池上彰の「そうだったのか!中国」集英社 2007年6月発行を読んだ。
全体的には穏当な表現であるが中国に批判的である。というか、私には正当な評価、表現と思える。17章にわかれているが、共産党誕生以降の中国の歴史が12章と主体で、反日、格差社会、環境、軍拡など現在の問題点が5章で、若干突っ込みが足りず、物足りない。
著者の池上氏は元NHKの記者で、「週刊こどもニュース」のお父さん役でご存知の人も多いと思う。写真も多く、要領よくわかりやすくまとめられているので、現代中国の歴史、現状の問題点をおさらいするには最適な本だと思う。
( )は私の感想
近代史
(ほぼ実時間で生きてきた私にはとくに新しい情報はないが、ポイントを要領よくまとめてある)
・毛沢東が共産党の指導権を握り、国民党を台湾に追い落とし中国全土を支配する。
・共産党と政府の2体制での国家統治の仕組みを図で説明。
・封建社会から一時新民主主義を経て社会主義へ体制変革する。
・百花斉放・百花争鳴で共産党への批判を呼びかけたが、批判が噴出すと弾圧を始める。これ以降、指導者への批判がなくなって独裁へ進む。
・大躍進政策で、理論・実情を無視した農業、各家庭での悪品質の鉄鋼生産が行われ、虚偽に成果報告がなされた。
・指導力を失った毛沢東は紅衛兵をたきつけ文化大革命を起こし、大混乱に。
・ 以下、チベットを侵略、ソビエトとの決別、日本との国交正常化、鄧小平の復活、一人っ子政策、天安門事件と続く
(右往左往の政治のゆれは、共産党独裁体制である限り続くだろう。最低限、情報公開を進めるべきだ。でないと、その影響はもはや、世界に累が及ぶ。)
対日本
田中角栄と、周恩来の日中首脳会談で、中国は損害賠償を放棄したが、「日本の軍国主義者と日本人民は別。日本人民も戦争の被害者」との論理で反対勢力を納得させた。したがって、A級戦犯も祀られている靖国神社への日本国首相の参拝には抗議せざるを得ない事情もある。
(国家として賠償を放棄したことや、日本からの援助でできた建物などを中国国民に知らせない態度は、あきらかに政府の意図的反日操作である。)
江沢民は天安門事件収拾のために愛国教育を進め、自分の権力基盤確立のために、日本に強い態度で臨み、反日を進めた。しかし、反日運動が暴発し、政府は抑えなければならなくなった。
(胡錦濤になって事情は変わって極端なことはなくなった。話し合いは歓迎するとして、対応するときに冷徹な気持ちは必要だ。そもそも、反日教育はなくなっていないのだろう。)
軍拡
小国ベトナムに大敗し、湾岸戦争で米国の近代兵器におびえ、軍の近代化にのりだした。
地球を周回している人工衛星をロケットで破壊する実験に成功した。これにより、日本や米国の偵察衛星を利用するミサイル防衛システムを無力化することができるようになった。
軍事費を透明化し、防衛構想を明らかにしないかぎり、世界の中国脅威論は収まらない。
(表向きの中国の軍事費も日本のそれを抜いているのではないだろうか。私には日本の軍事費も多いと思うが、中国の伸びは異常で、周辺に軍拡をもたらしている。そもそも、今、中国を侵略しようとする国があるだろうか?中国はいったい何におびえているのか。)
(しかしながら、こんな中国に反発するだけでは、良い方向に進まない。なんとか、日本の実情を話し、なだめながら、相手の意図を汲み取って互いに妥協するしかない。それが国益を守る、国と国の外交だと思う。中国のクシャミで世界経済が風邪を引く状態になって、逆に中国もそうそう無茶なことを言えなくなってきていると信じたい。)