hiyamizu's blog

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小川洋子『人質の朗読会』を読む

2012年03月12日 | 読書2
小川洋子著『人質の朗読会』2011年2月中央公論新社発行、を読んだ。

地球の裏側の遺跡を訪れた日本人ツアー客7名、添乗員、運転手が反政府ゲリラに拉致され、怪我をした運転手が助けを求めて来る。百日以上経過後、軍と警察が誘拐現場に強行突入し、犯人全員5名、特殊部隊2名、人質8名は全員死亡する。
その後、誘拐現場に仕掛けられていた録音テープが公開される。テープには8人が書いた話を朗読する声が残っていた。

このように強烈に始まる物語だが、以降は8名の人質の本事件には無関係なのんびりした昔の思い出話と特殊部隊隊員が子供の頃に会った日本人の思い出話なのだ。
長い人質生活の中で犯人グループとの間にコミュニケーションも生まれ、徐々に命の危険を感じる恐怖は薄れていったらしい。朗読の合間、彼らは実によく笑っている。


初出:「中央公論」2008年9月~2010年9月号に年4回掲載



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

被害者と犯人が時間、場所を共有すると互いに依存関係になるというストックホルム症候群というのがあるそうだが、この小説は、厳しく始まり、あとは事件と無関係で互いに独立な、のんびりした話が並ぶ構成には拍子抜けだ。

話の多くは、いつもの小川さんのちょっと奇妙でほんわかした話だ。それはそれで面白いのだが。



小川洋子は、1962年岡山県生れ。
早稲田大学第一文学部卒。1984年倉敷市の川崎医大秘書室勤務、1986年結婚、退社。
1988年『揚羽蝶が壊れる時』で海燕新人文学賞
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞
『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞、2006年に映画化
2004年『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞
2006年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞
その他、『カラーひよことコーヒー豆』、『原稿零枚日記』『妄想気分』など。
海外で翻訳された作品も多く、『薬指の標本』はフランスで映画化。
2009年現在、芥川賞、太宰治賞、三島由紀夫賞選考委員。


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