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自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

OSS化はさらなるサービス化を加速させる

2006年01月07日 | No Book, No Life
↑ 出典:「2010年のITロードマップ」野村総合研究所技術調査室、東洋経済新報社、2005年12月


たまたま会社の同僚から週末に借りて読んだ野村綜合研究所編著の「2010年のITロードマップ」が面白い。近年、技術ロードマップづくりの重要性はとみに叫ばれている。なるほど、いままで総花的IT関連の書物ははいて捨てるほどあったが、ロードマップを前面に持ってきて、主要なIT領域で2010年までの長期にわたってロードマップを大胆に提示した本は国内では初めての部類じゃないか。

明確な役割分担をもった複数の調査担当者=ライターが書いた本なので、どうしても、技術領域、技術要素ごとの編集スタイルをとらざるを得なかった事情はよくわかる。しかし技術領域ごとのクロスオーバー、相互連携によって発生するノベーションをロードマッピングするためには、領域を串刺しにした視点も、もっとほしいところだ。

さて、この本はオープンソースにも注目しており、2007年頃からSugarCRMは先端的ユーザを一巡してCRMのメインストリームになるという予測をしている。さすがに鋭いですね。昨年から始まっているSugarCRM日本語化プロジェクトについても記述されており、けっこう細かい取材、調査をやってきたことをうかがわせる。

この本でとりあげているOSSの動向に「サービス」という目線でちょっと掘り下げてみよう。オープンソース化の流れは、LAMPS(ランプスと発音しましょう)、つまり基盤OSのLinuxに端を発して、ウェブサーバのApache、データベースのMySQL、スクリプト言語のphpやPerlというようにすさまじい勢いで展開してきていて、LAMPSの最後の"S"のSugarCRMなどの業務アプリケーションの領域にまで達して来ている。

この動きに相応して、業務アプリケーションのプロダクトとしてのオープンソース化は、大きく分けて2つの新たなサービス領域を勃興させる起爆剤になるだろう。

■業務アプリケーション上でのさらなるきめ細かなサービス対応
ソースコードをまるごと手に入れれば、ユーザニーズに密着したSEは、あの手この手を使って顧客ニーズに対応する匠の技を発揮することになる。使える、触れる、ためになる、個別化、感動といったヒューマンウェア領域サービスの開発といってもいい。これらにOSS有償サポート、運用導入支援、スタック組み込み、システムインテグレーションなどが連携しあって新たなITサービスがOSS業務アプリの上に展開されてるだろう。LAN環境でのIP電話システム、グループウェア、SNS、ナレッジマネジメントとの連携、コンタクトセンターの顧客情報集約システムなどとして、SugarCRMの用途は拡がって行くだろう。SIerにはぜひともこのような自由闊達、融通無碍なサービスを顕在化させてほしいところだ。

■オープンソース・ミドルウェア系でのESBなど
SOA(Service Oriented Architecture、サービス志向アーキテクチャ)とは、ざっくり言ってしまえば、あらかじめ料理した食材を組み合わせて、いろんな種類の駅弁を作ってしまえということだ。つまり、ソフトウェアの機能を共通の部品のかたまりのように大ぐくりでコンポーネント化して必要に合わせて組み合わせて使いましょう、そのほうが、作る方も使う方も便利ですよという設計思想だ。SOAで使い回しされるソフトウェア部品の塊としては、在庫検索サービス、発注サービス、決済サービス、購入後アフターサービスなどのように、オブジェクト指向やコンポーネント指向よりも粒度は大きくなる。コンポジット化させてゆけば、グループ企業内はおろか、企業の垣根を越えても使うことが出来る。こんな文脈のなかで、SOAの基盤ミドルウェアとしてESB(Enterprise Service Bus)が最近注目されているが、このEBSもぜひともオープンソースで対応すべきだろう。というか、すでにApache Software FoundationのSynapseなどいくつかのオープンソース勢力がESBプロジェクトをスタートさせている。

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LAMPSのLAMPと"S"の間が太平洋の海面とすると、業務アプリケーション上でのキメ細かなサービス対応は海面の上のサービスだ。広い海の上で、いろいろな人々の目先、手先に触れるサービスだ。オープンソース・ミドルウェア系でのESBなどは大方の目には直接には触れないが、海面下の黒潮のような大きな流れのサービス支援とでも言っていいだろう。

海面の上下でお互いがもちつもたれつの関係で、あっというようなサービスがオープンソースの世界に立ち顕れてくるだろう。いずれにせよ、業務アプリ分野でのOSS化はさらなるサービス・イノベーションの勃興、喚起に繋がってゆくことには間違いないだろう。

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