語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【社会】IT利権か、公共事業か ~マイナンバー~

2013年06月17日 | 社会
 (1)勝栄二郎・前財務省事務次官は、在任当時、「10年に一度の大物」「スーパー理論家」と言われ、その圧倒的な影響力から、菅直人、野田佳彦の両政権は「勝政権」「直勝内閣」などと呼ばれた。
 この勝次官(当時)が、「社会保障と税の一体改革」つまり消費増税を国会に通す原動力になった。
 昨年7月、次官をしりぞき、8月17日に退官。それから間もない11月19日、インターネットイニシアティブ(IIJ)特別顧問に就任。今年6月の株主総会後、代表取締役社長に就任する。
 消費増税という歴史的な大仕事の土台をつくった「大物」の天下り先に注目が集まっていたが、メガバンクの重役ではなくてインターネット関連企業への再就職は、当時、周囲を少なからず喫驚させた。

 (2)が、ちっとも驚くことはないのであった。
 マイナンバー法が、5月24日、参議院本会議で成立した。
 マイナンバー制導入のため、各省庁や自治体がシステム整備を構築していくのはこれからだ。
 役所に睨みがきき、かつ、永田町にも顔がとおる勝・前次官は、インターネットイニシアティブにとってまたとない「対外交渉力」となる。事実、同社ホームページによれば、勝・前次官の社長就任の目的は「事業運営における対外交渉」だ、とある。
 財務省の元トップが、天下り先企業の次期社長として、マイナンバー事業の受注を狙う・・・・。

 (3)マイナンバー法施行によって最初に生まれる「特需」は、行政のシステム構築市場だ。
 政府は、新システムの導入費を350億円(2014年度)、既存システムの改修費を最大2,350億円(同)と見積もる。
 マイナンバー法案が衆議院で可決された5月9日、参議院での可決にも見通しがついたことで、東京株式市場では情報システム関連の株価がのきなみに上昇した。
 <例>NTTデータ・・・・10%も上昇し、一時は制限値幅の上限(ストップ高)まで上げた。同社は、官公庁向けシステムインフラ整備を手がける。住民基本台帳ネットワークが導入された2002年にもシステム整備にたずさわった。今回は当時のノウハウを活かしていく、と岩本敏男・同社社長みずから宣言している。
 NTTデータ以外にも、アイネス(自治体向けシステム構築を手がける)、ソフトバンク(個人情報の「ビッグデータ」分析の重要性を説いてまわる)の株も急上昇した。

 (4)マイナンバー法成立の背景には、IT利権がある。マイナンバー制を導入するのも、システムを変換、改修するのも、巨大な公共事業になる。【石村耕治・白鴎大学教授/プライバシー・インターナショナル・ジャパン代表】
 今回のマイナンバー法は、医療情報と個人情報の民間利用を除外した。
 しかし、経済界の要望は根強い。3年後の法改正では、民間利用が認められる可能性が高い。
 経団連の報告書「公共データの産業利用に関する調査結果 概要」には、次のように記されている。
 <「情報」は、ヒト、カネ、モノに並ぶ、第4の重要な経営資源となっている。とりわけ、国・地方公共団体などの行政機関が保有・公開している公共データは、信頼性の高い基礎データとして、民間での活用ニーズが高い>

□本誌取材班「個人情報流出で米韓では社会問題化 ~IT利権か公共事業か~」(「週刊金曜日」2013年6月7日号)

 【参考】
【社会】「監視社会を拒否する会」 ~マイナンバー~
【官僚】マイナンバーで焼け太る官僚とITゼネコン
【社会】税務署の所得把握が会社員に厳しくなる ~マイナンバー~
【社会】個人番号報道に見るメディアの「国家観」 ~マイナンバー~
【社会】「監視社会を拒否する会」 ~マイナンバー~
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