hiyamizu's blog

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ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄 上下』を読む

2014年01月30日 | 読書2

ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳『銃・病原菌・鉄 上下』(草思社文庫2012年2月発行)を読んだ。

本書は「なぜ人類には民族によって文明格差があるのか?」「なぜ人類は五つの大陸で異なる発展をとげたのか?」という疑問に対し、考古学など歴史考察や、分子生物学、言語学など科学的調査結果から、人種や民族に優劣は無い。地形や動植物相を含めた「環境」が格差を作っただけだ、と結論している。
著者による一文要約は、「歴史は、異なる人びとによって異なる経路をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない」
ピュリッツァー賞受賞作。

密林で狩猟・採集生活をしている人々は、そこで生きるための豊かな知恵をもっている。だが、これは外の世界では通用しない。他文明を征服できるような技術が発達する条件は定住生活にある。植物栽培や家畜の飼育で人口は増加し、余剰生産物が生まれる。その結果、役人や軍人、技術者といった専門職が発生し、情報を伝達するための文字も発達していく。

4万年前、オーストラリア先住民たちは、その他の大陸の居住民たちを、大きく一歩リードしていた。しかし、農地に適さない土地で、彼らはその後も狩猟民族であったため、技術が発展しなかった。また、地理的孤立が発展を阻害した。

アメリカ、オーストラリア、アフリカと決定的に違い、ユーラシア大陸(ヨーロッパを含む)は栽培可能な植物、家畜化できる動物にもともと恵まれ、さらに、地形的にも、他文明の技術を取り入れて利用できる交易路も確保されていたというわけだ。また、家畜と接することで動物がもたらす伝染病に対する免疫力も発達していた。

過去の戦争で勝利したのは、かならずしももっとも優れた将軍や武器を持った側ではなかった。過去の戦争において勝利できたのは、たちの悪い病原菌に対して免疫を持っていて、免疫のない相手側にその病気をうつすことができた側である。

アフリカ大陸は南北に長く、気候・生態系などが異なるため技術拡散が困難であり、東西に長く交流容易なユーラシア大陸に遅れをとり、ヨーロッパ人に植民地化されることになった。

肥沃三日月地帯や中国は、ヨーロッパの数千年先を行っていた。肥沃三日月地帯は、森林を伐採し農地化したが、降雨量が少ないので砂漠化、灌木化してしまった。中国は、船団派遣を中止し外洋航海を禁じた。政治的に統一されていて国内の競争もないため技術開発から手を引いてしまった。

タイトルは、ヨーロッパ人が他民族と接触したときに「武器」になったものを表している。

初出:2000年発行本の文庫化、原題:GUNS, GERMS, AND STEEL The Fates of Human Societies



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

読了しての率直な感想として、評判ほどの本ではなかったな、という感じ。
地理的、環境的な差異が、文明・技術の発達の差の原因であるとの結論が強引で、単純過ぎる。主張には基本的に納得できるのだが、他の説との比較検討などがなく、あまりにも一方的だ。
そして、同じような論調が延々と続く。このブログに感想を書く本は飛ばし読みしないのだが、正直この本は飛ばしながら斜め読みしてしまった。

この本には、単行本刊行後、文庫本発行後に原書2005年版に追加された 「日本人とは何者だろう?」 という章が追加されていない。しかし、以下で全翻訳を読むことができる。
山形浩生氏「ダイアモンド『銃、病原菌、鉄』2005年版追加章




ジャレド・メイスン・ダイアモンド Jared Mason Diamond
1937年ボストン生まれ。進化生物学者。カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部教授。ノンフィクション作家。ニューギニアを中心に長年フィールドワークを行っている。
本書『銃・病原菌・鉄』で1998年度のピューリッツァー賞(一般ノンフィクション部門)、他に『人間はどこまでチンパンジーか』(新曜社)、『セックスはなぜ楽しいか』(草思社)など

倉骨彰
早稲田大学卒業。テキサス大学オースチン校大学院言語学研究科博士課程修了。数理言語博士。同校で自然言語処理等を研究。訳書に、デビッド・セダリス『すっぱだか』のほか、アーサー・ブロック『マーフィーの法則―現代アメリカの知性』、ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』『昨日までの世界』ダニエル・ヒリス『思考する機械コンピュータ』など多数。著書には『ビジネス英文メールの鉄則』『怪我と病気の英語力』など。




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