政府の過ちを正せるのは市民だけだ(チュムスキー氏 中日新聞2014年3月8日)

2014-03-12 22:19:31 | 日記
政府は「心配ない」とウソをつく

 「無防備な子どもたちが、放射線の危険にさらされている。恐ろしいことだ」。上智大での講演会で来日したのを機に東京都内のホテルで四日、福島の親子ら三人と面会したチョムスキー氏は嘆いた。

 三人は、福島市に住む武藤恵さん(40)と長女で小学三年生の玲未(りみ)ちゃん(9つ)、福島県郡山市から静岡県富士宮市に自主避難した長谷川克己さん(47)。長谷川さんは妻、小学二年生の長男(8つ)、長女(2つ)の四人暮らしだ。

 武藤さんの自宅は福島第一原発から約六十キロ。「政府は換気扇を閉めて、外出する時はマスクを着けるように、ということしか教えてくれなかった」と当時の混乱を振り返った。

 山形県に週末だけ自主避難していた時期もあったが、経済的な問題もあり、やめた。「事故後、子どもの体調が良くない」という。国は緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による放射能汚染の情報を公表しなかった。にもかかわらず「『安全宣言』をした。周りは事故前と変わらない日常に戻ったように見えるが、そうではない」と、放射能の恐怖にさらされている現実を訴えた。

 長谷川さんは、郡山市で介護事業を営んでいたが、事故の五カ月後に自主避難した。「将来、健康被害が出たら、お金で償われても元には戻れない。子どもを守ろうという思いだけだった」。避難先の静岡での生活については「工事現場の日雇い作業員をして食いつないだこともある。経済的に安定せず、心もとないです」と切々と語った。

 自主避難者は十分な補償が受けられない。東電からの補償金も避難区域内に住んでいた避難者に比べて乏しく、経済的な負担が重くのしかかる。

「子どもらがどんなに不安でも、政府というのは心配するなとウソで言い含めようとするものなのです」。チョムスキー氏は、米国とソ連の緊張が核戦争の寸前まで高まった一九六二年のキューバ危機のころのことをとつとつと語った。「私の娘の友達の中には、戦争になれば生き残れないと不安そうな子もいた。米政府は『米ソの緊張関係は危なくない』と宣伝した。私の娘は学校の先生から『核戦争が起きても机の下に隠れれば大丈夫』と言われたんですよ」

 緊張した面持ちでチョムスキー氏の顔を黙って見つめていた玲未ちゃんは、周囲に促されて「武藤玲未です」と自己紹介。チョムスキー氏も、この時ばかりは柔和な表情を見せ、「日本に五十年ぐらい前にも来たことがある。私の娘がちょうどお嬢ちゃんと同じくらいだった」と懐かしがった。

◆子どもを見よ

 チョムスキー氏は、福島第一原発事故の後、二〇一一年九月に東京都内で開かれた脱原発集会の際、支持を表明する連帯メッセージを寄せた。福島の親子らと面会したのは、福島の子どもたちの「集団疎開裁判」を支援してきた縁からだ。一二年一月、「最も弱い立場の子どもらがどう扱われるかで社会の健全さが測られる。私たち世界の人々にとって裁判は失敗が許されない試練だ」と集団疎開裁判を支持するメッセージを寄せている。

 集団疎開裁判では、郡山市に住む児童と生徒十四人が、空間放射線量が年間一ミリシーベルト未満の地域に疎開して教育を受ける措置を市に求め、仮処分を申し立てた。

 司法の判断はつれなかった。福島地裁郡山支部は一一年十二月、申し立てを却下。仙台高裁も一三年四月「福島原発周辺の児童・生徒の健康に由々しい事態の進行が懸念される」と指摘しながら抗告を却下した。

 福島の親子らは四月にも、約十人の子どもを原告として、地元の自治体を相手に集団疎開を求める行政訴訟を起こす予定だ。

 チョムスキー氏は、親子らに「政府に対する外圧を上手に使うことだ」とアドバイスした。「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)などの権威ある国際的な団体と健康被害の調査について連携し、放射線の被害を広く訴えることもできる。日本政府に被害を隠すことは恥ずかしいと思い知らせられればよい」

 「日本は広島、長崎の原爆を経験し、放射線の怖さを知っているはず。それなのに、政府が被災者の不安に寄り添わないとは。言葉にならない」と日本政府の対応を厳しく批判した。
◆市民運動が道

