よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

小室直樹博士記念シンポジウム(3月6日)

2011年03月10日 | 日本教・スピリチュアリティ

東工大で開かれたシンポ。さすが、橋爪大三郎先生。世界文明センターの大舞台で知の巨人を追悼するシンポジウムにふさわしく、このシンポの副題として「社会科学の復興をめざして」と銘打った。

小室博士は、一般にはアカデミックな「前期」の業績の延長線上に構想された「後期」のジャーナリズム的な業績がよく知られている。(1)1980年に出版した『ソビエト帝国の崩壊』でソ連崩壊を10年以上も前から正確に予測したことや、(2)ロッキード事件で大バッシングを浴びた田中角栄元首相を一貫して擁護する論陣を張り「無能な検察官僚どもを殺して電信柱に逆さ吊りにせよ!」とTV番組生放送中に叫んだことなどが有名だ。

後半の討論会で、副島隆彦氏が「今、小沢を貶めている検察官僚を殺せ!」と絶叫したのはまさに小室博士の言説の同型反復か。それ以外でもリバタリアン副島氏、咆哮しまくりだ。(下記ビデオリンク)

「前期」の小室博士の特徴は、自然科学、社会科学、人文の非常に多岐にわたる学問のオーソドックスな基礎をガッチリ押さえ、「持続する大いなる志」の上に自らの学問体系を構築していったことだ。その学問探求の幅と深さがハンパではないのだ。否、超人的である。

小室直樹は、京都大学で理論物理学を収めた後、大阪大学で高田保馬、森嶋通夫 、安井琢磨、二階堂副包らの下で 理論経済学を、アメリカのミシガン大学大学院に留学しダニエル・スーツから計量経済学を、MITで、ポール・サミュエルソン、ロバート・ソローから、ハーバード大学大学院ではケネス・アロー、チャリング・クープマンスら名だたる学者達から経済学を吸収。ハーバード大で、スキナー博士から心理学、一時コーネル大学にもいた泰斗タルコット・パーソンズから構造機能主義(structural-functionalism)を徹底的に学ぶ。当時のアメリカの社会科学の殿堂を総なめにするように、この天才は学問を構築していった。

これほどさように、小室博士の学問は世界的なworld valuesに極限的に忠実で合理的(rational)である。しかしながら、これまた討論されたことなのだが、合理の究極を支えるものはlocality。郷土への鬱勃たる愛情、天皇陛下への絶対帰依(渡部恒三は小室博士をして国家主義者と言っていたが)とでも言うべき心象などは、小室博士が愛した学問の世界から見ればなかなか説明がつかない非合理的情動、情念ではある。合理、非合理、world values、local valuesが小室という人格の奥底に同居している、あるいはそうした要素が越境しあって小室という人格に統合されている、その姿に、この巨人の摩訶不思議な磁力、魅力を見出すのだ。

帰国後は、これほどの天才、博覧強記の頭脳と、それらと対置したときに、世間ではエキセントリックととられやすい「社会的発言」のためか、日本の学会では受け入れられず市井で学問の研鑽を続けてきたのだ。

帰国後1967年から、ボランティアで所属・年齢・専攻を問わない自主ゼミ(小室ゼミ)を開講し、経済学を筆頭に、法社会学、比較宗教学、線型代数学、統計学、抽象代数学、解析学などを幅広く無償で教授。

小室ゼミ出身者には、橋爪大三郎、宮台真司、副島隆彦らがいる。このシンポでは、今田高俊(東京工業大学教授:自己組織性、小室ゼミは2年間参加)、志田基与師(横浜国立大学教授:小室の構造機能主義に異義を唱え、あるいは覆し、前期後期の転換点への契機を導いた)、大澤真幸(京都大学前教授)、盛山和夫(東京大学教授)、山田昌弘(中央大学教授)、伊藤真(司法試験指導校主宰)らも馳せ参じていた。

「小室直樹博士のような天才が再度出現したとき、学会に迎え入れなかったような、あのような失敗を二度と繰り返してはならない」と言った橋爪大三郎先生のコメントが印象的だった。シンポでは誰かが言っていたが、小室直樹博士の前期業績を「正」、後期業績を「反」としたら、それらを止揚する「合」の業績ほど待たれるものはなかったはずだ。博士ご存命ならば、今の状況をなんとみたのだろうか?

後半は東工大で開かれてる別のシンポで話をしなければならなかったので残念ながら参加できず。でもだれかが動画をアップしてくれている。この動画がまた、凄まじく面白い。繰り返し見よう。(永久にネット空間で保存されるできだろう)

小室直樹博士記念シンポジウム第一部(前半)

小室直樹博士記念シンポジウム第一部(後半)

小室直樹博士記念シンポジウム第二部(前半)

小室直樹博士記念シンポジウム第二部(後半)

後半は、なんと会津中学校以来親交があった渡部恒三(近年反小沢の先鋒化しており、シンポ参加者の多くは小沢擁護の副島さんと激突するかと思ったはずだ)が話をした。若い世代を登壇させたのがよかった。自分と接点がある早稲田大学雄弁会は、小室直樹博士の学問・言説空間の継承者でもある。ぜひとも関口慶太(早稲田大学雄弁会出身・弁護士)や村上篤直(小室直樹文献目録管理人)のような若者によって、小室直樹博士の学問・言説空間が継承されなければならない。もちろん、これは、同時代に生きる一粒の塩として自分の課題でもある。


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