は難しくなる。
今やっているこの辛い治療は一体何のため?このことをきちんと理解できていないとエンドレスの治療をココロ穏やかに続けることなんて到底不可能だと思う。今後出てくるであろう様々な不調をなるべく後回しにするために、言葉は悪いけれどいわば時間稼ぎのために今の治療がある。今ある程度具合が悪くても、未来を出来るだけ楽にするための治療である。今は辛いけれど、やらなければ未来はもっと辛くなる、もしくはもっと辛い未来が足早にやってくる。だから、今辛いのは我慢する。それが再発治療のセオリーだ。これが充分理解出来ていないから、今辛いのは嫌、楽な治療があるならそちらに逃げたい、ということになるのだろう。
もちろん、初発の治療と違って、再発・転移治療は完治を目指すために徹底的に叩くわけではないから、そのあたりは主治医とよくよく相談して薬量の匙加減を工夫する。副作用が酷くて、がんは小さくなったけれど、日々寝たきりになってしまったら一体何のための治療かわからなくなる。だから再発・転移治療は副作用調整がキモなのである。副作用止めの薬の恩恵を最大限に受入れながら少しずつ前に進む、わけである。
4割の人が代替医療を信じているという衝撃の事実に心が痛む。しかも分別有る世代の人たちが、実際のがんサバイバーたちが、である。
化学療法をエンドレスに続けていくことは金銭的に大変なのは事実だ。新薬ならばなおさらだ。それでも保険適用の標準治療であれば、高額医療制度で還付される。一方、保険適用外の自費診療である代替医療はそんな還付はない。とんでもない高額になっても1銭も還付されない。しかも完治することはなく最終的には放っぽり出されるのだから、これは決して賢いお金の使い方ではないと思うのだけれど。