さあ!いよいよ国会議事堂・衆議院本館の見学です。
おおよその見学ルートは…
本館内部の階段(約90段)を上り、4階部分へと向かいます。
※歩行に自信のない方は衛視の方に事前に申告しておいたほうがいいでしょう。
階段を使用しない場合は別ルートからエレベーターを利用して4階部分へ向かいます。
4階部分と言われていますが、実は国会議事堂の両翼の建物は外見上、3階建ての建物です。しかし一部、4階構造となっているようです。
この4階部分は本会議場の傍聴席の最上部分にあたり、参観者はこの4階部分から傍聴席へと進むことになります。
衆議院本会議場
尚、本会議場見学の順路については、当日の込み具合により最初になったり、最後になったりと特定できませんが、一般的には参観の最後に本会議場の見学が組まれていることが多いようです。
それでは下記の3階見取り図を見ながら見どころを紹介していきましょう。
①見取り図内の(←4階から)階段を下りて、3階へと進みます。
この階段を下りる時に足元をご覧ください。この階段部分から皆さん方が憧れる「国会の赤絨毯」が始まります。
この赤絨毯は衆参両院の廊下や階段に約4kmに渡って敷き詰められているんです。
この絨毯は国産で山形のオリエンタルカーペット社製です。値段も1mあたり3万円もする特注品です。
踏み心地のよさは格別ですよ。
②10段弱の階段を下りると長い廊下が左から右へと伸びています。
すこし薄暗い廊下の左側にいくつかの部屋が並んでいます。
この部屋は委員会室と呼ばれているのですが、皆さん方が良く知っている予算委員会が行われる部屋もあります。予算委員会が開催される部屋は「第一委員会室」です。
第一委員会室は階段を下りて左手の最初の部屋です。参観ルートでは第一委員会室の近くに行くことはありません。
③赤絨毯が敷かれた廊下を進むと、左側に委員会室が並んでいます。
廊下の右側にはいくつかの窓から外光が差し込んでいます。ちょっと窓から下を覗いてみてください。そこには衆議院本館の中庭がご覧になれます。
中庭には水を湛えた噴水が置かれています。この噴水は議事堂が完成当時からあるもので、創建当時(昭和11年当時)は馬に引かれた馬車で登院する大臣や議員さんがまだいたようです。
その馬の水飲み場として使用されていたとも言われています。また、噴水の淵を飾るライオンの顔の彫刻が見えるはずです。すべてのライオンの顔がまったく異なっています。
これはさまざまなライオンの顔はさまざまな民意があってこそ民主主義が確立するという考えからデザインされました。
また噴水の地下には部屋があるそうです。かつて今のように冷房装置がなかった時代にこの地下の部屋に氷柱をたて風を吹きかけ、その冷風を議事堂内に送風していたと言われています。その噴出し口が廊下の部屋側の壁下の方に嵌め込まれた「透かし彫りのレリーフ」です。
④それではこの廊下の右側の壁をご覧ください。色合いが異なる部分があります。
ちょうど人の背中から腰にかけてのあたりの高さの色合いが白くなっているのがわかります。今歩いている廊下は前述のように委員会室前ですが、議事堂が完成後、80年弱の間、この委員会室ではさまざまな重要な案件が審議され、その結果を待つ国会詰めの番記者たちが壁際にたって待っていたことを想像してみてください。
彼らは壁に寄りかかり、着ているスーツを壁に擦りつけながら待っていた結果、一部分が白くなってしまったと言われています。もちろん1日に多いときには数千人という参観者が訪れる国会議事堂ですから、彼らが手でさわり、そして体を擦り付けることもあるでしょう。いずれにせよ80年余りの議事堂の歴史を感じさせてくれる見どころです。
⑤この廊下を歩いて行くと前方に白く浮き上がったような場所が見えてきます。
これは天井部分が白の漆喰で塗られているからなのですが、これまで歩いてきた廊下とはまったく違った雰囲気を醸し出しています。
いよいよ議事堂の中でも最も威厳を感じる場所です。白い漆喰塗りの天井、美しい模様が描かれた大理石造りの床、壁面を飾る大理石、天井に嵌め込まれた美しいステンドグラス、どれをとっても当時の日本の最先端の技術と膨大な予算を投入して造られた一角です。
この一角が威厳に満ちた場所であることは、一歩足を踏み入れるとすぐに「皇族室」「御休所」と書かれた表示が目に入ってくるからです。
そうなんです!ここが旧帝国議会の時代から使われてきた陛下や皇族の方々の特別なお部屋なのです。
進行方向左手手前の部屋が「皇族室」そしてその右隣の部屋が「御休所」です。
内部は絢爛豪華という派手さはありませんが、部屋のインテリアや素材は当時の最高級品を用いて造られています。
特に床は日本の伝統的な寄木貼りの上に絹の絨毯です。御休所内の造りは安土桃山様式を採用し、日本建材として最高品質の本檜(ヒノキ)を用い、本漆塗りで仕上げています。
ご休所内
皇族室内
随所に透かし彫りを用いており、扉は漆塗りの高蒔絵に螺鈿(ラデン)をちりばめ、ドアノブ、鍵などの金物はすべて純金メッキが施されています。御休所の中央に置かれているテーブルがL字型になっています。これは昭和天皇の御代に軍服でお越しになった時に陛下のお帽子を置くためにテーブルを付け足したものです。
御休所内の右奥に暖炉が置かれています。暖炉を覆う赤い色の大理石は静岡県産の「紅葉石」です。花紋が彫刻されています。暖炉の上の置時計は純金製です。
それでは御休所内の天井をご覧ください。見事なシャンデリアが吊り下げられています。
このシャンデリアはすべて水晶製です。
そして圧巻なのは御休所の入り口を飾る大理石です。一枚岩の大理石に彫刻が施され入り口に嵌め込まれています。この大理石は徳島県産の「ほととぎす」と呼ばれています。
そして御休所前の床には美しい大理石のモザイクが描かれています。国産の33種類の大理石を使用しています。
最後に漆喰塗りの天井をご覧ください。美しい文様のステンドグラスが嵌め込まれています。議事堂の建材の99%は国産と言われていますが、このステンドグラスは数少ない外国産です。当時、ステンドグラスの製造においてそれほど技術が進んでいなかった我が国はイギリスにステンドグラスの製造をお願いしたのです。
そして漆喰塗りの天井に「アカンサス」の花弁のレリーフが施されています。
このように最高級の建材や材料を惜しげもなく使った「皇族室」「御休所」そして御休所前のスペースに費やした工費は、議事堂建設の総工費2,570万(当時の金額)の約1割に相当すると言われています。
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