hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

佐々木紀彦『米国製エリートは本当にすごいのか?』を読む

2012年03月18日 | 読書2
佐々木紀彦著『米国製エリートは本当にすごいのか?』2011年7月東洋経済新報社発行、を読んだ。

日本人は平均的な人材レベルは高いのに、上に行くほどダメになるのは、まともなエリート育成の仕組みがないからではないか。東洋経済新報社の若手記者が、スタンフォード大学院への留学経験をもとにその疑問に答えようとした。
実際には、米国エリートが強い理由のいくつかに加え、留学時の日常生活、各国からの留学生の様子、大学院の授業実態に加え、日米+中韓の社会論、英語学習のコツなどを語っている。

米国製エリートは、既に聞いているように、知的筋肉のトレーニングにあるようだ。
課題図書を読ませる膨大な知識のインプット量(学部4年間で難しい本を最低480冊)
入学初日から専門書や資料を高速で読み、時間を効率的に使う習慣が叩きこまれる。
価値観の違う各国エリート達との高度な知の議論

一方では、授業、テストの内容の簡単さ、学生の質問のレベルの低さなど、過大評価も指摘している。



佐々木紀彦
1979年北九州市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。東洋経済新報社の記者。
2007年9月休職しスタンフォードの大学院へ。修士号を取得(国際政治経済専攻)。
2009年7月復職し、編集部に所属。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

ハーバードでMBAを採った人間の多くがベンチャーに挑戦し、大企業の敏腕エンジニアがベンチャーに転職するのも、いつでも1000万円以上稼げる仕事に戻れるからだ。
(私も、優秀な人は会社を自由に選べ、会社は能力の低い人を簡単に首にできる、そんな流動的な労働市場にこそ日本に必要だと思う。企業から見れば、不況になれば首にできるから必要なときにはいつでも正社員にすることができる。もっとも不景気な現状では、首になった年長者などに対する再教育、社会福祉の充実が前提だが)

不景気の影響を受けないのは弁護士だ。ハーバード、イェール、スタンフォードのロースクールを卒業すると、初任給は約1280万円になる。しかし、労働時間は一日18時間にもなるうえ、金持ち以外はロースクール3年間の授業料約1600万円の借金を抱えて苦しい。

著者の以下の主張にはまったく賛成だ。
米国には、2008年時点で既に「なぜ大量破壊兵器が存在するという誤った情報がまかり通ったか」「なぜ占領政策はうまくいかなかったのか」などを検証するアカデミズム、ジャーナリスムの研究や記事が溢れていて、大学でも議論が盛んに行われていた。
日本の大学でも、「なぜ日本は第二次世界大戦に負けたか」「大蔵省はなぜバブルの処理に失敗したのか」などを徹底討論する必要がある。




第1章 米国の一流大学は本当にすごいのか?
第2章 世界から集うエリート学生の生態
第3章 経済・ビジネス - 資本主義への愛と妄信
第4章 歴史 - 歴史が浅いからこそ、歴史にこだわる
第5章 国際政治・インテリジェンス - 世界一視野の広い引きこもり
第6章 日本人エリートの未来

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする