大江戸散策徒然噺 Introducing Japanese culture and history

豊かな歴史に彩られた日本の文化と歴史を紹介

木曽路十五宿街道めぐり (其の十二) 寝覚の床~倉本駅前

2015年08月18日 12時55分29秒 | 木曽路十五宿街道めぐり
寝覚の床でのトイレ休憩を終えて、再び旧街道筋へ戻ることにします。

寝覚の床



街道を進むと、道脇に大きな椎の大木が現れます。この大木を過ぎると前方に郵便局がある二差路にさしかかります。
私たちは左手に向かう道へと進んでいきます。

その先の左手に比較的大きな墓地が現れます。このあたりから左手の山を眺めると、木曽駒ヶ岳を見られるかもしれません。
墓地を過ぎると、左手は上松中学の広いグランドが現れます。
グランドを見ながら進むと、その先で道が狭まっていきます。道筋は小道に変るのですが、どういうわけかこの小道は石畳になっています。石畳の道は下り坂となって自動車道へつづいています。
石畳の道は150mほどの距離ですが、古いものではなく中山道の名残として復元されたものです。

寝覚の石畳

石畳があっという間に終わり、舗装道路へ変わると、前方に橋が見えてきます。滑川(なめかわ)に架かる滑川橋です。同時に周りの景色は一変し、山間へと変ってきます。
滑川橋の橋上から上流を眺めると、左右から山が迫り、その谷間に木曽川に注ぐ滑川の渓流が流れています。木曽路の山間の景色としてはかなり絶景ではないでしょうか。しばし見とれてしまうほどの美しい景色です。

滑川橋からの眺め

滑川橋を過ぎると、道筋は深い森の中を少しづつ勾配を下げながら進んで行きます。



下り坂はかなり先までつづいています。
この下り坂を歩きながら考えるのは、反対側からの上りでなくて良かったと思うことです。
陽射しを遮るくらいに鬱蒼とした森の中を歩いているような道筋です。

下り坂を下りていくと、左手にかなり大きな老人ホームが現れます。
こんな山奥にと思うような場所にある老人ホームです。
民間の老人ホームだと思いますが、規模からするとかなりの人数を収容できるはずです。
ですが、こんな山奥に入れられた老人たちは一人では外出できないのではないでしょうか。
たとえ外出できたとしても、周りには店もなく、坂の途中にあるこの施設まで一人で戻ってこれるのかどうかもわかりません。

そんなことを考えながら緩やかな勾配となる道筋を歩いて行くと、前方で大きく右へカーブを切り、JR中央本線のガードをくぐります。

JRのガードをくぐると旧道は19号線に合流し、深い森の中の道筋も終わります。



このあとの行程は19号線に沿ってすすんでいきますが、途中、分岐や合流を繰り返しながら倉本駅前へと向かいます。

19号線に合流して、僅かな距離で左側に現れるのが「小野の滝」です。
小野の滝は木曽八景の一つ「小野の瀑布」で木曽路を歩いた旅人はかならず立ち寄ったといわれる名所だったのです。

小野の滝

滝の落差はおよそ20mでそれなりに見栄えはします。滝の姿は昔から変わっていませんが、中山道は国道へと変貌し、明治43年には滝の上に鉄道が架けられました。この橋脚もンクリートなどの使用を最小限にとどめ、石積みを用いて風情を残す工夫をしているようです。

こんな滝があるところには、えてして茶屋かお土産屋があるのですが、19号線に面して位置する有名な滝にしては観光客をもてなすようなものは何もありません。

小野の滝から500mほど歩くと、荻原という小さな集落の入口にさしかかります。その入口からは19号から分岐するように左手へと細い道筋が延びています。本当に小さな集落ですが、入口の隅に置かれているのがお江戸から73番目の「荻原の一里塚跡」です。

荻原一里塚跡

街道時代には立場が置かれていたと思われます。集落の中には二十三夜の石碑が並んでいます。
また、可愛らしい水場が設置されており、現代の旅人たちが喉を潤せるような水飲み場として提供されています。

19号線から分岐して荻原集落の中を貫く道筋はあっという間に終わり、再び19号線に合流します。まっすぐに延びる19号線に沿ってしばらく歩くことになりますが、街道沿いには山並みが連なり、なんとも長閑な雰囲気を醸し出しています。





