(1)ネット企業(<例>ヤフー、楽天)は顧客の苦情をメールでしか受け付けていない。ために、数多くの顧客がトラブルへの対処で悩まされている。
<例>K氏の場合
ヤフーが運営する出会い系有料サービス「ヤフー!パートナー」を短期間利用し、その後放置した。
1年以上経て、たまたまクレジットカード利用明細に詳しく目をとおしたところ、最初に利用した直後から、同様な請求が毎月4件も行われていた。それぞれ定期的に更新され、4件分の料金(プレミアム会員の会費346円の4倍)が引き落とされていた。
K氏は、メールでヤフーに事情の説明を求めた。返信には、複数のIDがある可能性を示唆するだけで、なぜそうなったかの説明はなかった。
K氏は、自分が認識しているIDについてはサービスの利用停止の手続きをし、引き続きメールでやり取りを続けた。しかし、返信は自動応答もあり、担当者の署名入りの回答もその内容は不十分で埒があかなかった。
K氏は、ヤフー本社(東京・六本木)に乗り込んだ。ところが、苦情や相談は「こちらでは受け付けていません」と門前払いを食った。
K氏は、地元の消費者相談窓口や警察にも相談した。最後には、ヤフー社長の自宅を調べて抗議の手紙を送った。が、問題は解決しなかった。
・・・・K氏が自覚のあるIDでの利用停止した後、請求が3件に減り、その翌月、請求が1件に減り、翌々月にはすべての請求がなくなった。しかし、ヤフーからは一切説明はなかった。
K氏は、認識のない利用料80,000円の返還を求める内容証明郵便を送った。しかし、ナシのツブテだった。
怒り心頭に発したK氏は、自分で少額請求訴訟を起こすべく本人訴訟の手続きを勉強中である。
(2)たとえK氏が訴えても、ヤフーの側になぜそうなったかを説明する法的義務はない。ただ、説明や反論をしなければ、ヤフーが敗訴するだけだ。反対に、ヤフーがとりあえずの説明などをして、K氏にパソコン管理の問題点がある可能性(第三者が秘かに利用、PCがウィルスなどに感染して他人が悪用)などを指摘した場合、話は水掛け論になり、どこかで和解することになろう。【ネット業界に詳しい弁護士】
(3)ヤフーには同様なトラブルで非を認めた「前科」がある。
(a)2005年、ヤフーは顧客から長期間、当人が認識していないIDでの料金徴収を続け、説明を求められても不誠実な対応を続けた。だが、最終的に別人の料金を誤って請求していたことが判明。ヤフーは謝罪し、返金した。
(b)2008年、多数の会員のIDが不当に乗っ取られ、オークションに偽のブランド品などが多数出品される「事件」が起こった。結局、中国などからヤフーに不正なアクセスがあり、流出したと目されるパスワードなどがランダムに打ち込まれ、ヒットした会員のIDが不正に利用されていたことが判明。ヤフーは、被害者から徴収したオークション利用料などを返還した。ただし、被害が5,000件を超える段階まで自ら公表せず、身に覚えのない請求に係る問合せに不誠実な対応を繰り返した。
(c)その後、ヤフーはオークションでのトラブル増加に伴い、さまざまなトラブルの損害を補償する「有料の補償サービス」を始めた。ところが、問題の原因は根絶しなかった。のみならず、逆に、補償の適用範囲をめぐって新たに顧客とトラブルを起こし、国民生活センターなどから補償内容をより分かりやすく告知するよう要請された。
(4)顧客からメールでしか苦情などを受け付けず、「対応に誠意がない」と思われているネット企業は、ヤフーに限らない。楽天しかり。SNSやネットゲームの大手などでも、代表電話番号を公表していないとか、公表していてもホームページの分かりにくい場所に記載しているところもある。
電話番号案内にも登録されていない企業の代表番号を知るには、有価証券報告書を入手する、といったような手間がかかる。そこまでして電話しても、「こちらでは苦情や相談を受け付けていません。メールでお願いします」と追い払われるのが関の山だ。
