ブログ「陰陽師的日常」をのぞきに来てくださるみなさま、なかなか更新できなかったにもかかわらず、ご来訪くださってどうもありがとうございました。
今月22日、父が永眠いたしました。
目の回るような一週間を過ごしたのち、こちらに戻ってきましたが、何もかもが妙に実感を欠いていて、夢の中にいるような、おぼつかない気持ちでいます。
亡くなった父の枕元に、図書館から借りていた本がありました。通っていた病院のすぐ近くに図書館の分室があったそうで、時間待ちの折にでも、本を借りに行っていたのでしょう。藤沢周平全集の一冊で、『密謀』と『義民が駆ける』が所収されたものでした。
いまからもう二十年近く前のことですが、父と一緒に電車に乗る機会がありました。手持ちぶさたなようすで電車が来るのを待っている父に、たまたまわたしのカバンのなかに入っていた予備の文庫本を、「読む?」と渡したのです。中公文庫版の『義民が駆ける』でした。
ふたり並んで本を読みながら目的地に着き、別れ際、父は「この本、借りていいか?」と聞きました。買ったものの、まだ十数ページほどしか読んでいない本でしたが、いいよ、と渡したのでした。
家のどこかにわたしの中公文庫があるのだろうか、それとも処分してしまったのだろうか。父は、その全集を借りたとき、そのときのことを覚えていたのだろうか。そんなことを考えると、どうしてもその返却期限の切れた本を、図書館に持って行くことはできませんでした。
藤沢周平はほとんど読んでいるはずですが、『義民が駆ける』だけは、まだ読んでいないままです。
どうぞ皆様、よいお年をお過ごしください。
ではまた。
今月22日、父が永眠いたしました。
目の回るような一週間を過ごしたのち、こちらに戻ってきましたが、何もかもが妙に実感を欠いていて、夢の中にいるような、おぼつかない気持ちでいます。
亡くなった父の枕元に、図書館から借りていた本がありました。通っていた病院のすぐ近くに図書館の分室があったそうで、時間待ちの折にでも、本を借りに行っていたのでしょう。藤沢周平全集の一冊で、『密謀』と『義民が駆ける』が所収されたものでした。
いまからもう二十年近く前のことですが、父と一緒に電車に乗る機会がありました。手持ちぶさたなようすで電車が来るのを待っている父に、たまたまわたしのカバンのなかに入っていた予備の文庫本を、「読む?」と渡したのです。中公文庫版の『義民が駆ける』でした。
ふたり並んで本を読みながら目的地に着き、別れ際、父は「この本、借りていいか?」と聞きました。買ったものの、まだ十数ページほどしか読んでいない本でしたが、いいよ、と渡したのでした。
家のどこかにわたしの中公文庫があるのだろうか、それとも処分してしまったのだろうか。父は、その全集を借りたとき、そのときのことを覚えていたのだろうか。そんなことを考えると、どうしてもその返却期限の切れた本を、図書館に持って行くことはできませんでした。
藤沢周平はほとんど読んでいるはずですが、『義民が駆ける』だけは、まだ読んでいないままです。
どうぞ皆様、よいお年をお過ごしください。
ではまた。