hiyamizu's blog

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O・ヘンリー『1ドルの価値/賢者の贈り物』を読む

2019年09月30日 | 読書2

 

O・ヘンリー『1ドルの価値/賢者の贈り物 他21編』(光文社古典新訳文庫KAへ2-1、2007年10月20日光文社発行)を読む

 

裏表紙にはこうある。

アメリカの原風景とも呼べるかつての南部から、開拓期の荒々しさが残る西部、そして大都会ニューヨークへ――さまざまに物語の舞台を移しながら描かれた、O・ヘンリーの多彩な作品群。20世紀初頭、アメリカ大衆社会が勃興し、急激な変化を遂げていく姿を活写した、短編傑作選。

 

最後のびっくり落ちと市井の人情話で知られる短編名手・O.ヘンリーの23篇の短編集。

「解説」と、「年譜」が追加されていて、続く「訳者あとがき」にこうあるが、言い得て妙だ。

何やら、普段は何をしているのやらよくわからないけれど、話だけはめっぽう面白い遠い親戚の叔父さんに久しぶりに会い、その叔父さんの語る奇想天外な物語に時を忘れて耳を傾けている気分を味わった。

 

物語が本という活字を介して伝播するようになる以前の、文字どおりの“語り”だったころの名残を感じた…。

 

なお、青空文庫でも4作品(賢者の贈り物、最後の一枚の葉、罪と覚悟、魔女のパン)を読むことが出来る。

  

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

O・ヘンリーといえばニューヨークの貧しい地域に住む人々の話と思っていたが、この本では米国の地方に住む人の話も出てきて、もっともっと幅広い作品があるのだと知った。最後のどんでん返しにすべてをかけるという点はすべて共通しているのだが。

添付されている著者の詳細な年譜を見ると、米国を幅広く移っているし、中米ホンジュラスまで行っている。逃亡だが。

 

あらためて、この本でO・ヘンリーを23編も続けざまに読むと、驚かせるストーリーテイラーだけでなく、文も巧みだし、観察は細かく、描写も簡潔で上手だと思った。

 

ところで、どうして「オー・ヘンリー」でなくて「O・ヘンリー」なのだろうか?

 

 

O・ヘンリー O.Henry
1862‐1910。アメリカの小説家。ノースカロライナに生まれ、テキサスで創作を始める。銀行勤務のかたわら週刊新聞を発行するが横領容疑で起訴され、中米ホンジュラスに逃亡する。帰国後、オハイオ州立刑務所に服役。出所した後はニューヨークに活動の拠点を移し、新聞・雑誌に多数の短編を発表して一躍人気作家に。没後、優れた英語の短編作品に与えられるO.ヘンリー賞が創設された 

芹澤恵(せりざわ・めぐみ)
成蹊大学文学部卒業。英米文学翻訳家。

訳書に、『夏草の記憶』(クック)、『愛しのクレメンタイン』(クラヴァン)、『夜のフロスト』(ウィングフィールド)、『裁きの街』(ピータースン)、『真夜中の青い彼方』(キング)など

 

 

気になった言葉

若者の悲しいは、分かち合う者がいればその者が分かち合った分だけ軽くなる。年寄の場合は、その悲しみを他者に分け与え、さらに分け与えても、最初に抱えていた悲しみは決して軽くならない。(伯爵と婚礼の客 p95)

 

 

 

以下、ネタバレぎみの自分へのメモ

 

「多忙な株式仲買人のロマンス」                                                                         
多忙な株式仲買人が、1年前から勤めている若い美貌の速記者に代わりの速記者を募集するように秘書に言っていたことをすっかり忘れていた。そして、株価大暴落の兆しの中、思い切って彼女にプロポーズする。しかし、既に‥‥。

「献立表の春」

レストランの毎日かわる献立表をタイプ打ちする仕事を請け負ったセアラは、夏に滞在した農場の息子・ウォルターと恋をし、春になったら結婚する約束をした。しかし、ニューヨークに戻った彼女に2週間も彼からの連絡がなかった。連絡がついたのは、献立表のWの文字が特徴あるタイプライターの癖があったから。しかし、タンポポ(dandelion)にはWの文字は入っていないのに??


