道尾秀介著「球体の蛇」2009年11月、角川書店発行、を読んだ。
webKADOKAWAでのこの小説のあらすじ はこうだ。
1992年秋。17歳だった私・友彦は両親の離婚により、隣の橋塚家に居候していた。主の乙太郎さんと娘のナオ。奥さんと姉娘サヨは7年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。どこか冷たくて強いサヨに私は小さい頃から憧れていた。そして、彼女が死んだ本当の理由も、誰にも言えずに胸に仕舞い込んだままでいる。
乙太郎さんの手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、私は死んだサヨによく似た女性に出会う。彼女に激しく惹かれた私は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、老主人と彼女の情事を盗み聞きするようになる。しかしある晩、思わぬ事態が私を待ち受けていた……。
狡い嘘、幼い偽善、決して取り返すことの出来ないあやまち。矛盾と葛藤を抱えながら成長する少年を描き、青春のきらめきと痛み、そして人生の光と陰をも浮き彫りにした、極上の物語。
乙太郎さんの手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、私は死んだサヨによく似た女性に出会う。彼女に激しく惹かれた私は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、老主人と彼女の情事を盗み聞きするようになる。しかしある晩、思わぬ事態が私を待ち受けていた……。
狡い嘘、幼い偽善、決して取り返すことの出来ないあやまち。矛盾と葛藤を抱えながら成長する少年を描き、青春のきらめきと痛み、そして人生の光と陰をも浮き彫りにした、極上の物語。
webKADOKAWAにちょっととぼけた顔の著者がこの小説について動画で語っている。初めてミステリーでない、つまりトリックを入れないで書いた小説だと。そして、この本自体が球体の蛇なのだと。
初出「野性時代」2009年3月号―8月号
私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)
おそらく初めての五つ星だと思う。面白くて久しぶりに深夜まで読みふけってしまった。年上の人に憧れる少年の気持ち、苦しい想い。次々と起こる悲劇。何段もの意外性の階段を登り、最後の最後でも「本当にそうなの?」と気持ちが揺れる。ただし、いつもは読後一晩以上おいてから感想を書くのに、返却期限ギリギリで、興奮したままこの文章を書いているので、本当に五つ星か、迷いもある。
心の弱さにより秘密にしていたことがさらに次の悲劇を生む。悲劇の原因が人によって異なって認識され、真実は最後の最後まで2様に解釈でき、読者に任された謎で終わる。登場人物が怖い人と思っていたら、実は、とか、ある面から見た人が、違う面から見るとまた別、といったふうに、多層に、多面的に描かれている。
球体の蛇というタイトルは、大きなものを飲み込んだ蛇ということなのだが、いろいろ考えさせられる。
道尾秀介の略歴と既読本リスト