hiyamizu's blog

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井上荒野『あちらにいる鬼』を読む

2020年04月04日 | 読書2

 

井上荒野著『あちらにいる鬼』(2019年2月28日朝日新聞出版発行)を読んだ。

 

白木篤郎と長内(おさない)みはる(後に寂光)は不倫関係にあり、白木の妻の笙子との三角関係がテーマだ。

白木篤郎は小説家の井上光晴がモデルで、長内みはるは瀬戸内寂聴がモデル。笙子とみはるの視点から交互に語られる。作者は井上光晴の長女である井上荒野。

 

人気作家・長内みはるは、半同棲の小野文三を捨て、昔婚家を飛び出した原因となった真二と再び暮らしていた。みはるは、気鋭の作家・白木篤郎と講演旅行をきっかけに男女の関係になる。そうなると篤郎はみはるに一層妻・笙子の自慢を語るようになった。

妻・笙子は、夫・篤郎が手を出して自殺未遂した女の見舞いに頼まれて行くなど、夫の不倫を黙認、協力していた。その頃、長女・海里(井上荒野)は5歳で、笙子は次女・焔(ほむら)を妊娠中だった。


出家してからは3年目のこと。あのときすでにわたしは、自分と白木の間にあるものは友情だとー男女の感情はそれにすっかりとってかわったのだと信じていた。それでも三年経って思い返してみれば、頭を撫でられたときの感触も、「俺があんたを殺してやる」という白木の言葉の響き、それを聞いたときの自分の胸の鼓動も、性愛の記憶に近いものとしてよみがえる。


わたしたちは(みはると笙子)、ほのめかさなかったし、探り合いもしなかった。白木の嘘吐きぶりを話題にし、笑い合いながら、わたしたちはわたしたちの愛については、注意深く何も語らなかった。

 

背景は、「好書好日」の井上荒野さんへのインタビューに詳しい。

 

 私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

妻の笙子さん黙認とはいえ不倫であり、そんな話が延々と続くのはうんざり。瀬戸内寂聴のほぼ実話だという下世話な興味がなければ読み切れなかった。

 

篤郎をめぐる笙子とみはるの共感関係も、理解できないわけではないが、少なくとも妻の笙子の方には少なからずストレスがあるので、読んでいて気持ちが良いものではない。

 

なににもまして篤郎という男が嘘ばかりで、何の魅力も感じられない。そもそも井上光晴という作家にはたいした才能を感じられない。

 

井上荒野(いのうえあれの)
1661年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。
1989年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞
2004年『潤一』で島清恋愛文学賞
2008年『切羽へ』で直木賞
2011年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞
2016年『赤へ』で柴田錬三郎賞
2018年『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞   を受賞

その他、『ひどい感じ 父・井上光晴』、『綴られる愛人』『夜をぶっとばせ』『キャベツ炒めに捧ぐ』など。

角田光代、井上荒野、森絵都、江國香織『チーズと塩と豆と』、角田光代、井上荒野、栗田有起、唯野未歩子、川上弘美著「女ともだち

 

 

メモ

旗竿地(というのかどうか):2軒の住宅に挟まれた細長い通路の先にある土地

 

コメント
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