hiyamizu's blog

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トマ・ピケティ『自然、文化、そして不平等』を読む

2023年11月27日 | 散歩

トマ・ピケティ著、村井章子訳『自然、文化、そして不平等 ―国際比較と歴史の視点から』(2023年7月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

文藝春秋BOOKSの内容紹介

世界的ベストセラー『21世紀の資本』のトマ・ピケティが、「格差」について考察。

「r>g」の衝撃から10年。戦争、気候危機、経済不安などを受け、世界は”第二次ピケティ・ブーム”へ。

その最新思想エッセンスを、ピケティみずからコンパクトな一冊にまとめたのが本書である。

・「社会は平等に向かうべき」との思想はいつ始まったのか
・所得格差が最も少ない地域、最も多い地域は
・「所得格差」と「資産格差」について
・累進課税制度の衝撃
・世界のスーパーリッチたちの巨額税金逃れ問題について
・ジェンダー格差をどう考えるか
・環境問題の本質とは、「自然資本の破壊」である
・炭素排出制限量において、取り入れるべきアイデア
・「戦争や疫病が平等を生む」という定説は本当か

——「持続可能な格差水準」は、存在するのだろうか

 

2022年3月に行った講演を元にした本なので、p104とコンパクトで、論旨は簡潔。

現代社会の不平等の源泉と政策の役割を、データをグラフで示しながら簡潔に解説している。

ここ数百年の、欧米の所得や資産の不平等は、自然発生したわけではなく、政権運営を担うのが誰かによって人為的につくられている。
さらに、累進課税の緩和や公的教育への支出抑制などが、政府の財政危機を口実によく喧伝されるが合理性はない。逆に、課税強化や公的債務の負担増によって経済成長が抑制されたという歴史的事実もない。

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

現在の社会は、主にヨーロッパのデータしかないが、あまりにも不平等である。世界各国の所得や資産の過去・現状の状態をグラフで見て、わかりやすい説明を読めば、簡単に理解できる。大変分かりやすくて良い。

しかし、どうすれが良いかは今一つ不明瞭だ。累進課税を今より厳しくし、貧困層の教育支援を進めるという指摘だけのように読めた。そしてその実現には、投票による政治変革で可能と示唆している。本当?

 

 

トマ・ピケティ(Thomas Piketty)

フランスの経済学者。1971年生まれ。パリ経済学校教授、社会科学高等研究院(EHESS)教授。EHESSとロンドン・スクール・オフ・エコノミクス(LSE)で博士号を取得。2013年出版した LE CAPITAL AU XXIe SIECLE (邦題は『21世紀の資本』みすず書房)が世界的なベストセラーとなり、一躍注目される。その所得格差拡大の実証研究は、リーマン・ショック後の世界経済危機で盛り上がった「ウォール街を占拠せよ」運動に大きな影響を与えた。フランス社会党系の理論家でもある。

 

 

〈目次〉

*自然の不平等というものは存在するか? 平等への長い歩み

スウェーデンは世界で最も平等な国の一つとみなされている。しかし、長い間ヨーロッパで最も不平等な国の一つだった。1930年代に入り社会民主系の政党が政権を

とり、急速に変わった。

 

*不平等および不平等を生む体制の歴史的変遷

世界不平等データベース(WID : World Inequality Database)

*所得格差

上位10%の所得がその国の所得全体に占める比率は、完全に平等なら10%で、完全に不平等なら100%になる。北欧は平等に近く20~30%で、アフリカ南部では70%になる国もある。
下位50%の所得がその国の所得全体に占める比率は衝撃的だ。南アフリカでは5~6%で、北欧では20~25%だ。一見平等に思える北欧の25%でも、下位50%の平均所得はその国の平均所得のほぼ半分だという事になり、完全平等の50%に達することはない。

*資産格差

資産の分布は、つねに所得の分布より大幅に偏る。
上位10%の資産がその国の全体に占める比率は、60%~90%となる。
また下位50%が全体に占める比率は、5%未満となる。
資産の平等化の進展は非常に遅い。1世紀前のフランスでは、下位50%の資産が全体に占める比率は2%(今日の南米と同じ)だった。一世紀かけて4%になった。

 

*ジェンダー格差

ヨーロッパでの労働所得に占める女性の比率は、過去数10年で30%から36%に上がったが、50%には程遠い。

 

*ヨーロッパにみられる不平等への歩みのちがい

20世紀の間にフランスの上位 10%の所得は 50%から 30~35%に下がり、下位 50%は 10~15%から 20~25%に上昇した。

資産の平等への歩みはさらに鈍い。上位10%の資産が全体に占める比率は第一次大戦前の80~90%から、今日では50~60%に下がっているが1980年代からは上昇している。下位50%は過去2世紀富の再分配の恩恵をほとんど受けていない。

 

*スウェーデンの例  略

 

*福祉国家の出現——教育への公的支出

貧困層は初等・中等教育への公的支出しか受取らない一方、富裕層は最も多い公的支出を受取っており、事実上、公的支出が当初の不平等を大幅に助長していることになる。

 

*権利の平等の深化に向けて

所得格差が1対3,1対5程度であれば、多様性やインセンティブに照らして及第と言えるだろう。

 

*累進課税

平等への道に反し、近年所得税も相続税も累進度が少なく(最高税率が低く)なっている。

 

 

フランクリン・ローズヴェルト大統領の時代から1932~1980年。アメリカの最高税率は平均80%に達し、そこに5~15%の州税が加わる。この累進課税によって格差を大幅に縮めたが、経済成長を阻害しなかったし、イノベーションを窒息させることもなかった。

1986年、レーガノミクスによって最高税率は28%まで引き下げられた。この大幅減税で1990~2020年のアメリカ経済成長は1950~90年のおおむね半分に落ち込んでいる。

 

 

 

*債務をどうするのか? 略
*自然と不平等 略
*結論 略

 

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