hiyamizu's blog

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王谷晶『ババヤガの夜』を読む

2021年06月21日 | 読書2

 

王谷晶『ババヤガの夜』(2020年10月20日河出書房新社発行)を読んだ。

 

出版社の内容紹介は以下。

お嬢さん、十八かそこらで、なんでそんなに悲しく笑う――。暴力を唯一の趣味とする新道依子は、腕を買われ暴力団会長の一人娘を護衛することに。拳の咆哮轟くシスターハードボイルド! 装画:寺田克也

 

タイトルの「ババヤガ」とはスラブの民話に登場する鬼婆。主人公の新道が北海道に住んでいた頃、祖母に聞かされた話として登場。

 

混血児で両親もいないままに、喧嘩術のみを祖父から叩き込まれ、暴力のうずきが燃える新道依子が、暴力団組長の一方的な強制で不自由な生活を強いられている娘・内樹尚子のボディガードをすることになる。性格も境遇も全く異なる女性二人が、互いに無視、反発から、交流を経て、連帯(シスターフッド)に至る物語。

 

新道と尚子の話の合間に、芳子と正の話が挿入されて、進んでいく。

 

新道依子(しんどう・よりこ):22歳。170㎝以上、75㎏。ロシアの血が入った武闘家。

内樹尚子(ないき・しょうこ):華奢で古風な美少女。母は当時の若頭マサと駆け落ちし、父・源造は二人の行方を10年以上追っている。

内樹源造:関東最大規模の暴力団奥津組の直参の内樹會会長。尚子の父。60代半ば。腹の突き出た禿頭。

柳:内樹會の若頭(?)。長身の混血。テコンドーの達人。

宇田川:登島興業社長。内樹源造の兄弟分。趣味は拷問。婚約者は……。

 

 

尚子「…あなたのお母様は? 何を作って食べさせたら、そんな熊みたいに野蛮に大きく育つのかしら」

依子「知りません。親の顔、見たことないんで」

返事は無かった。(p48-49)

 

初出:「文藝」2020年秋季号

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

全体は喧嘩シーンのオンパレードでバイオランス真っ盛り。男性にも負けない桁違いな女性武闘家は爽快だ。美女ではなく、パワーで泥臭く、ともかく叩き壊せばいいんだろうと戦う姿がいいじゃない!

 

依子と尚子が当初はあまりにも違う境遇からつっけどんだが、互いを理解してシスターフッドになっていく過程を微笑ましく見守れる。

 

時代順に並べてないという禁じ手にすっかり著者に騙されてしまったが、事実を知った後にはこれもいいねと思える。

 

 

王谷晶(おうたに・あきら)

1981年生まれ。著書に『探偵小説には向かない探偵』、『あやかしリストランテ 奇妙な客人のためのアラカルト』、23の短編集『完璧じゃない、あたしたち』、エッセイ『どうせカラダが目当てでしょ』など。

小説丸に本作品についての著者インタビューがある。

 

 

お勉強

シスターフッド:女性同士の連帯を表す語で、友情と似ているものの利害関係を超えた関係性のこと。

刺股(さすまた):相手の動きを封じ込めるため、2、3メートルの柄の先にU字形の金具が付いた武具及び捕具。

嬲り(なぶり)殺す

膾(なます)にされる

擂身(すりみ)

金盥(かなだらい)

 

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