大江戸散策徒然噺 Introducing Japanese culture and history

豊かな歴史に彩られた日本の文化と歴史を紹介

ひっそりと佇む近江坂本の日吉東照宮

2016年10月31日 07時51分23秒 | 地方の歴史散策・近江坂本~日吉東照宮~
2016年10月29日
ゆく秋の風情を求めて京都そして近江への旅を楽しみました。京都から朝一番でJR湖西線にのり、近江の比叡山坂本駅(JR)へ向かいました。比叡山坂本駅からは日吉大社へとつづく参道を歩き、坂本ケーブルの駅へと向かいます。
そして8時始発の坂本ケーブルで比叡山延暦寺へ詣でることにしました。小雨降る中で延暦寺(根本中堂)の参拝を終えて、そそくさと坂本ケーブルに乗って坂本の町に戻ってきました。

坂本ケーブル
坂本ケーブル

◆坂本ケーブル
毎時/00分・30分発
運賃:大人片道860円 往復1,620円
所要時間:11分
※京阪電車の「湖都古都・おおつ1dayきっぷ」(大人600円/小人300円)を買えば、坂本ケーブルの運賃が2割引きになります。

坂本ケーブル往復切符
湖都古都・おおつ1dayきっぷ

近江坂本の町は日吉大社の門前町として栄え、比叡山の隠居した僧侶が住み暮らした「里坊」の町として知られています。
そんな坂本の町に東照宮が社殿を構えていることを知りました。そして東照宮は坂本ケーブルの坂本駅からほんの僅かな距離に鎮座しているのです。

ケーブル駅を後にして、表示に従ってすぐ右手の橋を渡ると左手にカーブするなだらかな坂道を上りきると東照宮への石段が現れます。この場所からはほんの僅かな段数で東照宮正面の唐門前に到達することができます。
もし、一番下から登ってくる場合はかなり急な石段を覚悟しなければなりません。

唐門(国重文)と透塀(国重文)
唐門

東照宮拝観
金・土・日・祝日の09:00~16:00
拝観料:大人200円
☎077-578-0009
〒520-0113 滋賀県大津市坂本4-2-12

日吉東照宮は元和9年(1623)、三代将軍家光公の御世に天海僧正よって創建され、その後、寛永11年(1634)7月に権現造りの様式に改築され、現在に至ってます。
実は寛永11年の11月には日光東照宮も大規模改築が行われているのですが、ここ日吉東照宮が日光東照宮の雛型になったといわれています。このため「権現造り」の発祥はここ日吉東照宮といわれています。

日吉東照宮は江戸時代を通じて延暦寺の管轄下にあったのですが、明治の神仏分離令により日吉大社の管轄に変わり、明治9年(1876)に末社に制定されました。

尚、日吉東照宮社殿は戦前は国宝に指定されていたのですが、昭和25年(1950)に重要文化財に格下げされ、その後、唐門と透塀が昭和31年(1956)に重要文化財に追加指定されています。

そんな重要な歴史的建造物にもかかわらず日吉東照宮は日光、久能山、鳳来寺山、上野、滝山などの東照宮に比べて、あまり知られていないのではないでしょうか?

さあ!それでは神君家康公にご挨拶とまいりましょう。

唐門手前右側に受付があるので、ここで拝観料を納めます。私たちが訪れた時は他の参拝客は誰もいなかったので、貸切状態です。受付のおばちゃんが言うには「拝殿の中も自由にご覧になってください」とのこと。まさか拝殿の中まで入れるとは思わなかったので「本当ですか?」とつい声が出てしまいました。

唐門を抜けると拝殿が現れます。拝殿内部へと通じる階段には赤い毛氈が敷かれています。

拝殿(国重文)
拝殿
拝殿向拝
拝殿

赤い毛氈が敷かれた階段を登ると煌びやかな拝殿内部が迎えてくれます。

拝殿内部
拝殿内部
拝殿内部
めったに体験できない拝殿内部での記念撮影

拝殿の後ろには本殿が控えているのですが、本殿には入ることができません。拝殿と本殿をつなぐ部分には「石の間」があるのですが、この石の間は拝殿と本殿の位置よりも数段低い位置に置かれています。
これは祭典奉仕者が将軍に背を向けて奉仕しても非礼にならないように工夫された造りなのです。

東照宮の御祭神はもちろん神君家康公です。ここ日吉東照宮では中央に家康公、向かって右が日吉大神、左が豊臣秀吉の三神が祀られています。

拝殿内部は煌めくばかりの金箔が施され、うす暗い内部にもかかわらず金箔の輝きが浮かびあがってきます。

拝殿内部
拝殿内部
拝殿内部
拝殿内部
拝殿内部

厳粛な雰囲気が漂う拝殿を辞し、拝殿と本殿を外側から俯瞰してみました。拝殿内部の色彩はかなり鮮やかな彩が残っていますが、建物全体の彩は少し褪せているように思えます。

東照宮全体俯瞰
透塀
東照宮全体俯瞰
東照宮全体俯瞰
拝殿
拝殿

土曜日の午前中なのですが、私たちが参拝している間、他の参拝客は誰一人訪れることがありませんでした。
こんな素晴らしい歴史建造物と神君家康公を独り占めできるなんで夢のような体験です。
最後に受付のおばちゃんと話をすると、「ここの東照宮にはほとんど人がこないの。だから平日は閉館しているのよ。」とのこと。

確かにここ坂本は日吉大神の方がメジャーなのかもしれません。ましては東照宮は日吉神社の末社という位置づけということもあり、観光パンフレットにも東照宮についての詳しい記述がありません。
なんとも寂しいかぎりです。近江坂本に行く機会があれば、是非東照宮に参拝なさることをお勧めいたします。

東照宮から坂本の町へ向かう時は、長く急な石段を下ることにしました。

石段
石段

このあと穴太衆が築いた石垣が残る坂本の町をそぞろ歩きしながら京阪坂本駅へと向かいました。

坂本の町の石垣
滋賀院門跡の石垣

京阪坂本駅のすぐそばに、老舗の蕎麦屋鶴㐂そばがあります。
江戸時代の享保元年(1716)創業ということは、ちょうど300年の歴史を持っています。
東照宮よりも知られている老舗の蕎麦屋さんです。せっかくなので私たちも美味しい蕎麦を食ました。


鶴㐂そば

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