高野秀行・角幡唯介著『地図のない場所で眠りたい』(講談社文庫た116-6、2016年10月14日発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
探検部を卒業し、今を時めく人気ノンフィクション作家となった高野秀行と角幡唯介。未知の世界への憧れを原動力とする点は共通するが、テーマの選び方やアプローチの仕方は大きく異なる。高野は混沌とした人の渦へ頭からダイブし、角幡は人跡未踏の地をストイックに攻める。夢追い人二人の、仕事の流儀!
子供時代や、早稲田探検部時代、探検への考え方、本の書き方などを語り合う。なお、二人は10歳違いで、角幡が早稲田探検部へ入部したとき、既に高野は伝説の先輩で、直接知り合うことはなかった。
二人の会話はこんな調子だ。
高野:「冒険・探検はいつ好きになって探検部に入ったのか」という聞かれ方をよくされるんだけど、そうじゃなくて、みんな昔は好きだったのにどんどんやめてっちゃって(笑)。
角幡:要するに、子どものまんまってことですかね(笑)。
高野:・・・ジャングルの奥地で謎の原始猿人バーゴンを探したりとか、頭がふたつある蛇を探したりとか、そういうものをかぶりつきで見ていたから、(川口探検隊を)ずっと事実だと思っていたんだよ。大学で探検部に入ってからその話を先輩にしたら、「いや、あれはウソだろう」と言われて愕然としたんだよね。
角幡:それもマズいですね、ちょっと、変わってると言ったら失礼かもしれないですけど(笑)。僕は川口浩探検隊は好きだったけど、ウソだと思ってました。
高野:本当に? 夢がないね、君は(笑)。
角幡:・・・僕は探検というのは基本的に土地の話だと思っているんです。その場所がどうなっているかということ。いっぽうで冒険というのは人の物語。主人公は自分であるというストーリー。
高野:僕は南部ソマリアに行く前は、モガディシュ(首都、治安崩壊都市として有名)というところは人なんかろくに住んでいないと思っていたんだよ。・・・いざ行ってみたら、もう大都会で、市場なんか活気に溢れているし、「なんだこりゃ」って思ったんだよ。・・・
新聞記者とかジャーナリストも、そういうことについては書かない。
角幡:どれだけ悲惨かみたいなことしか書かない。
初出:2014年4月講談社より単行本として刊行
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
探検に興味のない人は多いと思うし、そんな人には何が面白いのかわからないだろう。しかし、とくに探検好きではないが、6か国語を操り、すぐに現地に溶け込んでしまう高野さんのファンとしては「★★★★(四つ星)」なのだ。高野さんがなぜ危険なのにとぼけたことをやらかすのかをはっきりと語っている本はこれしかない(?)。
皆のあこがれの朝日新聞社をやめて冒険家になった角幡という人は、やっていることには驚かされるが、根はまともで、面白がるにはまとも過ぎる。
角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)
1976年北海道生まれ。
早稲田大学政治経済学部卒後、朝日新聞社入社。
退社後執筆した『空白の五マイル』で開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞。
『雪男は向こうからやって来た』で新田次郎文学賞受賞。
『アグルーカの行方』で講談社ノンフィクション賞受賞。