語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>福島産忌避は風評被害でなく消費者の知恵

2011年12月17日 | 震災・原発事故
 秋山豊寛・農民/元宇宙飛行士は、福島第一原発から32kmの阿武隈山系の中腹に農場を15年間経営していた。
 原発爆発後の3月12日14時半、秋山氏は逃げ出した。
 1930年代までは強いレントゲンを妊婦に照射していた。白血病や流産が多いので調べてみると、レントゲンが原因だった。学者の大好きな統計学有意差が出た。検査対象者の安全確保が第一ではない、という点で、山下教授らが全県民を対象に実施している健康調査も同じだ。人体実験だ。
 モルモットになるのは嫌だし、「直ちに健康に影響がない」と言われても、直ちに信じられないので逃げ出した。
 秋山氏は、原発事故をめぐる闘いの最前線はいくつかある、という。

(1)安全宣言に対する闘い
 「放射線量が低ければ大丈夫」という行政と原子力ムラを挙げての安全宣言に対する闘いだ。
 山下俊一・福島県立医科大学副学長/福島県放射線アドバイザーのように放射線学の主流だった人たちが中心になって安全を宣伝している。
 WHOが定めた水道水の安全基準は放射性ヨウ素10Bq/kgなのに、政府の暫定基準値は300Bq/kgというでたらめな数字だ。
 こうした基準をもとにコメが栽培・出荷されている。セシウムは暫定規制値以下だが、「非検出」ではない。良心的な人は売らない。特に有機農家は、作ったけれど売らない、という決定をせざるを得ない。秋山氏はシイタケ農家だったが、今年から営農を中断している。キノコ類はセシウムを吸収しやすいからだ。
 秋山氏の仲間が、今春、試しに栽培したところ、出荷できない数値が出た。
 農作物は作ってみて規制値以下なら出荷できるし、規制値を超えていれば補償される仕組みだ。
 暫定規制値以下でも福島県の農作物を買ってもらえないのは、風評被害ではなく、消費者の知恵だ。

(2)補償問題
 政府や行政の測定は後手後手にまわっている印象があるが、これはむしろ調べないようにしている、と見るべきだ。調べて数字が出たら補償の根拠になってしまうからだ。
 自分で測らないといけない時代だ。
 シイタケ農家は、ほんとうは今ごろ来年のホダ木を準備している時期だ。
 農政局は、とりあえず3本切っておがくずが全部基準以下だったら伐採を始めてよい、と指導している。そんなことをやっていたら、原木を切り出すころには雪が積もってしまう。
 そもそも原発にはまだ蓋がされていない。風向きによっては放射性物質が飛来する可能性がある。
 農業ができず、落ち込んでいるのではないか、と心配してくださる方がいる。
 「私は被災者ではありますが泣いて過ごしているわけではありません。怒りに燃え、血がたぎっているので大変元気です」

 以上、秋山豊寛(元宇宙飛行士)「福島産忌避は風評被害でなく消費者の知恵」(「サンデー毎日」2011年12月25日号)に拠る。
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