かくて、多くのユーザーが地元の消費生活センターに駆け込む仕儀となる。
(5)国や自治体の消費者相談窓口は、さすがにヤフーなどとも直接連絡がつくため、相談内容によっては問題が解決するケースもある。
消費者相談窓口は、基本的に個別の相談内容や企業名などを外部に漏らすことはできない。だから、企業側も安心して交渉できるのだ。その反面、多数の健康被害が出るような大問題となったり、明らかな詐欺で警察が摘発しない限り、具体的な企業名やトラブルの実態は表面化しにくい。
(6)国や自治体からヤフーや楽天などに自分たちでコールセンターを設置するよう要請しているが、彼らは作ろうとしない。ネット企業は、自前のコールセンターを作らないで、その代わりに公的機関が彼らの顧客の苦情を直接受けて、問題解決の仲介や代行を行っている。つまり、企業のコスト削減に、税金が流用されている。
(a)国民生活センターのネットオークションに係る相談は、年間7,364件だ(2011年)。オークションでヤフーのシェアは8割前後、楽天も大手だ。苦情のシェアもヤフーが8割と見れば、5,892件だ。
(b)同様に、ネット通販に係る相談は170,000件以上だ(2011年)。ネット通販は楽天が最大手で、ヤフーも大手だ。この2社だけでシェアが5割前後だ。苦情のシェアも2社が5割と見れば、2社への苦情が85,000件あることになる。
(c)ネットオークションとネット通販だけで年間190,000件に近い相談や苦情があるわけだ。その対応コストは多額だ。さらに近年、ゲームやSNSなどでも苦情が増加している。公的機関の仕事は増え、ネット企業のために税金が費消されていく。
以上、杉原章一(ジャーナリスト)「このままでいいのか メールでしか苦情を受け付けないネット企業の無責任体質」(「週刊金曜日」2012年10月5日号)に拠る。
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<例>K氏の場合
ヤフーが運営する出会い系有料サービス「ヤフー!パートナー」を短期間利用し、その後放置した。
1年以上経て、たまたまクレジットカード利用明細に詳しく目をとおしたところ、最初に利用した直後から、同様な請求が毎月4件も行われていた。それぞれ定期的に更新され、4件分の料金(プレミアム会員の会費346円の4倍)が引き落とされていた。
K氏は、メールでヤフーに事情の説明を求めた。返信には、複数のIDがある可能性を示唆するだけで、なぜそうなったかの説明はなかった。
K氏は、自分が認識しているIDについてはサービスの利用停止の手続きをし、引き続きメールでやり取りを続けた。しかし、返信は自動応答もあり、担当者の署名入りの回答もその内容は不十分で埒があかなかった。
K氏は、ヤフー本社(東京・六本木)に乗り込んだ。ところが、苦情や相談は「こちらでは受け付けていません」と門前払いを食った。
K氏は、地元の消費者相談窓口や警察にも相談した。最後には、ヤフー社長の自宅を調べて抗議の手紙を送った。が、問題は解決しなかった。
・・・・K氏が自覚のあるIDでの利用停止した後、請求が3件に減り、その翌月、請求が1件に減り、翌々月にはすべての請求がなくなった。しかし、ヤフーからは一切説明はなかった。
K氏は、認識のない利用料80,000円の返還を求める内容証明郵便を送った。しかし、ナシのツブテだった。
怒り心頭に発したK氏は、自分で少額請求訴訟を起こすべく本人訴訟の手続きを勉強中である。
(2)たとえK氏が訴えても、ヤフーの側になぜそうなったかを説明する法的義務はない。ただ、説明や反論をしなければ、ヤフーが敗訴するだけだ。反対に、ヤフーがとりあえずの説明などをして、K氏にパソコン管理の問題点がある可能性(第三者が秘かに利用、PCがウィルスなどに感染して他人が悪用)などを指摘した場合、話は水掛け論になり、どこかで和解することになろう。【ネット業界に詳しい弁護士】