「犠牲打」
「ハースストーン・マガジン」は専属の閲読者は置かず、様々な階層の読者から意見を得ていた。スレイトンは「恋こそすべて」の原稿を編集部へ持ち込んだ。この時、守衛が夫婦喧嘩していて、守衛の男は彼に「まあ、これが夫婦ってやつなんだろうね」、「あれがその昔、おれが夜も眠れないほど想い詰めた娘なんだからね。」といった。スレイトンは編集長がミス・パフキンに原稿閲読を依頼すると確信し、彼女に愛を告白し、結婚までしてしまった。雑用係の若者がミスをして‥‥。

「赤い族長の身代金」

誘拐した金持ちの悪童にてこずり‥‥。


「千ドル」

放蕩し放題のジリアンは、叔父の遺言状に従い中途半端な1000ドルを受取った。何に使ったか報告するという条件で。いろいろ使い道を探ったのち、彼は叔父が後見人をしていた大人しく善良な女性ミス・ヘイドンに叔父からだと言って千ドルを渡し、その旨封筒にしたためた。弁護士事務所で彼が無駄使いしなければ5万ドルを彼に、そうでなければ、ミス・ヘイドンにとの追加遺言状を聞かされた彼は……。


「伯爵と婚礼の客」「しみったれな恋人」 略

「1ドルの価値」

地方判事に、がらがら蛇を名乗る男から恨み節を記した脅迫状が届いた。有名な悪漢メキシコ・サムからで、判事は恋人といるときに彼に襲われたが、反撃に必要な強力な弾丸がなかった。鉛で作った出来の悪い偽造の1ドルコインを薬が必要な女のために使用し、有罪確実な男がいた。その証拠品の鉛のコインは判事のポケットにあって、‥‥。


「臆病な幽霊」


「甦った改心」

ジミー・ヴァレンタインは名人芸の金庫破りだった。エルモア銀行主の娘・アナベル・アダムズに一目ぼれして、改心し、街に住み着き、1年後、まもなくアナベルと結婚することになった。新型金庫の中に女の子が閉じ込められ、開けることができなくなったとき、彼は……。そして、彼を追い詰めた捜査官・ベン・プライスは……。


「十月と六月」

歳の離れすぎた大尉が女性にプロポーズして、断られる。チョーサー作「カンタベリー物語」の中の「商人の話」の場合が記憶にあるといっそう‥‥。


「幻の混合酒」


「楽園の短期滞在客」

避暑地のホテルに滞在する美しいイブニング・ドレスを着た優雅なマダム・ボーモン。チェックインの時にヨーロッパ航路の汽船の出港日をたずねたハロルド・ファリントン。


「サボテン」

トライスデールは、慕い慕われていた彼女との間がなぜ急激に潮目が変わったのかわからず嘆くばかりあった。彼のプロポーズに彼女は「お返事は明日、差し上げます」と言った。スペイン語が流暢という話を否定しなかった彼の所に、翌日何の手紙もなく送られてきたのはサボテンだった。待てども待てども返事は来づ、2日後パーティで逢った彼女は冷たかった。サボテンの名前はペントマルメ。スペイン語で“わたしを迎えにきて”だった。

 

「意中の人」

ハートリーは「決して後悔はさせない。きみに安らげる家庭を提供する。それができるのはぼくだけだ」と熱心にヴィヴィアンを口説いていた。ついに彼女は言った。「わたしのような立場の者が、お宅に乗り込んでいけるとお思いですか――エロイーズという人がいらっしゃるところに?」

ハートリーは「彼女には出て行ってもらう」「今夜だ」。ヴィヴィアンはエロイーズに代わる‥‥。


「靴」

ジョニーが赴任した国の町・コラリオで靴屋が成り立つかどうか問い合わせがあった。しかし、靴を履いている人は人口3千人のうち20人ほどで、「…靴の販売事業の可能性は不当に過小評価されているどころか無視されているのが現状で、相当数の住民が靴なしで生活しているのです。」との返事を出した。その結果、大量に靴を積み込んだ船が着いてしまった。考えあぐねたジョニーはアラバマ州の出身地に「棘のある木の実」を大量に注文した。


「心と手」

列車に乗ってきた手錠でつながれた二人の男が若い娘の前の席に座る。話しかけられた目鼻立ちの整った若い方の男は「左手で失礼しますよ。あいにく右手は、目下ふさがってるもんですから」と言った。右手を使えなくするのは……。


「水車のある教会」

幼いころに誘拐された娘が粉ひき歌で思い出す。

 

「ミス・マーサのパン」

古く硬くなったパンしか買わない男に、ミス・マーサはバターを挟んであげたが、‥。


「二十年後」

20年後にレストランで会おうと約束した二人の男。西部からやってきたボブとニューヨークにとどまったジミー。警察官と指名手配人だった。


「最後の一葉」

最も有名な作品。スウとジョンズイ(ジョアンナの愛称)とあるが、何回も読んだ作品だが、病気になった方がジョンズイなどという名前だっただろうか? 下の階に住む絵描きも「ベアマン老人」だったの? 最後ももっと印象が強い文章だったと思う。この本は原著に忠実な訳文になっているような気がする。


「警官と賛美歌」

これも最後がもっと衝撃的な文章だった気がするのだが?


「賢者の贈り物」

たしかに、贈り物の尊さは、贈る人が犠牲にしたその量の大きさがメジャーの一つになるのだろう。その意味で確かに大きな贈り物だったのだが、「賢者」という言葉はぴったりこない。


「解説 齊藤 昇」、「年譜」、「訳者あとがき」 略

 

 

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