11年9月、英国から日本への高レベル核廃棄輸送は、通算2回目で、福島原発事故以来初めだ。
日本の原発で生み出された核廃棄物が、英国で「再処理」されたものだ。40トン以上の核廃棄物、広島型原爆2,280個分の死の灰だ。 英国PNTL社が運行する核輸送船「Pacific Grebe」号による。関西電力、四国電力、九州電力に割り当てられた3つの容器に、高レベル核廃棄物のガラス固化体が76体積まれていた。日本に到着した後、青森県むつ小川原港で下ろされ、日本原燃の六ヶ所村核燃料サイクル施設で貯蔵される。
日本で原発が動き始めてから今まで大量の核のゴミが生み出されてきた。69年から98年まで、「再処理」のため英国と仏国に送られていた。日本から送られた核廃棄物は、合計7,100トン、輸送回数は約170回に及ぶ。
英仏両国の「再処理」された後の高レベル核廃棄物は、95年から日本へ返還されてきた。プルトニウム単体の「商品」のほとんどは使用されず、日本国内で貯蔵されている。
長年、核のゴミ問題は「後回し」にされてきた。おかげで日本の原発は、「すみやかに運転を続けることができた」のだ。
「Pacific Grebe」号は二重構造になっていない。安全性が危惧されていた。
日本の核輸送には、航路沿線上の諸国延べ70ヶ国以上から切実な抗議や憂慮の声があがっている。95年にはチリ海軍が出動し、輸送船に遠ざかるよう要求した。
今回の輸送にも、カリブ共同体(CARICOM)が7月20日、輸送の即時停止を求める声明を発表した。
英国の反核団体COREもいう。「この誰もほしくない地上最高の放射能濃度を持つ物質の輸送はカリブ諸国と他の沿線諸国の長い間の断固とした反対をなりふりかまわずに無視して行われている」
だが、日本国内からは、反対の動きはちっともない。
日本政府が採用している国際原子力機関(IAEA)の輸送基準は、本来陸上輸送のためのもので、長距離海上輸送は想定していない。その耐水テストの基準は、海上輸送の事故に対応できない。
97年、放射性セシウムを輸送中の船舶「MSC Carla」が大西洋で嵐に遭遇し、二つに折れた。放射性物質の入った複数のコンテナが海底3,000メートルに沈んだ。仏国の規制局は、コンテナが破裂する可能性を認めたが、引き上げていない。
核輸送国(日英仏)は、次の諸点において無い無いづくしだ。
(1)輸送の安全性を確認する環境アセスメントを行っていない(日本沿岸近辺のものだけしかなく、しかもお粗末)。
(2)事故の補償制度を確立していない(どの国が何に責任をとるのか、責任の所在が不明)。
(3)非常事態の対策・計画が皆無だ(沈没した積み荷を引き上げる計画が存在しない、etc.)。
(4)輸送ルート諸国から事前了解を得ないで航海している。
(5)護衛が不十分だ。
(6)放射能漏れがないにもかかわらず輸送生が事故を起こしたことで風評被害を受けた場合の補償体制を沿線諸国は長年要請してきたが、この体制を日本は確立していない。
(7)70ヶ国以上の抗議、輸送船の近海通過拒否の声明、憂慮の声などに対し、一度として誠実な対応をしていない。
福島原発事故から半年。陸上でさえ、いまだに事故後の対策をきちんとやっていない。
その日本が、緊急時の対応計画もない海上輸送で、一体どうやって、沿岸諸国の人々が被害を受けない対策をとることができるのか。
以上、アイリーン・美緒子・スミス「海を渡った40トンの核廃棄物」(「週刊金曜日」2011年9月9日号)に拠る。
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日本の原発で生み出された核廃棄物が、英国で「再処理」されたものだ。40トン以上の核廃棄物、広島型原爆2,280個分の死の灰だ。 英国PNTL社が運行する核輸送船「Pacific Grebe」号による。関西電力、四国電力、九州電力に割り当てられた3つの容器に、高レベル核廃棄物のガラス固化体が76体積まれていた。日本に到着した後、青森県むつ小川原港で下ろされ、日本原燃の六ヶ所村核燃料サイクル施設で貯蔵される。
日本で原発が動き始めてから今まで大量の核のゴミが生み出されてきた。69年から98年まで、「再処理」のため英国と仏国に送られていた。日本から送られた核廃棄物は、合計7,100トン、輸送回数は約170回に及ぶ。
英仏両国の「再処理」された後の高レベル核廃棄物は、95年から日本へ返還されてきた。プルトニウム単体の「商品」のほとんどは使用されず、日本国内で貯蔵されている。
長年、核のゴミ問題は「後回し」にされてきた。おかげで日本の原発は、「すみやかに運転を続けることができた」のだ。
「Pacific Grebe」号は二重構造になっていない。安全性が危惧されていた。
日本の核輸送には、航路沿線上の諸国延べ70ヶ国以上から切実な抗議や憂慮の声があがっている。95年にはチリ海軍が出動し、輸送船に遠ざかるよう要求した。
今回の輸送にも、カリブ共同体(CARICOM)が7月20日、輸送の即時停止を求める声明を発表した。
英国の反核団体COREもいう。「この誰もほしくない地上最高の放射能濃度を持つ物質の輸送はカリブ諸国と他の沿線諸国の長い間の断固とした反対をなりふりかまわずに無視して行われている」
だが、日本国内からは、反対の動きはちっともない。
日本政府が採用している国際原子力機関(IAEA)の輸送基準は、本来陸上輸送のためのもので、長距離海上輸送は想定していない。その耐水テストの基準は、海上輸送の事故に対応できない。
97年、放射性セシウムを輸送中の船舶「MSC Carla」が大西洋で嵐に遭遇し、二つに折れた。放射性物質の入った複数のコンテナが海底3,000メートルに沈んだ。仏国の規制局は、コンテナが破裂する可能性を認めたが、引き上げていない。
核輸送国(日英仏)は、次の諸点において無い無いづくしだ。
(1)輸送の安全性を確認する環境アセスメントを行っていない(日本沿岸近辺のものだけしかなく、しかもお粗末)。
(2)事故の補償制度を確立していない(どの国が何に責任をとるのか、責任の所在が不明)。
(3)非常事態の対策・計画が皆無だ(沈没した積み荷を引き上げる計画が存在しない、etc.)。
(4)輸送ルート諸国から事前了解を得ないで航海している。
(5)護衛が不十分だ。
(6)放射能漏れがないにもかかわらず輸送生が事故を起こしたことで風評被害を受けた場合の補償体制を沿線諸国は長年要請してきたが、この体制を日本は確立していない。
(7)70ヶ国以上の抗議、輸送船の近海通過拒否の声明、憂慮の声などに対し、一度として誠実な対応をしていない。
福島原発事故から半年。陸上でさえ、いまだに事故後の対策をきちんとやっていない。
その日本が、緊急時の対応計画もない海上輸送で、一体どうやって、沿岸諸国の人々が被害を受けない対策をとることができるのか。
以上、アイリーン・美緒子・スミス「海を渡った40トンの核廃棄物」(「週刊金曜日」2011年9月9日号)に拠る。
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