 チョムスキー氏は、本紙のインタビューに対し、安倍政権についての懸念も口にした。「日本の超国家主義者は平和憲法をなくそうとしている。安倍晋三首相らが靖国神社に参拝し、従軍慰安婦を否定しようとするのは、日本を帝国の時代に戻そうという狙いがあるのではないか。ヒトラーが権力を掌握していく過程を思い起こさせる」

 集団的自衛権の行使容認についても「集団的自衛権と言えば聞こえは良いが、実態は侵略戦争だ。米政府も戦争を国防と言い換えるが、それに似ている。だまされてはならない」と指摘。自民党の石破茂幹事長が特定秘密保護法の抗議活動に対し、「テロ行為と本質は変わらない」と言い放ったことに触れ、「政府は市民の反発を恐れている。テロリストというのは、権力側が反対する市民にレッテルを貼っているだけだ。強制や弾圧を正当化する言い訳にすぎない」と話した。

 「政府の過ちを正せるのは市民だけだ。困難だろうが、福島や日本全体で、政府が無視できない運動をつくり出してほしい。地域の市民のつながりを強化してほしい。それこそが状況を改善していく道だ」

 (林啓太)

 <ノーム・チョムスキー> 言語学者、哲学者。1928年、米国フィラデルフィア生まれ。ペンシルベニア大を卒業し61年からマサチューセッツ工科大(MIT)教授。50年代に言語学における革命的な理論を発表し「現代言語学の父」と呼ばれる。

 一方で、ベトナム反戦運動に携わり、人権や平和に関して積極的に発言。今年1月には、米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設について、「沖縄の軍事植民地状態を深化、拡大させる」と反対する声明を他の有識者とともに発表している。

 著書に「統辞構造論」「メディアとプロパガンダ」「秘密と嘘と民主主義」など。

岐阜県環境影響評価審議会 議事録(その2)2013年12月24日)

2014-03-09 08:51:33 | 桜ヶ丘9条の会
議事録(その2)は、動植物、生態系についてです。

【会長】
それでは区分 C、動植物、生態系に移ります。

【委員】 意見の概要等で皆さんが心配されているのは、水環境、もう一つは生物の多様性に関わって東濃の特異な
貴重な小湿地の消滅の心配が挙げられているわけでありますけれども、この中で、瑞浪、土岐、私が知る限 り御嵩だとか大森だとかあのあたりの小湿地は、土岐砂礫層の中に形成されているのですけれども、その下 は花崗岩のはずです。意見書の見解の中に、文献調査によると水を浸透させにくい粘土質の層云々とありま すけれども、実は粘土層ではなく、岩盤の上にのっかっているのではないかという気がします。この点につ いては、特に砂礫層について、あとで地質の先生に補足をしていただきたいと思いますけれども、そうだと すると岩盤ですから、少しでも亀裂ができると水ははけてしまうという心配がでてきます。粘土層があれば それは保全されるわけですけれども、そのあたりどうとらえるか。粘土層があるからその心配はないと書い てありますけれども本当にきちっと保全されるのかどうかという心配があります。本当に、この辺の植物と いうのは、環境さえよければすごく回復するものが多い。土砂をとったあとの池の周りに、また新たな植物、 モウセンゴケだとか、ミミカキグサだとか、そんなものがどんどん入り込んでくるというように、そのくら い強いのですが、いったん陸地化すると駄目です。水がきれると、本当に弱いものです。ですから、その辺 をどう保全するかということです。
それから具体的な植物、代表的なものは書かれていますけれども、調査の範囲で、意見の概要の中でご指 摘もあったのですけれども、全部調べていないじゃないのか。例えば、小湿地も他にあるよと、それに対し て事業者は、保全の観点から出してありませんと書いてありますけれども、実はもうわかっているのです。 すでにどこにどれだけあるかについては、すでに調べられているのです。逆にそれが公になっていなければ、 知らなければ、逆に私がもっと心配しているのは、工事によって無くなったとしても、何もありませんでし たよ、で済んでしまう。これで終わってしまうわけです。そういうことはものすごくあるのです。今までも、過去の例で。そういうことをすごく今心配しています。それに伴って、もうひとつは、代表的なシデコブシ だとかハナノキだとかそういうものの名前が出ていますけれども、あるいは東濃の湿地特有の、クロミノニ シゴリとかミヤマウメモドキだとかそのような湿地性の植物群、そういうものもありますので、大事にして いけたら多様性は保たれるのではないかと思うのですけれども、そのあたりの問題が一つあると思います。
私の方からも意見を出させていただいたのですが、5km ぐらいごとに脱出用の非常口が作られるという ことを聞いていますけれども、その位置がまだ明確にはなっていません。これからそういうところが明確に なったらきちっと調査されて、しかるべきものが見つかったらそのための対策を立てられるだろうと思いま すが、そこまではいいわけです。その後です。私はこの前から何度も申しているのですが、そこには業者が 入って、先ほどもありましたとおり、土砂の運搬が行われる、それからそれに伴う工事等により、色々な意 味で周辺部が破壊されることが多いわけですけれども、それらは直接、JRさんが全うされるわけではない だろうと思います。下請けが行うかもしれないとなった時に、取り付け道路も含めてそのあたりの周辺部で、 本当に小さな湿地と貴重なものが意外と見過ごされて、破壊されていきやすいということが、そのあたりを どういうふうに指導されるのか。若干の回答をもらっていますけれども、そういう不定期に採用する業者を 集めてどういうふうに指導されていくのか、最小限そういうことをしてもらいたい。そういう部分で、実は、 破壊される自然の方が大きいわけです。その部分を考えていただきたいということを思います。また戻りま すけれども、例えば、シデコブシがどこにあるという情報は出すべきであると思います。さきほどの断層の 話ではないですけれども、出さなくて知りませんでしたというのは、やっぱりダメなのではないかと思いま す。情報をだして、しかるべき、差しさわりがある場合はこういう方法で、こういう対応をしましたという のを、きちっと言えるようなものでなければならないのではないかというふうに思います。保護するときに いつも論点になりますが、この情報を出したりなんかすると、すぐに無くなってしまうのではないかという 議論がいつもなされるわけですけれども、そうじゃなくて、知ることによってそれをどう保全していくのか ということを考えていく方が、私は大事なんじゃないかというふうに思っています。

