ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2010.2.8 中学受験雑感

2010-02-08 20:12:45 | 日記
 中学受験が一段落して、塾の「御三家中学合格○○名!」等とうたった合格実績チラシが舞い込み始めるようになった。

 2年前、我が家はその渦中にいた。ちょうど2月1日の第一志望の中学校に息子を送り届けて、その足で、今、お世話になっている病院にセカンドオピニオンを受けに行った。再発治療開始と中学受験の本番が同時並行だった。

 息子に当日の動きは内緒にして(これまで治療していたのが実は乳がんという病気であること、更に再発したことをきちんと説明したのは中学に入学して1ヶ月が経過したゴールデンウィークだった。)いたので、「(前泊した)ホテルの近くで待っているから、試験が終わったら携帯に連絡してね。」と言って別れたけれど、実際に連絡を受けたのは病院のロビーだった。(前日出かけるときに私が大きなCTフィルムを持っていたのに息子が「それは何?」と気がつかなかったのは幸いといえば幸いだった。)
「ごめんね。急にお仕事が入って迎えに行けなくなった。パパが代わりに迎えに行くから2人で美味しいものを食べて気をつけて帰ってきてね。」と言って電話を切った。
 帰り道にカツラ屋さんまで足を伸ばし、試着したり、サイズを測ったりして帰宅した。

 みんなが舞い上がっていたのか、夫は前泊したホテルに受験票のコピーを忘れてくるやら(部屋の掃除を終えたホテルから驚いて電話があったそうだ。「明日が発表なので取りに行きます。」と答えたという。)2人でお昼を食べたレストランに息子がお財布を忘れてくるやら(これについても電話をして、翌日の合格発表時に回収できた。)、中学校がある駅近辺によほど去りがたいものがあったのか、それなら結果オーライか、と思ったけれど、残念ながら不合格であった。

 なんのご縁か、現在通っている病院への通り道に当時通っていた塾の本部校舎がある。
「がんばれ 中学受験生」のポスターを毎週のように見ることになった。地方に受験に行ったときにお世話をしてくれた担当の方とすれ違うこともあった。先方は覚えていなかっただろうけれど、声をかけるのも憚られてなんとなく会釈だけして通り過ぎた。

 去年の2月1日は日曜日で、息子は漢検を受けに行っていた。
受験が終わって半年過ぎて、息子が元気に今の中学に通う夏になっても、私は塾のカバンを背負った小学生を見ると心臓がばくばくして涙が出てくるような状態だった。そうして1年経過しても、恥ずかしながら私の方がまだ吹っ切れていなかった。

 今年の2月1日も当然学校は休みで、自宅で好きに過ごしていた。
高校受験がないのですっかり「中2病」(やらなければいけないことはたくさんあるのに、それをないことにしてだらけている病気―本人の弁)でゆるみきった毎日である。カバンを背負った小学生を見ると、いまだに胸が苦しくなるけれど、それでもようやく心の中で「がんばれ」と言えるようになった。

 中学受験の過酷さは経験してみないとわからないことだろうと思う。知らない人からすれば「小さな子どもを夜遅くまで塾に缶詰にして、毎晩送り迎えまでして、親の自己満足で、ばかじゃないの」と思われるかもしれない。私自身公立育ちだったので、中学受験を一度経験してみて、もしまだ他に子どもがいてもトライさせる元気はない。
 土日もお盆もお正月もほとんどなく、自分の大学受験の頃よりずっと勉強していたのではないか、と思う。それでも第一志望校に入れる子どもは3分の1。その事実がわかっていても、親も子も「ここまでやったのだからと、どんどん後に引けなくなる。自分の子が残りの3分の2になることはない・・・」かのように思ってしまうイケイケの雰囲気。

 チラシには満面の笑顔で「おめでとう!第一志望合格!」と掲載されている子どもたち(似顔絵もある。)。
 1年後、2年後、この子達がずっと笑顔のままで、幸せになっていてくれればいいけれど、としみじみ思う。
 息子の学校でも特待生で入学したものの、その後素行不良で退学したり、超難関校確実といわれつつ受験前日に怪我をして、不本意ながらこの学校に進まざるを得ず、結局やる気をなくし、やはり去っていった同級生がいるという。

 子どもにとっても親にとっても何が幸せなのかわからない。
 もちろん子どもの幸せを願わない親はいない(児童虐待等の話を聞くにつけ、そう思いたい、とトーンダウンせざるを得ないのだが・・・)のだから、みな子どものためを思って、良かれと思ってしていること。
 けれどとにかく元気に毎日学校に行ってくれるだけで幸せだ、と思うとともに未来を担う子どもたちの幸せを心から祈りたい。
コメント
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