hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

伊与原新『コンタミ』を読む

2019年07月22日 | 読書2

 

伊与原新著『コンタミ 科学汚染』(2018年3月19日講談社発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

大学院生の圭は、指導教員の宇賀神と共に、ニセ科学批判の急先鋒である蓮見教授の元を訪れる。そこで告げられたのは、宇賀神のライバルであり、想い人でもあった女性研究者・美冬に関する信じ難い事実だった。神秘の深海パワーで飲むだけでがんが治る、「万能深海酵母群」。「VEDY」と名付けられたニセ科学商品の開発に手を貸し、行方をくらませたのだ。ニセ科学を扱うことは、研究者にとって「死」に等しい。なぜ彼女は悪魔の研究に手を染めたのか?圭は宇賀神に命じられ、美冬の消息を追うが…。すべての真相が明らかになるとき、「理性」と「感情」のジレンマが、哀しい現実を突きつける―。善意に付け込む、汚染された科学を暴く、サイエンス・サスペンス!東京大学大学院出身の著者が放つ、衝撃作。

 

コンタミ:コンタミネーション(contamination)汚染。とくに、科学実験等の場における不純物や異物の混入を指す。

 

町村:慶成大大学院1年。宇賀神の奴隷生活に耐え、製薬会社の席を確保しようともくろむ。

宇賀神崇:慶成大准教授。有望な若手教員。38歳。

蓮見教授:東都工科大。理論物理学者。エセ科学と戦う御大。助教は羽鳥(はとり)。

桜井冬美:東都大学の島津研博士課程で宇賀神と一緒。VEDY研究所のユニットリーダー。父は精司、妹は千秋。

VEDY(ヴェディ):万能深海酵母群。また、商品化している会社名。

海老沼教授:北陸理科大。応用微生物学。冬美が修士まで在籍。VEDY会長。

鍵山所長:VEDY代表取締役・研究所所長、PhD(環境微生物学)。謎の人物。

篠宮:VEDY研究所上席研究員。ウクライナ大学医学部留学中。

 

本作品は書き下ろし。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

なぜ優秀な研究者の桜井冬美が、研究者人生を棒に振ってエセ科学に力を貸したのか? ところどころに挿入されるがん患者日記の書き手は誰なのか? 謎は最後まで明かされないまま、エセ科学との戦いが続く。

 

語り手は修士1年の町村だが、実質主人公は、ちびでおしゃれで、気障・傲慢キャラ立ちの宇賀神だ。そして、宇賀神が純愛を捧げ、13回もプロポーズに失敗している桜井冬美が裏主人公になっている。

 

巷にはエセ科学が広く広がっている。しかし、その多くはエセであることを証明するのは困難だし、科学的考え方が身についていない人に説明するのは困難だ。とくに、信じたくなる状況にある時には。

 

 

伊与原新(いよはら・しん)の略歴と既読本リスト

 

 

私のアンテナに触れた言葉たち

 

「今日、君と初めて出会ったときから運命を感じていた。いや、たぶん出会う前から感じていた。」

映画「陽のあたる場所」(モンゴメリー・クリフトとエリザベス・テイラー)からの宇賀神のパクリセリフ(p9)。

 

「長続きするたった一つの愛は、片思い」(ウディ・アレンの影と霧)

 

「…科学というのは、学べば学ぶほど、人を謙虚にするんだ。研究を進めるたびに、自然の精緻さと複雑さを思い知り、自分がその深淵のほんの入り口しかのぞいていないことを思い知る。…」

 

「科学はこの世のすべての人間に等しく同じものを見せる。……ほとんどの人間は、自分の見たいものしか見ず、信じたいことしか信じないだろう。そうでもしなければ、この世はあまりに生きづらい。でも、そのかたわらで、科学はただ淡々と、万人に同じものを見せ続ける。」

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