【委員】 地下水についてはいろいろなことがでていて、湿地に関係するところは、地下水については先ほどお二人の委員からお話が出ましたので、そこで出なかったことについて申し上げます。資料4の3ページの真ん中 あたりに書いてあるのですが、地下水を利用した水資源で、地下水については予測の不確実性があるとあり ますが、調査が十分であれば、予測できますので、いろいろな研究されて準備書を書くようによろしくお願 いします。戻りまして、土岐砂礫層、要するに東濃の湿地をつくる土岐砂礫層と書いてありますが、粘土層 の上の礫層の湿地というものはありません。粘土層の上の礫層に何ができるかというと、そこには湿地はで きません。そこには基盤ができるだけです。ちょっとした水の流れであって、そこは湿地ではありません。 私が野外で見たのはほぼ 100%硬い岩盤の上にのる礫層、そこに湿地ができる。ほぼ、間違いないと思いま すが、そういうことを書いた文献はありませんので、あらゆる現地へ行って見ていただければ素人でも分か ります。礫層があって、その下は1mも掘らなくても岩盤が出ます。それは花崗岩と言われましたが、美濃 帯の堆積岩類でもそうですし、他の瑞浪層群だってそうです。瑞浪層群の泥岩でも砂岩でもなんでもいいの ですが、つまり硬い岩盤がある上に礫層の湿地は、ほぼすべてだと思いますので、是非、現地で確認してい ただいて、本当はしっかり押さえていただければ、それは地質に対する分布構造と、湿地ができる岩盤の標 高というのは一定です。自然の現象は現地で見ないとだめです。文献には、色々ありますけれども、現地を 見ないで書いたものがたくさんある。そういう文献を見て、こういう文献を見て書きましたではだめなので す。現地を見ないで書いたものでは、いくら立派な人が書いても実際とずれるのです。破砕帯なんていうも のも、現地へ行けば、ちょっと地質が分かれば、すぐにわかります。恵那山トンネルの多量の出水がありま す、あれは硬い花崗岩が阿寺断層の延長線上で、花崗岩が全く砂みたいな粘土になってしまって、それが 20 m~30mあるのですが、それもわかっているのですが、最初に調査をしなかったのであれだけの出水になっ ています。地下水については、湿地の湧水など、現地に行けばすぐにわかりますので、調査をよろしくお願 いします。