荻原集落から再び19号線に合流し、荻原沢に架かる橋を渡ると、左手に入る道が現れます。
この左手に入って行く道筋が木曽古道と呼ばれています。

私たちはそのまま19号線に沿って直進していきます。このまま19号線に沿って歩くのは、すこし飽きるなと思うころ、旧街道は再び19号線から分岐します。

3日目の行程はそれほど起伏がなく、しかも7㌔ちょっとの距離ということで安心してしまうのですが、ここから先はほんの少し勾配を高めていくような坂道へと変ってきます。

そんな分岐点に中山道の標が置かれています。
その道筋に入って行くと、すぐにJR中央本線のガードをくぐります。ガードをくぐると、すぐ右へ折れ、そのまま直進して行きます。

19号線に沿って歩くよりは、むしろ街道歩きをしているという趣を感じる道筋になります。
道は徐々に勾配を高め、坂道もほんの少しきつくなってきます。
やがて道は木々が茂る森の中へと入って行きます。木々の間から木曽川の流れとその向こうの山並みがパノラマのように広がります。
そんな道筋を進んで行くうちに、民家が3,4軒ほどしかない小さな集落が現れます。

民家を過ぎると、それまで舗装されていた道がなくなり、民家の庭先へ入って行くような土道へと変ります。ほんとうに入っていっていいのか、と一瞬迷います。というより、この道は本当に旧中山道なのかと疑心暗鬼に陥る瞬間です。



しかもここまで来て、引き返すわけにもいきません。意を決して、土道へ入って行くと道幅は草に覆われ、ますます細くなっていきます。それでも人が歩いたあとがあるので一応は道になっていると認識できます。
そんなことを心配しながらあるいていきますが、周囲の景色は木曽の美しい山並みがどこまでも連なり、ほんとうに街道を歩いているんだ、という気持ちにさせてくれます。

私が歩いた頃には、この土道の脇にはちょうど食べ時の野生のワラビやゼンマイが繁茂していました。



かつての旧中山道の道筋のほとんどは現在の19号線に吸収され、その姿は大きく変わってしまっています。
私達が今歩いてきた道筋は古い中山道がかろうじて残った部分ではないでしょうか。
そんな道筋は緩やかな下り坂となり、再びJR中央本線のガードをくぐり19号線に合流します。

しかし合流してすぐに、旧街道の道筋は19号線から分岐します。
大きく蛇行しながら民家と中央本線の線路の間をすり抜けるように旧街道は進み、僅かな距離でまたまた19号線に合流します。

合流するところが上松立町という地名で、19号線を跨ぐ横断歩道橋が設置されています。
私たちはこの横断歩道橋を渡り反対側へと移動します。

立町の歩道橋

歩道橋を渡り、今度は19号から右手へと分岐する道筋へと入って行きます。



19号から再び分岐する道筋へと入って行くと、集落が現れます。立町集落と呼ばれています。街道時代にはここにも立場が置かれ、旅人たちの休憩場所になっていました。集落の民家にはときおり、当寺の屋号が掲げられていますが、古い家並みは残っていません。集落と言っても、コンビニがあるわけでもなく、普通の民家しかありません。

立町の家並

そんな立町の集落は木曽川の流れのすぐ脇に家々が連なっています。
集落を貫く街道を進んで行くと、ふいに右手に入る道が現れ、その向こうに橋の橋脚が現れます。
しかもこの橋は趣のある吊橋です。



橋の名前は「諸原橋」です。せっかくなので吊橋をほんの少し渡ってみることにしましょう。かなり頑丈にできているので、渡りはじめの頃はそれほどの揺れは感じません。
橋上からは木曽川の流れと河原一面の大きな石、そして連なる山並みがまるで絵のように迫ってきます。



立町集落を過ぎると、第3日目の終着地点の倉本駅までは500mほどの距離を残すだけです。
立町の集落を貫く道は再び19号線と合流します。横断歩道を使っていったん左側へと移動します。
この後は19号線に沿って、倉本駅へと進んでいきます。

倉本駅舎

倉本駅舎は19号線の左側の高台に置かれています。見る限り駅舎周辺には集落らしきものはないのですが、この駅を利用する住民はいるのでしょうか?もちろん無人駅です。
尚、当駅は寝覚・上松宿方面、あるいは三留野・妻籠に向かうのに便利なため、中山道を歩く現代の旅人にとっては使い勝手がいいようです。

本日の終着地点である倉本駅前に到着しました。上松駅前を出発して、7.3キロの歩行距離です。

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