おはようございます。 生き生き箕面通信1493(130123)をお届けします。
・ついに「悪いインフレ」(スタグフレーション)の道へ――ルビコン河を渡った安倍首相
政府と日銀が昨日1月22日に共同声明を発表し、「物価を2%上げる」政策へまっしぐらの方針で共同歩調を取ることを決めました。安倍首相が、白川日銀総裁を腕力でねじ伏せた結果です。しかし、2%物価上昇のための具体的な手段は「日銀による無制限の金融緩和」です。
これが行きつく先は、スタグネーション(停滞)とインフレーション(物価上昇)が合体した「スタグフレーション」だといえます。つまり、物価だけが上がり、景気は一向によくならず、したがって給料は上がらず、結局、庶民は物価上昇に苦しむだけ、という最悪の事態です。
なぜ、そう断じるのか。これまで金融緩和は十分にやってきたではありませんか。事実、企業には、かつてないほどの内部留保があり、資金は余っています。しかし、モノが売れないから、投資を控えてきました。モノが売れるためには、庶民の懐が潤い、将来の生活に安心感を持てる時でなければ、支出を増やすことにならないのは実証済みです。つまり、給料が上がり、社会保障にも信頼感が持てなければ、消費は増えないのは分かり切ったことではないですか。
アメリカでも、中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ理事長が「ヘリコプター・ベン」の異名よろしくヘリコプターからドルをばらまくような形で金融緩和しましたが、景気はさほどよくなっていません。雇用もそれほど改善されていない。
それでも、安倍首相はドヤ顔のアベノミクスで、「日銀にじゃぶじゃぶお札をばら撒かせる。すると、世の中は将来はインフレになるという見通しを持つようになり、物価が上がる前にモノを買うようになる。モノが売れれば、企業は投資をするようになり、経済が成長に向かって回るようになる」というシナリオを吹聴しています。
これに対し、日頃は政権の広報機関の役割を果たしている読売新聞ですら、本日の社説では「物価がうまく上昇しても、実体経済が浮揚せず、雇用拡大や賃金上昇が伴わない『悪い物価上昇』では、国民生活がかえって脅かされる事態すら懸念される」と、心配しています。
今年の”春闘”に対しては、労働側の連合が「1%の賃上げ」と極めてささやかな要求を出しました。しかし、経営側の経団連は、「実施の余地なし」とつれないどころか、従来アンタッチャブル的な扱いだった「定昇」に対してすらも切り込む姿勢です。安倍首相がいくらカネや太鼓を叩いても、経営側は「聞く耳」持たぬ頑迷さをあらわにしています。賃金は上がるどころか、切り下げられる恐れが現実的なのです。
こんな状態で消費は増えるでしょうか。そもそも、もうそれほど欲し物はない人が多くなっています。成熟社会では、いくらカネをばらまし、カネや太鼓ではやし立てても、消費は「間にあっている」のです。それに日本の人口は減っています。モノを買ってくれるマーケット事態が縮小しているのです。 「モノは売れない」構造に変わってきていると考えるべきです。それでも安倍政権は、日銀をお札を刷って国債を買わせる「お札印刷マシン」とし、「打ち出の小づち」として利用することにしました。
アベノミクスでカネをじゃんじゃん供給させる政策は、円をだぶつかせますから、円安に振れるのは確実です。外国からはさっそく批判が始まっています。朝日新聞の本日朝刊2面では「ドイツ連邦銀行のワイトマン総裁が『日本では不当な干渉が見られる。(阿部)新政権が中銀の独立性を脅かしている』と、異例の名指しで日本政府を批判した」と伝えました。
アベノミクスは、当面の短期間は「少し景気がよくなるかな」と思わせる場面があるでしょうが、それはごく短期間に賞味期限切れとなり、あとは「悪いインフレ」の側面ばかりが現れるのは確実です。本当の「日本沈没」に向けて、安倍首相はルビコン河を渡ったといえるのではないでしょうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます