(1)原子力損害賠償紛争審査会は、2011年8月5日、「原子力損害の範囲の判定等に関わる中間指針」を出し、同年12月に追補、今年3月に第二次追補が出た。
中間指針は、あくまで最低基準で、それを理由に東電が賠償請求を拒むことはできない。【原子力損害賠償紛争解決センター(文部科学省が設置)】
(2)東電の請求書作成資料には、福島県からの避難者以外に、県外在住者が記入する欄がない。
(3)茨城県牛久市在住のK氏は、今年3月、自宅の除染費用などの賠償を請求するべく東電・福島原子力補償相談室に電話した。応対した女性相談員いわく、
「福島県外の個人で賠償を求めてきたのはあなただけです」
「みなさん多少の不自由は我慢しています」
「政府の作った原子力損害の判定に関わる中間指針では、茨城県の個人は賠償の対象外です」
(4)K氏は、今年4月、原子力損害賠償紛争解決センターに和解の仲介を申し立てた。
(a)紛争の問題点・・・・賠償を承りません、と東電に言われた。
(b)生活費が増加した分の賠償・・・・浄水器(20数万円)、除湿乾燥機、掃除機、放射線量計、除染作業用具、雨水タンク、など。
(c)その他に要した費用の賠償・・・・放射線検査や除染のための費用。
(d)精神的損害への賠償。
(e)土地家屋の価値が下がったことへの賠償。
(f)(b)+(c)=458,981円。
(5)5月末、東電側の弁護士から「答弁書」が送られてきた。
(a)結論部分はこうだ。除染以外は、すべて「損害賠償をしない」という内容だ。
①生活費が増加した分の賠償・・・・否認する。
②その他に要した費用の賠償のうち除染のための費用・・・・認否は留保する。
③精神的損害への賠償・・・・否認する。
④土地家屋の価値が下がったことへの賠償・・・・否認する。
(b)除染以外はすべて「損害賠償をしない」理由として東電側は次の3点を挙げ、中間指針に基づいて賠償するべき損害にはあたらない、と結論づけている。
①居住地(茨城県牛久市)が中間指針第三にいう「政府による避難等の指示があった対象区域」ではない。
②中間指針追補にいう「自主避難等対象区域」でもない。
③申立人らは避難をしていない。
(c)除染費用の認否を留保する理由としては、<「中間指針第二追補 第4 除染等に係る損害について」において、「必要かつ合理的な範囲」の除染費用が損害賠償の対象となります。ところが、現時点では、国も自治体も、除染についての合理的な範囲、金額、負担の基準等を検討中であり、その基準等の公表はされておりません>とある。
(6)第1回口頭審理、7月上旬、於紛争解決センター・・・・東電側は若い男性と弁護士が出席。「答弁書」の主張を繰り返すだけだった。若い男性は自己紹介しない。K氏が「まったく謝罪がないのはおかしいですね」と問うと、社長が記者会見で言っている、ここは謝罪の場ではない、とさっさと引き上げた。
(7)その後、紛争解決センターが提案した。
(a)K氏は、生活費増加分や精神的損害を取り下げる。
(b)東電は、牛久市が「汚染状況重点調査区域」になっているので「一定の範囲の賠償」をする。
結局、東電は、紛争解決センターの仲介案を飲む形で、次の「除染費用」約8万円を(損害賠償ではなく)「和解金として支払う」ことに同意した。
①庭木の剪定・枝葉の処理。
②除染後のゴミの処分。
③ポリバケツやデッキブラシ、作業衣、など。
(8)自治体が委託した業者による除染に関しては、国の補助がある(2011年12月22日施行の「放射線量低減対策特別緊急事業費補助金取扱要領」)。
しかし、個人が実施した除染に関しては、補助金が出ない。個人実施の除染への補助金は検討中【環境省放射性物質汚染対策特措法施行チーム】。
(7)のK氏の事例は初耳。個人の実施した除染についても一定の賠償を行うなら、まずは東電がホームページなどでその請求の仕方を含めてきちんと公開すべきだ。【牛久市環境政策課放射能対策室】
ちなみに、「汚染状況重点調査区域」には全国で104の自治体が指定されている。
以上、片岡伸行(本誌編集部)「福島県人でなくとも東電に損害賠償を」(「週刊金曜日」2012年10月12日号)に拠る。
【参考】
「【震災】原発>賠償を拒否する東電側の理屈 ~裁判~」
