hiyamizu's blog

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五木寛之「人間の関係」を読む

2008年01月11日 | 読書
五木寛之「人間の関係」を読んだ。ポプラ社の創立60周年記念として全編書下ろしで、2007年11月に出版された。
なぜ、「ズッコケ三人組」で有名な児童書出版社ポプラ社なのか分からなかったが、ポプラ社は大人向け本へも展開を図っているのだろう。

本の表紙の裏には、「変わる時代に変わらないものを考えてきて、他人同士からはじまる「人間の関係」、それが「生きるヒント」の先に見つけた五木さんの答えなのだ」とある。


昔、五木寛之の小説はちょっとだけ時代の先のほうを行っていてカッコいいのでいろいろ面白く読んだ。しかし、エッセイは1、2読んだだけだし、とくに最近の仏教に基づく人生ものは、なんだかあの「五木寛之」が普通のおじいさんになったようで、過去のイメージを壊してしまうのが嫌で、読んでいなかった。


このエッセイ集には著者の体験に基づいた人生訓が書かれている。大部分は素直に共感できるが、特別に驚いて感心するようなことが書かれているわけではない。しかし、五木さんらしく極めて分かりやすい文章で、抵抗もなくさらりと読めてしまう。
読んでいて、一方では、あのダンデイな五木さんもここまで達観して好々爺になってしまったかと思う哀しみも伴う。

私自身は、五木さんの奥さんが同級生でかつ医者であるとの謎が解けたことや、珍しく奥さんとの暮らしなどに触れていること、あるいは亡くなった弟さんについて話などプライベートにも興味を持って読んでしまった。

少しだけ、どんなことが書いてあるか、ご紹介。

40代には毎日うれしかったことを書く「歓びノート」 、60代では「悲しみノート」をつけてなんとか鬱から抜け出した。70歳を過ぎてからの三回目の鬱には、ひねくれものの自分でも苦笑するとあるが、日々の感謝を一行書いた「あんがとノート」が有効だったとある。
リタイアーし3年になる私も、毎日寝る前に今日も何もなかったと思うかわりに、何か一つでもよい事、悪いことをひねり出してみるのも良いかなと思った。

「自分の好意はけしてむくわれない、そう思いながらも一生懸命尽くし、見返りをもとめない。すべて裏切られても仕方ないし、ひょっとしてほんの少しでも相手がそれに対して好意をしめしてくれたなら、飛び上がって喜べばいい」という人生を達観したことを述べている。
つねづね私も、そんなふうに考えているくらいで世の中ちょうど良いし、当方の精神衛生のためにも安全だと考えていた。
さらに、そこで五木さんは次のように述べている。「たとえば、革命家というのは、世のため、人のために革命に身をささげても、最後には民衆から裏切られ、追放され、処刑される。これが正しい革命家のあり方だと、ぼくはずっと思ってきました」とある。ここで、最近再流行のチェ・ゲバラを思い出して、この本で唯一ようやく昔の五木さんらしいと思った。






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