hiyamizu's blog

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東野圭吾『黒笑小説』を読む

2012年03月22日 | 読書2

東野圭吾著『黒笑小説』集英社文庫ひ15-8、2008年4月集英社発行、を読んだ。

『毒笑小説』『怪笑小説』に続くブラックユーモア・シリーズの三作目で、13編の短編小説集。

「もうひとつの助走」
作家である寒川心五郎は、長く書いているが売れず、受賞歴もない。こんどこそと受賞の報を編集者達と待つ。寒川は内心とは別に否定的なことを言う。編集者達は信じていると言うが、内心、無理だ、過去の人だと思っている。

「線香花火」
新人賞を受賞した熱海圭介は強気になり、夢は限りなく膨らみ、周囲に対し作家きどりになる。期待されていない彼がさっそく書いた受賞後第一作はそのまま・・・。

「過去の人」
受賞パーティに前回受賞者として招待された熱海圭介は、自信満々で奇抜な服装で出席するが、もはや・・・。全国で新人賞は一年に400ほどあるという。

「選考会」
寒川は新人賞の選考委員に選ばれ有頂天になるが、出版社にはおそろしいたくらみが。

その他、あらゆる女性が巨乳に見える「巨乳妄想症候群」、売れていたインポテンツになる新薬が急に売れなくなる「インポグラ」、空気中の見えないチリやホコリが見えるようになる「みえすぎ」、もてる薬ともてない度の対決「モテモテ・スプレー」など。

奥田英朗の解説が面白い。

東野さんは「キャリアは20年だが、14年間は売れなかった」と言っている。『秘密』がベストセラーになるや、編集者たちは取って返して揉み手をして「東野詣で」をするようになった。
奥田さんは語る。
編集者が情熱を注ぐのは賞を獲れそうな新人と売れる作家に対してだけである。あとは見事に放っておかれる。「お仕事」と割り切った編集者に原稿を渡すのはつらいものだ。東野圭吾は、そういう時期を経験している。

・・・同業者として笑いながらも胸を締め付けられるのは、文壇を俎上に載せた・・・四編である。・・・幾度も登場する売れない作家・寒川心五郎先生は、明日の東野圭吾か奥田英朗かもしれない。



初出:2005年4月集英社より刊行



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

冒頭の4作は、皮肉がきつく、東野さんの恨みがこもっていて面白い。しかし、その後の9作は星新一のショートショートのように、ワンポイントのアイデアだけで、短編として評価しがたい。これじゃ、編集者に苦心作をダンボール箱に捨てられるのも無理ない(??)。



東野圭吾の履歴&既読本リスト

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