大江戸散策徒然噺 Introducing Japanese culture and history

豊かな歴史に彩られた日本の文化と歴史を紹介

三河豊橋~東海道吉田宿・豊川ほとりの吉田城址公園~(愛知県豊橋市)

2011年06月09日 20時15分52秒 | 地方の歴史散策・愛知県豊橋市
先月5月19日から10日間ほど私用で愛知県豊橋に滞在していました。その間、岡崎への小旅行や豊橋市内のぶらり散策を愉しみました。

現在の豊橋市は江戸時代にはお江戸日本橋から34番目の吉田宿(宿駅)として栄えていました。歌川広重の吉田宿を描いた浮世絵には普請のため足場を組んだ「吉田城櫓」とその背後にゆったりと流れる豊川と木造の大橋「豊橋」(現在の吉田大橋)の光景が広がっています。



広重の吉田宿の絵の構図は現在のそれと寸分たがわない姿で残っています。名古屋方面から1号線を下り豊橋市内への入口である吉田大橋にさしかかると、豊川を挟んで左手に吉田城の櫓が浮き上がり、まるで一幅の絵を眺めているような光景が目に飛び込んできます。おそらく江戸時代の旅人も江戸へ下る道すがら、ここ吉田宿に入る時に同じ様な光景を眺めていたのでは、と感慨深いものがあります。

豊橋に滞在中、この櫓が気になって是非一度訪れて見たいと思っていたのですが、いつでも行けると思い後回しになっていました。天気が良いこの日、豊橋市内の散策と併せて一度乗ってみたいと思っていた市電を利用してJR豊橋駅から吉田城址へと向かいました。

豊橋の市電

JR豊橋駅から市電で4つめの市役所前まで所要約7分ほど。乗車賃は大人150円。
市役所前という駅名から豊橋市役所に至近なのですが、実はこの駅の前にはものすごく風格のある建物が建っているのです。正面ファサードのアーチと幅の広い階段そして建物上部の2つのドームの建築様式がまるで中国西域のウルムチやトルファンにある建造物に相似していることに驚きました。

豊橋市公会堂

なんと県指定文化財でもあり、国の登録文化財でもある「豊橋市公会堂」です。この建物は豊橋市が市制25周年記念と昭和天皇の御大典記念事業を兼ねて建設したもので昭和6年に竣工しました。

日本的でない建築様式で西洋建築のルネサンス様式を基調としたものです。なかなか堂々とした風格を醸し出しており、建物上部にはモザイクタイルを貼ったドームが2つ置かれ、そのドームの四隅には力強く羽ばたいて飛び立とうとする4羽の鷲の像が付けられています。この鷲の像のレプリカが公会堂の脇に展示されていました。

鷲のレプリカ

公会堂の脇の道をまっすぐ進むと、こんもりと木々が茂った場所が見えてきます。この場所がかつて吉田城があった城址で「豊橋公園」と呼ばれています。

さて吉田城は当初は今橋城と呼ばれ、永正二年(1505)に牧野古白によって築城されました。以来、東三河の要衝として今川、武田、徳川らの戦国武将の攻防を経て、天正十八年(1590)に池田輝政が入封し、15万2千石の城地にふさわしい拡張と城下町の整備が行われました。しかし輝政は在城十年で播州姫路に移封され、のちに入封した大名は譜代ながら少禄のため輝政によって大拡張された城地も未完成のまま明治に至ったとのことです。

そんな吉田城の郭はそれほど大きくないのですが、天然の堀割として豊川を擁し、本丸、二の丸、西の丸を囲むように掘割が巡らされていたようです。大手門があったと思われるところに公園の入口があり、その入口を入るとすぐに二の丸口門跡と呼ばれる広場が目の前に現れてきます。

二の丸口門跡

二の丸跡を抜けて行くと、「兵どもが夢のあと」を思わせるように空濠となった内掘と石積みの城壁が荒城の風情を醸し出しています。天守そして本丸へつづく城門があったと思われる石積みの向こうにやや視界が広がります。その視界の中にまるで天守閣ではないかと思われるような立派な「櫓」が姿を現します。

内掘跡
本丸へとつづく城門跡
城門の石垣

三層三重の堂々とした櫓ですが、かつてはこのような櫓が本丸の4隅に置かれていたとのことです。現在は豊川を臨む北西の角に置かれているだけです。

吉田城櫓
吉田城櫓

この櫓のある場所から豊川べりに降りる階段があり、川沿いを散策する事ができます。また豊川の支流である朝倉川沿いの新緑の木々に覆われた遊歩道を進むと、それらしい木橋が現れ古城の風情を嫌が応にも堪能できます。

豊川べりへつづく石段
土塁跡
朝倉川に架かる木橋

城内を一巡してみたのですが、鬱蒼とした木々に覆われ朽ちかけた土塁がいたるところに残り、戦国の世から近世までの長い歴史を無言のうちに語りかけるように静かに佇んでいました。

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