hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

角田光代、井上荒野、森絵都、江國香織『チーズと塩と豆と』を読む

2011年12月08日 | 読書2
角田光代、井上荒野、森絵都、江國香織著『チーズと塩と豆と』2010年10月、発行所:ホーム社、発売元:集英社を読んだ。

ヨーロッパの田舎を舞台に食にまつわる短編を女流直木賞作家4名が競作した短編集。

読み始めてどこかで読んだというより、場面に既視感があった。思い出した。NHK・BSの「プレミアム8」で、4人の女性作家が、それぞれヨーロッパの田舎を旅する番組だが、創作した小説が、ドラマ化され、番組に挿入されていた。作家の実写とドラマの場面を混同しそうになったことを思い出した。


「神様の庭」角田光代(スペイン・バスク地方)
アイノアは古くからの因習、濃密な人間関係をもつこの土地に息が詰まっていた。母がガンにかかったとき、いつもの派手な食事の会を催して親族を集めたことに不満が爆発する。彼女はこの土地を出ようと、バルセロナの大学へ進学し、世界中を旅し、各地の難民キャンプで炊き出しを行う仕事につく。彼氏との別れなどを経験し、つらい状況の中でも親しい人との食事が幸せの記憶になることを実感する。

「理由」井上荒野(イタリア・ピエモンテ州)
アリダは30歳年上の自分の先生であったカルロと結婚し、山の中に住む。幸せな結婚生活だったが、今カルロは病院のベッドで眠ったままだ。今でもカルロを愛する理由は無数にある。でも、理由が無数のあるということは、理由がひとつもないのと同じではないだろうか。

「ブレノワール」森絵都(フランス・ブルターニュ地方)
パリの二つ星レストランのシェフとなったジャンは、絶交中の母親が危篤という知らせを受け、かって母子で引き取られた親族の家へ急ぐ。母は、人間は楽しむためでなく生きるために食べるんだと主張し、クレープも昔ながらのしょっぱいものしか認めず、喧嘩になったのだった。ジャンは結局ブルターニュに戻り、温かい夕食付きの宿を作ることにする。

「アレンテージョ」江國香織(ポルトガル・アレンテージョ地方)
誰にでも笑顔の伊達男のマヌエルと相方のルイシュは、リスボンから田園へ小旅行に出かける。予約していたコテッジのオーナー夫妻と家出を繰り返す幼い娘、他の客たちとの軽い交流、そして料理。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

ヨーロッパの田舎での生活と都会の対比、田舎の料理、人情、愛を巡る話。田舎とはいえ舞台はヨーロッパで、登場人物の名は皆横文字、女性作家による、暗さが全くないシャレたさわやかなお話。
ただそこは直木賞作家達、キレイキレイではなく、軋轢があって、田舎への回帰があり、料理は技術ではなくつまるところ人間関係だとの落ちがある。(強引なまとめ方ですんません!)


コメント
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