親孝行のつもりで
月に一回は屋久島に里帰りする
１人では島に行けない母親だから
たったの一泊二日だがお供する
僕に与えられた限られた時間の
唯一の親孝行の一時だ
母は
その後一週間ほど屋久島の家に残り
１人で鹿児島に帰ってくる
その僅かな時間を使って釣りに出た
久しぶりの釣りに
時間を忘れる母
釣り糸を垂れるだけの楽しみでもと・・・
思った矢先に
魚が食いついた
ベラに続いて
カサゴ（アラカブ）とカゴカキダイだ
数十年ぶりに
母の誇らしげな笑顔を見た
島の家には花がいっぱいだ
ゲットウの花に迎えられて
我が家に入ると
玄関には
真っ赤に咲き誇るベゴニヤ
庭にはオオタニワタリを囲むように
アガパンサスの花と
カノコユリが踊っていた
隅っこに隠れていたミョウガの花
ベランダを覆いかぶさる時計草（パッションフルーツ）
長生きをしてくれと
長命草（ボタンボウフウ）が
両手両足を広げたように
ボタンのような
真っ白な花を咲かせるために
蕾を一杯に抱えていた
屋久島の我が家は
僕らの帰島をいつも歓迎してくれる
美しいふるさとの風景に出会った
長野県にある
高橋まゆみ人形館が描く風景だ
日本人の心の風景だ
お爺ちゃんがいて
お婆ちゃんがいて
親子三代の
毎日の夕食の団欒の風景だ
互いに思いやりながら
一家の大黒柱のお父さん
掃除洗濯
朝昼晩と食卓に花を咲かせてくれるお母さん
一生懸命に生きている普通の日本人の風景だ
これ以上の幸せはないのに
新しい時代の日本人は
一体全体
どこに向かって
何を望んで
生きていこうとしているのだろう
優しさとは
求めるものではなくて
与えるもの
幸せとは
求めるものではなくて
与えるもの
喜びとは
目の前の人の嬉しそうな笑顔
そんな自分になれなくて
重い頭を抱えている自分がいる
人が本当に幸せになれる瞬間は
目の前の愛する人が
ただひたすらの笑顔で微笑みかけてくれる時