hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

「女ともだち」を読む

2010年05月12日 | 読書2


角田光代、井上荒野、栗田有起、唯野未歩子、川上弘美著「女ともだち」2010年3月、小学館発行を読んだ。

女性作家5人が、派遣社員の女ともだちを描く。唯野未歩子の「握られたくて」(「きらら」2009年9月、10月号)以外はこの本のために書かれた書下ろしだから、なかなか面白い企画だ。

主人公は誰もが「派遣」。仕事や恋をからめた「友だち模様」が、じんわりとくっきりと描かれた魅力たっぷりの小説集。

「海まであとどのくらい?」角田光代
派遣先でお昼を一緒に食べていた仲間が5年ぶりに集まる。5年前はそれぞれ思うところあり、派遣である今の状態は仮の姿だと思っていたが。

「野江さんと蒟蒻」井上荒野
職場に派遣されてきた野江さんのお弁当の蒟蒻(こんにゃく)がおいしそうで、彼はつい声をかける。婚約者は、ビーフストロガノフ、ミートローフなどばかりを作る。彼は家庭ではもっと単純なものが食べたいのだが、口に出せない。彼の家の近くで偶然野江さんに会い、怖ろしいことになる。
この作品だけが、男性目線で描かれている。

「その角を左に曲がって」栗田有起
最下層の総務の片隅にいる派遣の私が、最上階の海外事業部で働く絵に書いたようなキャリアのひとみさんとトイレで偶然に知り合う。体の左側ばかり怪我をするというひとみさんとときどき食事をするようになり、厳しい現実を知る。

「握られたくて」唯野未歩子
30歳が近づく私は焦り、幼馴染の旦那の親友を紹介してもらう。しかし、彼は鮨屋で私は刺身が食べられない。4人で釣りに行くことになり、ますます悲惨な状況になっていく。主人公の女性のしゃべりが面白い。やはり女性でなければ書けないしゃべりだ。一方、女性陣の意向を考えもしない男たち。奥様にいつもそう言われている私には心強い話だったのだが。

「エイコちゃんのしっぽ」川上弘美
私は、同じ派遣会社に属するエイコちゃんのしっぽに触らしてもらう。私が派遣先の男性からセクハラを受けたときに・・・。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

15行×40字のスカスカで、153ページ。しかも、会話、改行が多い。数時間でさらりと読める。図書館から借りた本が溜まっている私にはありがたい本。もちろん、気楽に楽しめる。角田さん、川上さんはいつものように良いのだが、井上さんの話は本当に怖いし、私は初めての栗田さん、唯野さんも、それぞれいい味を出している。

派遣の女ともだちというとおおよそ想像できるような内容だが、イジメなどの暗い話はあまりなく、つきつめた深い話も、大感動もないが、著者が楽しんで書いているからだろうか、ネアカに女性たちの話が楽しめる。男性からみても女性間のさっぱりした友情は良いものだ。

角田光代(かくた・みつよ)
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞、1996年「まどろむ夜のUFO」で野間文芸新人賞、1998年「ぼくはきみのおにいさん」で坪田譲治文学賞、1999年「キッド・ナップ・ツアー」で産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年路傍の石賞、2003年「空中庭園」で婦人公論文芸賞、2005年「対岸の彼女」で直木賞、2006年「ロック母」で川端康成文学賞、2007年「八日目の蝉」で中央公論文芸賞を受賞。2005年作家の伊藤たかみさん結婚後、離婚し、2009年ミュージシャン河野丈洋と再婚。

井上荒野(いのうえ・あれの)
1961年生れ。1989年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞、2004年『潤一』で島清恋愛文学賞、『切羽』で直木賞を受賞。

栗田有起(くりた・ゆき)
1972年生れ。2002年『ハミザベス』ですばる文学賞受賞。

唯野未歩子(ただの・みあこ)
1973年生れ。2005年初の監督映画「三年身籠る」の原作を執筆し小説家デビュー。

川上弘美の略歴と既読本リスト


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