hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

万城目学『プリンセス・トヨトミ』を読む

2011年10月19日 | 読書2
万城目学著『プリンセス・トヨトミ』2009年3月文藝春秋発行、を読んだ。

空堀商店街の息子に、その幼馴染の女子。彼らが、大阪人に連綿と引き継がれてきた、秘密の扉を開けてしまうのだった……。

会計検査院からやってきた個性豊かな調査官3人。卓越した能力で徹底的に相手を追求するがアイスクリーム中毒の“鬼の松平”、冴えない外観でうっかり者だが無意識に重大な問題を発見してしまう“ミラクル鳥居”、ハーバード出身でモデル体型だが、実はガチガチの大阪人の美女、旭・ゲーンズブール。彼ら次々と調査を完遂するのだが、社団法人OJOだけが活動内容も含め謎のまま残る。

一方、大阪城近くの空堀商店街にあるお好み焼屋の中学生真田大輔には、幼い頃から“女の子になりたい”という願いがあった。ある日決意して、幼なじみの橋場茶子と一緒にセーラー服で学校に行く。以来、大輔は厳しいイジメにあう。

そして、5月末日の木曜日、大阪が完全に止まる。

初出:「別冊文藝春秋」2008年1月号~2009年1月号



万城目学(まきめ まなぶ)
1976年生まれ。大阪府出身。京都大学法学部卒。化学繊維会社で経理を担当しながら小説を書く。
2006年『鴨川ホルモー』でボイルドエッグズ賞受賞しデビュー、2009年映画化、舞台化
2007年『鹿男あをによし』で直木賞候補、2008年TVドラマ化
2009年本書『プリンセス・トヨトミ』で直木賞候補、2010年映画化
2010年『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』で直木賞候補



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

出だしからキャラが鮮やかな会計検査院の3人組みが読ませる。少し間延びし始めた頃、男女二人の中学生が登場するが、少年の男性としての違和感に乗れないし、ストーリー上の必然性にも疑問がある。
荒唐無稽な話にも面白く付いて行ったのだが、後半の異常な盛り上がりにはちょっと置いていかれてしまった。

「なぜこんな御伽噺のような世界を信じることができるのか?」という問いへの答えはこうだ。
「それは父の言葉だからだ、・・・」「あのトンネルを二人だけで歩く。ゆっくりと、父親の歩調に合わせて。行きと帰りで、一時間から二時間はかかる。・・・あなたは大人になってから、一時間でも、父親と二人だけの空間で話し合ったことがあるか?・・・そう――男は普通、そんな時間を一生持たない。・・・」


コメント
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