よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

敗戦記念日に読む「戦略の本質」

2005年08月16日 | No Book, No Life
大東亜戦争の敗戦記念日に読む「戦略の本質」は複雑な読後感を漂わせる。

60回目の大東亜戦争の敗戦の記念日と前後して、20年の時を経て名著のなかの名著「失敗の本質~日本軍の組織論的研究~」の続編が、まったく同じ研究者チームから出版されている。戦略の本質が最も顕在化するのは逆転現象であるという仮説をもとに毛沢東の反包囲討伐戦、バトル・オブ・ブリテン、スターリングラードの戦い、朝鮮戦争、第四次中東戦争、べトナム戦争の戦史をコンプリヘンシブにレビューしている。

前作の「失敗の本質」では、「日本軍の組織的特性は、その欠陥も含めて、戦後の日本の組織一般の中におおむね無批判のまま継承された」ととらえ、いくつかの戦略上の失敗要因を提示している。(2章p186以降)

・あいまいな戦略目的
・短期決戦志向
・主観的、機能的は戦略策定
・狭く進化のない戦略オプション
・バランスを欠いた戦闘技術体系
・空気が支配する集団的意思決定
・プロセスや動機を過度に重視した評価

以上の前作の記述をベースにして、今回の「戦略の本質」では優良な戦略が顕在する戦争における逆転現象に注目する。あたかも不振をかこってきた日本経済、日本社会全体の課題を俯瞰し、処方箋をきるかのように逆転現象を可能たらしめる戦略を論ずることは時代の要請でもある。

ビジネス関係の戦略書はあまたあるが、戦史をレビューすることによって体系化する戦略論が王道である。なぜなら、戦略は軍事用兵、戦争軍事分野で最も用いられてきたからであり、戦争と軍事の領域において戦略は明確に発現するからだ。ビジネス書ライター、研究者が書く戦略はビジネスという文脈での表層的アナロジー、後知恵の周辺的産物であることが多いからだ。

さて「戦略の本質」の終章では戦略を戦略たらしめる命題を10ほど提示されている。

・戦略は弁証法的である。
・戦略は時間、空間、パワーの「場」の創造である

がもっとも本質的だ。あとの8つは補足だ。

さて、戦後状況のなかで正当な評価がなかなかなされなかった軍略家、戦略家もいる。その代表格は石原莞爾だろう。石原莞爾はクラウセビッツを徹底研究し、戦争を持久戦争と最終決定戦争の弁証法的発展過程と明確にとらえていた。さらに戦略のインプリメンテーションにおいても稀有な創造性を発揮している。東洋ではじめて空爆を企画実行した戦略家、電撃戦法を遂行した関東軍きっての戦略思考、戦略的行動の体現者である。東京裁判では、人道上の罪、平和に対する罪は、原爆投下を瞑したトルーマン大統領にこそ問われるべきだと喝破して連合国側の裁判官、検察官をだまらせた正論の弁論家でもある。

その人となり、業績、そして昭和という時代を背負った一軍人の軌跡は福田和也が書き連ねた大著、「地ひらく~石原莞爾と昭和の夢」に詳しい。












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