alternativeway

パリ、カフェ、子育て、サードプレイス、
新たな時代を感じるものなどに関して
徒然なるままに自分の想いを綴っています。

犠牲の母

2012年02月13日 | 女の生き方

 「みきちゃんさ、あんまり頑張らない方がいいんじゃない?
私の知り合いでね、おっぱいにがんばりすぎて疲れたのか
そのあと離婚しちゃった子もいるよ」


 かつて住んでた団地のエレベーターの前 で 友達が
心配そうに言っていた。その頃の私は義理の母の教えにならって
母乳至上主義みたいになっていて ミルクは駄目だと思ってた。

 「吉村医院にはね ミルクの箱すら置いてないのよ!
ミルクの箱を見るだけでお母さんはおっぱいを出そうって
気にならなくなるんだって!」そう言われたのを覚えてる。


 そうして私は体調がどんなに悪くなってても
どんなに身体がもたなくっても やたらとおっぱいで
がんばって その反動でケーキを食べては 何度も
母乳マッサージのところに通ったりした
そうしてそれでもおっぱいやら 布おむつやらを
私は続けていたけれど 結局のところ 私は
桶谷の先生が言ったように「あなたは犠牲の母」だったようで
そんなことは喜びでもなんでもなかった。
ミルクあげたっていいじゃないか?
そうまでして私はしんどくても母乳をあげないといけないのか?
子どものために?


 子どものため って何なのだろう?

 27歳で結婚をした私は28歳で子どもを産んだ。
それはほとんど旦那になった人のためだった。
彼は見るからに子どもが好きそうな人で 私は見るからに
子育てなんて向いてなさそうな人だった。
私の友達は全員目を丸くして「どうして美樹が
専業主婦で子どもがいるの??信じられない!」と
3年がたってみたって 同じ反応を繰り返す。

 私だって 同い年の人たちのように
ファシリテーションだとか ソーシャルベンチャーだとか
そんなカタカナ言葉のついた 楽しそうな集まりに
いつも関わっていたかった。だけど私には無理だった
行ったって子どもが泣くしぐずるから。
ミーティングに無理矢理いかせてもらったこともあるけれど
みんなが普通に入る定食屋には1歳の子どもは入れない。
そこで何を食べろというのだ?そこで息子がぐずって泣き出した時
私はほんとうにやるせない気持ちになった。
おっぱいが欲しいのはわかっていても
どうやってこの学生街の定食屋の一角で
息子におっぱいをあげられるだろう?そんなのは無理なことだった


 私だって 誰かのため と 思ってた

 でもそんなのは何でもなかった

 それが今になってよくわかる。

 私がこの人のためだと思って子どもを産むことにした人は
「子どもが熱を出したくらいで電話してくんな」と言った。
その後子どもがインフルエンザになって寝込んで合併症になったといって
2人して布団の上で穏やかに死んでたとしても
電話をするなということだろう 葬式にくらいは来るつもりはあるのだろうか
そんな「誰か」のために 沢山のものを犠牲にしていた
そんな生活 辛かっただけの生活なんて もうやめにしたのは
一生「犠牲の母」を続けて行くより よっぽどよかったとやっと思えた。

 「誰かのために生きてみたって」とミスチルは歌ってた。
「あなたの人生も大切にしなさいよ」と子どもを産んではじめて
フランスに行った時に会った人が語ってくれた。その時どんなに驚いたことか!


 「私の人生も考えていいの??」


 それは目を丸くするほどの驚きだった

 捨てなさい 諦めなさい こだわらないこと


 子どもを産んだあとから女たちは私にこう言って来た。
電話口で 電車の中で バスの中で 次々に開かれた口はそう言った。
私の人生は 私が大学にまで行ったのは 蓮太郎という子どもを
産むためだったのだろうか?「そうよ そんなことどうでもいいのよ」
それが私が子どもを産んで出会った女たちの共通した答えだった。

 この国に オルタナティブなんてないと思う。
アフリカよりはましかもしれない。でもそこまで
大差ないと思う。女たちの自由度は 一見ありそうにみえるけど
「結婚」というものをしたら「子どもを産め」という圧力がかかり
相当恵まれた職場にいたわけじゃないとその後の人生は
幼稚園ママ、PTA、そしてボランティア。
そして何かをしようとすると
「あなたは緒方貞子さんじゃないからね」と言われておしまい

 結婚をして 幸せじゃなかった人は?
幸せじゃない結婚を40年も我慢して 仮面夫婦になるか
熟年離婚を待てばいいの?


 結婚をしたらそれで幸せ。子どもがいればそれで幸せ。
たとえそれと引き換えに沢山のものを失ってても
「幸せ ということになっているから幸せなはず。」
そうじゃなかったら?「お前が間違っている」ということになる
たった一つの価値観しかないこの国で 苦しんでいるのは
私だけなのだろうか?

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