川上未映子著『ぜんぶの後に残るもの』2011年8月新潮社発行、を読んだ。
新潮社の宣伝文句はこうだ。
津波にも地震にも奪いきれないものが、わたしたちのなかにはある!
震災に関するエッセイが最初に8編。週刊誌に連載されたものなので、震災直後の動揺の中で書かれているのだが、著者の芯がしっかりしているのに感心した。若いし、ミュージシャン、女優でもあり才能はあるが、軽いのりの人と思っていたが。
大部分(多分48編)は、著者の身の回りで起こったこと、ネットで知ったことなどについてのエッセイ集。
いくつか、ご紹介。
困った人がクレームの電話を編集部にかけてくる。受話器をそのまま置いて別の仕事をして7時間後に思い出して耳にあてるとまだ同じテンションで話を続けていた。断ったのにそちらに伺いますと言ってやってくる。玄関で追い返したら、「行くところがありません」という。ではと、ライバル社の編集部の地図を渡すと、「あのわたし、いま、ここから来たんですけど・・・」ライバル社がこちらの地図を渡していたのだった。
初出:週刊新潮「オモロマンティック・ボム!」2010年4月22日号~5月12日号、日本経済新聞「プロムナード」2010年3月31日から4月28日
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
日常のささいな話が多いので、男性には受けないかもしれない。しかし、細かな感情のあやが、ユーモアやちょっとした驚きと共に独特の文体でつづられている。
絨毯を見に行って50万円と聞いてそのまま帰ってくる。子供の頃、母と絨毯を買いに行ったことを思い出す。8千円と1万2千円でさんざん迷い、結局高い方を買い、担いで帰る。畳の上に広げて、家族で照れ笑いし、本当に幸せな気持ちになった。・・・