hiyamizu's blog

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島本理生『あられもない祈り』を読む

2020年06月04日 | 読書2

島本理生著『あられもない祈り』(河出文庫し20-1、2013年7月20日河出書房新社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

幼い頃からずっと自分を大事にできなかった<私>。理不尽な義父と気まぐれな母、愛情と暴力が紙一重の恋人に、いつしか私は、追いつめられていく。そんな日々のなか、私は、二十も年上の<あなた>と久々に再会する。そして婚約者がいるはずの<あなた>に、再び愛を告げられて――<あなた>と<私>… 名前すら必要としない二人の、密室のような恋。至上の恋愛小説。 解説=西加奈子

河出書房新社のサイトに著者がコメントを寄せている。

『あられもない祈り』に寄せて

『あられもない祈り』は、「私」と「あなた」の物語です。
名前すら必要としない二人の、密室のような恋愛を通して、幼い頃からずっと自分を大事にできなかった主人公が、生きるための欲望を得るまでを書きたいと思いました。
今回、初めて結婚している男性との恋愛を真っすぐに書きました。
社会的に肯定されないことを書くのは、やはり難しかったです。
それでも恋してしまう気持ちや、時として、ずるさと切実な愛情が同居してしまうのも人間だということを、擁護するのではなく、できるだけ赤裸々に、書くことができたらと思いました。
書いている最中、体の内側から言葉が引きずりだされるような、どろっとした熱い感覚がまとわりついていました。
読んで下さった方に、その熱が伝われば幸いです。
                 島本 理生

 

私:気弱なわりに意地を張る。何かあると手首を切る。父は劇団の役者で脚本家で女癖が悪い。母はお嬢様育ちで私に金の無心を繰り返す。

あなた:婚約者がいるのに、私と交際し、結婚したのにかかわり続ける。大きくはない会社を共同経営。やさしさの中に翳りがある。幼い時に交通事故で痛めた左足を引きづって歩く。

直樹:私と同棲。大学院の研究室の助手。酔った勢いでつまらないものを盗んでくる。ときおり私に手をあげ、束縛する。

渡部:私と同じ会社に勤める。友人の「あなた」を私に紹介した。愛妻家で幼児もいる。

 

本書は2010年5月単行本刊行。初出は『文藝』2010年春号

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)

私にとっては、めんどくさい人たちだなという感想。微妙な感情の揺れを上手に書き表しているのだが、回りくどい文章だ。

 

例として、「あなた」の奥さんから私に電話がかかってくる場面の会話。

「あの子(「あなた」の事)の話を聞いて、あなたのことを自覚がないふりかと思っていたけど、本当に自覚のない未成熟な人なんですね、きっと」

「それは、私も思います」

彼女は呆れたように、息を吐くと

「一つだけ言うと、こちらの関係は合理的に保たれていますから」

私は思わず頭を抱え込んだ。ああ、その単語は無敵だ。手も足もでない。

それでもとっさに

「‥‥‥そう思います。こちらの関係は、無意味に保たれているので」

と告げると、それなら時間の無駄ですね、と突き放されたように言われた直後、電話は切られた。

敵対する女性同士の会話でも、「合理的」とか、こんなややこしい会話あり?

 

島本理生の略歴と既読本リスト

 

 

 

コメント
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