hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

日本ペンクラブ名スピーチ集を読む

2010年05月05日 | 読書2

「日本ペンクラブ名スピーチ集」2007年11月、創美社発行、を読んだ。

「日本ペンクラブ」の例会等で行われたペンクラブ会員による講演録。浅田次郎や阿刀田高、椎名誠といった著名作家をはじめとする16人のスピーチの講演録、

日本ペンクラブは、ロンドンに本部をもつ国際ペンの日本センターとして1935年11月26日に創立されました。・・・文豪島崎藤村を初代会長・・・。
 日本ペンクラブは、その創立と歴史が示すように、平和を希求し、表現の自由に対するあらゆる形の弾圧に反対するとの精神に賛同するP(詩人、俳人、劇作家)、E(エッセイスト、エディター)、N(作家)が集まり、・・・。
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誤訳のおかげで命びろいをした話 米原万里(2006年5月死去)
ロシア語の会議同時通訳を20年、約4千の会議に立会った。英語の場合、一人ぐらい堪能な人がいて「通訳が間違えたら指摘して僕の教養を見せつけてやろう」と手ぐすね引いている人がいるが、ロシア語の通訳者は絶対数が足りないので、値段上げ放題、質は下げ放題という。

日本のA外相がロシアのB外相と会談した。具体的成果なしの会談後のスピーチ原稿に一緒にサウナに入ったことをことさら強調して、「文字通り裸のつきあいをした」とあった。 「飾らない親密な交流をした」と訳して良いかと報道官に聞くと、「大臣はぜひ文字通り訳してくれ」という。米原さんはさんざん迷って、直前に再度、「例の表現ですが、B外相は同性愛者という噂があるので、会場は爆笑になると思うんですが」と言った。報道官の顔色が変わり、電話して、原稿は直ちに訂正された。

北極を食べた 椎名誠
世界中でトンデモナイものを食べた話のあとで言う。「日本ではすごく注意深くして、そういうカップ麺のようなやばいものは食べないようにしてるんです」

小説グリコ 阿刀田高
距離をお金に換算すると実感がわく。大阪・東京間550キロを550円、日本の南北3000円、月まで38万円、火星まで5000万円、太陽まで1億5000万円。

小説の自由と不自由 黒井千次
カルチャースクールの創作クラスで多いストーリーは、主婦が同窓会で男の旧友と会い、お酒を飲んで、二次会後、例外なくホテルに行って何かある話が多い。これに対しては、「実生活上は構わないのだが、小説ではこんなに簡単にホテルに行ってはいけない」と話す。
ひとつだけ感心した話がある。高層ホテルの部屋に男女が行き、いい雰囲気になる。突然、地震で大きく揺れると、男は電話に飛びつき、自分の家に電話する。女は興ざめして部屋を出てエレベーターで降りてしまう。降りてきた彼女は、(以下、白文字)下の電話から家に電話する

天明の浅間山大噴火を小説にして 立松和平
100戸ほどの村が、浅間山大噴火で、477人が死亡し、生存者は93人。名主の指導で、村の再生が行われる。生き残った男女を夫婦にし、老人・子供を養わせ、10組ほど家族を再構成する。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

最後の「あとがき 常在壇上」に浅田次郎が書いている。「学者なり、文筆家なりという人々は、もともとしゃべることが不得意なのである。子供の時分から人と付き合うよりも書物と付き合ってきたわけで、・・・」
題名は名スピーチ集だが、面白いのは1/3位だろう。現場で話を聞けば、会場の雰囲気にのって十分楽しんでしまうのかもしれないが、本で読むとつい冷ややかな目で距離を置いて批判的に読んでしまう。


その他
ユーモアについて アルフォンス・デーケ
アジアの子供と読書 高樹のぶ子
私のアラビアンナイト 下重暁子
天才を生む土壌と国家の品格 藤原正彦
遊び少々 中西進
私にとっての大阪と東京 眉村卓
中国と私 浅田次郎
まさかおいらが茶の湯とは… 山本一力
私の生きた時代と『永遠の都』 加賀乙彦
老いと文学・老いの文学 辻井喬
遅筆生活四〇年 井上ひさし






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