↓クリック、プリーズ。↓
中間指針は、あくまで最低基準で、それを理由に東電が賠償請求を拒むことはできない。【原子力損害賠償紛争解決センター(文部科学省が設置)】
(2)東電の請求書作成資料には、福島県からの避難者以外に、県外在住者が記入する欄がない。
(3)茨城県牛久市在住のK氏は、今年3月、自宅の除染費用などの賠償を請求するべく東電・福島原子力補償相談室に電話した。応対した女性相談員いわく、
「福島県外の個人で賠償を求めてきたのはあなただけです」
「みなさん多少の不自由は我慢しています」
「政府の作った原子力損害の判定に関わる中間指針では、茨城県の個人は賠償の対象外です」
(4)K氏は、今年4月、原子力損害賠償紛争解決センターに和解の仲介を申し立てた。
(a)紛争の問題点・・・・賠償を承りません、と東電に言われた。
(b)生活費が増加した分の賠償・・・・浄水器(20数万円)、除湿乾燥機、掃除機、放射線量計、除染作業用具、雨水タンク、など。
(c)その他に要した費用の賠償・・・・放射線検査や除染のための費用。
(d)精神的損害への賠償。
(e)土地家屋の価値が下がったことへの賠償。
(f)(b)+(c)=458,981円。
(5)5月末、東電側の弁護士から「答弁書」が送られてきた。
(a)結論部分はこうだ。除染以外は、すべて「損害賠償をしない」という内容だ。
①生活費が増加した分の賠償・・・・否認する。
②その他に要した費用の賠償のうち除染のための費用・・・・認否は留保する。
③精神的損害への賠償・・・・否認する。
④土地家屋の価値が下がったことへの賠償・・・・否認する。
(b)除染以外はすべて「損害賠償をしない」理由として東電側は次の3点を挙げ、中間指針に基づいて賠償するべき損害にはあたらない、と結論づけている。
①居住地(茨城県牛久市)が中間指針第三にいう「政府による避難等の指示があった対象区域」ではない。
②中間指針追補にいう「自主避難等対象区域」でもない。
③申立人らは避難をしていない。
(c)除染費用の認否を留保する理由としては、<「中間指針第二追補 第4 除染等に係る損害について」において、「必要かつ合理的な範囲」の除染費用が損害賠償の対象となります。ところが、現時点では、国も自治体も、除染についての合理的な範囲、金額、負担の基準等を検討中であり、その基準等の公表はされておりません>とある。
(6)第1回口頭審理、7月上旬、於紛争解決センター・・・・東電側は若い男性と弁護士が出席。「答弁書」の主張を繰り返すだけだった。若い男性は自己紹介しない。K氏が「まったく謝罪がないのはおかしいですね」と問うと、社長が記者会見で言っている、ここは謝罪の場ではない、とさっさと引き上げた。
(7)その後、紛争解決センターが提案した。
(a)K氏は、生活費増加分や精神的損害を取り下げる。
(b)東電は、牛久市が「汚染状況重点調査区域」になっているので「一定の範囲の賠償」をする。
結局、東電は、紛争解決センターの仲介案を飲む形で、次の「除染費用」約8万円を(損害賠償ではなく)「和解金として支払う」ことに同意した。
①庭木の剪定・枝葉の処理。
②除染後のゴミの処分。
③ポリバケツやデッキブラシ、作業衣、など。
(8)自治体が委託した業者による除染に関しては、国の補助がある(2011年12月22日施行の「放射線量低減対策特別緊急事業費補助金取扱要領」)。
しかし、個人が実施した除染に関しては、補助金が出ない。個人実施の除染への補助金は検討中【環境省放射性物質汚染対策特措法施行チーム】。
(7)のK氏の事例は初耳。個人の実施した除染についても一定の賠償を行うなら、まずは東電がホームページなどでその請求の仕方を含めてきちんと公開すべきだ。【牛久市環境政策課放射能対策室】
ちなみに、「汚染状況重点調査区域」には全国で104の自治体が指定されている。
以上、片岡伸行(本誌編集部)「福島県人でなくとも東電に損害賠償を」(「週刊金曜日」2012年10月12日号)に拠る。
【参考】
「【震災】原発>賠償を拒否する東電側の理屈 ~裁判~」
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