(3)ヤフーには同様なトラブルで非を認めた「前科」がある。
(a)2005年、ヤフーは顧客から長期間、当人が認識していないIDでの料金徴収を続け、説明を求められても不誠実な対応を続けた。だが、最終的に別人の料金を誤って請求していたことが判明。ヤフーは謝罪し、返金した。
(b)2008年、多数の会員のIDが不当に乗っ取られ、オークションに偽のブランド品などが多数出品される「事件」が起こった。結局、中国などからヤフーに不正なアクセスがあり、流出したと目されるパスワードなどがランダムに打ち込まれ、ヒットした会員のIDが不正に利用されていたことが判明。ヤフーは、被害者から徴収したオークション利用料などを返還した。ただし、被害が5,000件を超える段階まで自ら公表せず、身に覚えのない請求に係る問合せに不誠実な対応を繰り返した。
(c)その後、ヤフーはオークションでのトラブル増加に伴い、さまざまなトラブルの損害を補償する「有料の補償サービス」を始めた。ところが、問題の原因は根絶しなかった。のみならず、逆に、補償の適用範囲をめぐって新たに顧客とトラブルを起こし、国民生活センターなどから補償内容をより分かりやすく告知するよう要請された。
(4)顧客からメールでしか苦情などを受け付けず、「対応に誠意がない」と思われているネット企業は、ヤフーに限らない。楽天しかり。SNSやネットゲームの大手などでも、代表電話番号を公表していないとか、公表していてもホームページの分かりにくい場所に記載しているところもある。
電話番号案内にも登録されていない企業の代表番号を知るには、有価証券報告書を入手する、といったような手間がかかる。そこまでして電話しても、「こちらでは苦情や相談を受け付けていません。メールでお願いします」と追い払われるのが関の山だ。
かくて、多くのユーザーが地元の消費生活センターに駆け込む仕儀となる。
(5)国や自治体の消費者相談窓口は、さすがにヤフーなどとも直接連絡がつくため、相談内容によっては問題が解決するケースもある。
消費者相談窓口は、基本的に個別の相談内容や企業名などを外部に漏らすことはできない。だから、企業側も安心して交渉できるのだ。その反面、多数の健康被害が出るような大問題となったり、明らかな詐欺で警察が摘発しない限り、具体的な企業名やトラブルの実態は表面化しにくい。
(6)国や自治体からヤフーや楽天などに自分たちでコールセンターを設置するよう要請しているが、彼らは作ろうとしない。ネット企業は、自前のコールセンターを作らないで、その代わりに公的機関が彼らの顧客の苦情を直接受けて、問題解決の仲介や代行を行っている。つまり、企業のコスト削減に、税金が流用されている。
(a)国民生活センターのネットオークションに係る相談は、年間7,364件だ(2011年)。オークションでヤフーのシェアは8割前後、楽天も大手だ。苦情のシェアもヤフーが8割と見れば、5,892件だ。
(b)同様に、ネット通販に係る相談は170,000件以上だ(2011年)。ネット通販は楽天が最大手で、ヤフーも大手だ。この2社だけでシェアが5割前後だ。苦情のシェアも2社が5割と見れば、2社への苦情が85,000件あることになる。
(c)ネットオークションとネット通販だけで年間190,000件に近い相談や苦情があるわけだ。その対応コストは多額だ。さらに近年、ゲームやSNSなどでも苦情が増加している。公的機関の仕事は増え、ネット企業のために税金が費消されていく。
以上、杉原章一(ジャーナリスト)「このままでいいのか メールでしか苦情を受け付けないネット企業の無責任体質」(「週刊金曜日」2012年10月5日号)に拠る。
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