KONA WIND-南の風- iBS学院長・南 徹ブログ

アメリカ人に英語を教えていた日本人が外語学院を作った。その学院長が、日本を、世界を斬るブログ!!

死に直面して~その7~

2007-10-04 23:16:21 | 九死に一生物語

僕は海が大好きだ。
人工の世界から完全に開放される身近な世界は、海しかない。
人は、なぜ海に魅せられるのか?
母なる大地という言葉があるが、それ以上に、
海は、母親の懐に抱かれているような心地よさを感じられる、
唯一の場所なのかもしれない。
海で危険な目にあったことは何回もあるが、
それでも、性懲りもなく海に行く。

今回も、弟の琢磨との釣りに行った時の体験だ。
硫黄島の釣り場の岩礁に瀬渡しされたのは、
まだ明けやらぬ早朝5時過ぎだった。
二人がやっと乗れるくらいの岩場に下ろしてもらった。
瀬の下3メートルくらいの所に波が打ち寄せ泡立っている。
絶好の黒鯛ポイントだ。
撒き餌をして、竿を出した。
すぐに竿がしなった。
大きな尾長黒鯛だ。
立て続けに5匹ほど吊り上げた。
入れ食いだ。
興奮して、無我夢中だった。

釣り針に餌をつけようと、下を見た瞬間だった。
突然の大波が、僕を襲った。
体が宙に浮いたかと思ったら、
そのまま3メートル下の海の中に飲み込まれてしまった。
ゴムの磯靴と寒さよけのズボンが重くて、泳げない。
真っ白で何も見えない。
もがくと、岩に叩きつけられる。
すぐに、意識的に海の中に潜って、岩から離れた。
ゴム靴は脱ぎ捨てた。
釣り場から少し離れた場所で、海面に浮かび上がったら、
岩の上から、弟が、僕の名前を呼び続けているのが聞こえた。
大丈夫だと手を振って、大きな波が静まってから、長い竿を下に下ろすように指示した。
波が収まった頃を見計らって、岩の近くまで泳いで帰り、
竿の先を掴んで、小さな波が来るのを待った。
波に乗って少しずつ上のほうに這い上がった。
竿を強く引くと竿が折れる。
波と竿の力のバランスを考えながら、三回ほどの波に乗り、
岸に這い上がった。
竿の先は折れたが、命には代えられない。
もしこの時に、僕をさらったような大波がまた襲ったら、
今、僕はここには存在していないかもしれない。
釣れた獲物も、クーラーボックスも、僕の竿も、着替えも
全部流れていった。
海面を流れるたくさんの漂流物を見つけて、
漁船が慌てて走ってきた。
情けない姿のまま、漁船に乗りこんだ。
でも、このまま帰るのはしゃくだから、
今度は、大きな広い岩瀬に下ろしてもらい、
ずぶ濡れのズボンとシャツを脱いで、よく絞って、
乾いた岩の上に干しながら、濡れたパンツ姿で、
弟の折れた竿と船頭から分けてもらった餌をつけて、
苦笑いでごまかしながら、また釣りを始めた。
今度は、一匹も釣れなかった。
まさに、釣りバカだ。


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