hiyamizu's blog

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寺山修司『さかさま文学史 黒髪編』を読む

2013年10月26日 | 読書2
寺山修司著『さかさま文学史 黒髪編』(角川文庫4159、1979年12月角川書店発行)を読んだ。

日本文学史に残る芸術家の恋愛エピソード19短編。ドラマ仕立てで人間模様が浮かび上がり、寺山さんが心理、拝啓を冷たく分析する。

女優・泰子(中原中也)
女優長谷川泰子と知り合った中也は、大正13年4月同棲し、ともに上京したが、翌年11月には泰子は中也の友人の小林秀雄の許に去った。
中也と小林にとって事件だったものが、泰子にとっては、ただの転居にすぎなかった、・・・。


(といっても、この日本文学史に残るロマンスが中也16歳~18歳、泰子19歳~21歳と知ると、昔の人は早熟とはいえ、高校生の付いたり離れたりに過ぎなかったんじゃないかと思ってしまう)

芸妓・小奴(石川啄木)
妻子を小樽へ残して単身釧路へ赴任していた啄木23歳は、小奴19歳と知り合う。
いつも妻を無視し、一段低い存在として扱い、そのくせ妻に家出されると泣かんばかりに探しまわる、見栄っぱりで幼児性の強い男。それが天才歌人石川啄木の実像であった。・・・
小奴は、啄木をゆるすことのできた、たった一人の女であった。


姪・こま子(島崎藤村)
藤村は「恋の火にもゆるたましひ」と歌ったが、
ただ若い姪の肉体をもてあそび、手に負えなくなって、それを放り出してフランスへ逃げたというだけのことではないか。それにくらべて、こま子の藤村への愛情は、単純で、一途であった。
・・・
藤村の場合、問われるべき科は、「なぜ姪を愛したか」ということではなく、むしろ、「なぜ、姪を本心から愛さなかったのか」ということであろう。


少女・お島(竹久夢二)
夢二は26歳でたまきと結婚。長谷川かた(お島さん)、笠井彦乃を知り、お葉と同棲、山田順子と恋愛。42歳で16歳の宇佐美雪江を知った。
夢二は、女を人形のように扱った。人形は着せ替えられ、化粧され、そして飽きがくると捨てられるのである。


同級生・おみか(小山内薫):情熱作家小山内薫の遍歴、芸妓から実の母まで

婚約者・矢野綾子(堀辰雄
堀辰雄の小説の中の少女たちは、
「おわかりになりませんでしたこと?」とか「まあ、お美しい」とか言うのである。こうした育ちの良さは、そのまま羨望へとかわり、一度でいいからこうした「令嬢」と知り合いになりたいものだと思うようになっていった。・・・堀辰雄の「燃ゆる頬」や「麦藁帽子」を真似た短編を書いてみたりもしたが、円形脱毛症に悩む青森弁の中学生には似たものができる訳はなかった。そして、そのうちに、かわいさ余ってにくさが百倍。次第に堀辰雄の小説がきらいになっていったのである。・・・
綾子が死んでわずか二年後に、堀辰雄は九歳下の加藤多恵子と結婚した。・・・それから五十歳で死ぬまでの十五年間、堀辰雄は「風立ぬ」を上まわる小説を書くことがなかった。・・・「風立ぬ」を書かせた綾子は「真の婚約」をうらぎって他の女と結ばれた辰雄に罰として二度と「美しい」小説を書かせないようにしたのだ。


愛人・山崎富栄(太宰治):天才作家太宰治に溺れた女たち、絶筆『グッド・バイ』まで

など、隣人の妻・俊子(北原白秋)、母・お春(室生犀星)、妻・すず(泉鏡花)、女給・一枝(織田作之助)、下宿のおばさん(村山槐多)、踊り子・フェルナンド(藤田嗣治)、妻・三千代(坂口安吾)、妻・三千代(金子光晴)、女優・須磨子(島村抱月)、愛人・野枝(大杉栄)、妻・のぶ子(黒岩涙香)



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

どこまで本当なのかわからないが、ドラマチックでスキャンダラスな男女の話をたっぷり楽しめる上に、劣等感、嫉妬心が強く、野心と才能に溢れた寺山修司の歪んだ見方を楽しめる。

女性は純情あるいは、現実的なのに対し、男性はただ身勝手なだけの場合が多い。まあこれは現代の一般人でも同じか。



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