【事業者】 湿地の話ですが、準備書に必要な調査は行ってきております。ただ、専門の先生方からみればそこはもう少し書いた方がいいのではという意見もあるということで、今後検討してまいりたいという考えでおります。 準備書としては必要な文献は集まっていると考えますし、決して全く調査をしていないということではござ いませんので、専門の先生方からすると十分ではないというふうなご意見もあるかもしれません。これは他 の事業から考えて準備書としては十分な水準であるというふうに考えています。
それから、湿地の成り立ちということでございますけれども、この準備書資料編の環 12-1-13 ページをお 開きください。
こちらはこれまでも説明会等で、示した図ということで、湧水湿地の概要という図になりますが、その図 の出典は「里山の生態学」という本です。模式図ということで書いてあります。砂礫層と基盤岩盤、砂礫層 の中にも粘土質のものが入っているということから、決して基盤岩の上にそのまま湿地があるというわけで はなく、何らかの不透水層があるから湧水が出てきているということです。メカニズムを含めた資料収集、 現地調査等を行ったうえで当準備書での記述をしています。
それから、希少種に関しまして、公表したらどうかとそういったご意見もありますが、私どもとして、猛 禽類等を含め、動物・植物の希少種、地点情報を出してしまうと逆にその生態を脅かしてしまうので、そう いった観点から位置情報につきましては、今回は示していないということです。ただし、そういうものがな いと議論ができないというのであれば、それは非公開の場で議論するといったようなご配慮をいただいた上 で、検討するということはあろうかと思います。
非常口の位置ということで、5km毎というお話がありましたが、これは大都市部の方は5km毎に概ね 立坑というものを作って非常口を作ります。岐阜県内は、山岳部であり、決して5kmピッチというわけで はありません。どのような位置にあるのかというのは、5万分の1の図面に書いてあります。例えば、先ほ どご覧いいただいた準備書資料編の環 12-1-2 を見ていただくと、調査位置図ということで、非常口には丸印 が付いています。5万分の1で直径1cm の円で示しています。このあたりに非常口を作るということです。 この丸い円を含む範囲で動植物調査を行っています。改変していく範囲周辺というところではどういったも のがあるのか、そういったことの把握というものを行ったうえで今回の準備書は作成しています。ご理解を いただきますようお願いします。

【委員】 植物の先生からもお話が出ていますが、埋め立てというか、トンネルの残土についてですが、具体的な工事計画で場所等はっきりしていないようで、それがきまったらということで、アセスもこれについてはない というお話だったと思うのですが、とはいえ、現実に、この後、どんどん工事・建設等が進めば、それから 残土処理のことを検討するということでは、スケジュール的に非常に不備があって、最後の方、これだけの 土砂を処分するところが足りなくなってこないかというこういう心配があるのですが、もう少しこの段階で ある程度、残土についてもどのような時期に検討するかというスケジュールなどを是非示していただきたい なと思います。
それから、見解書の 110 ページのあたり、事業者の意見として書かれているのですが、今回、生物につい ては、かなり影響が低減されていることは確かだとは思います。しかし、先般、現地を見た車両基地につい ては、確認した時点でもオオタカが飛翔しているというようなことがあるのですが、65ha という非常に大 きな広い規模の車両基地が計画されています。その中でこの希少種の保全措置として、オオタカなどへの影 響については人工の代替巣等で保護していくというようなことが書かれているわけですが、人工の代替巣等 についてはちょっと疑問もあります。それはそれでいいと思いますが、ただ、人工の巣が直接、有効という のは、その人工の巣が、実際の営巣木を直接事業で撤去しないといけない場合とか移動しないといけないと かこんなようなときには、人工の巣を作って、それにやむを得ず移動させるという措置はそれなりの効果が あるのではと思います。今回のこの車両基地の 65ha、ここがこのオオタカにとって非常にいい環境ですの で、そのオオタカ等が営巣あるいは餌の採取場所として利用している場合、そこの 65ha が消失するという ことは、それに対してどのようなお考えを持たれているのか、代わりの巣を作ったとしても元の巣を利用し ていたオオタカが餌をとっているところが、これだけの規模で消失することに対して、どのようなお考えなのかもお聞かせいただきたいと思います。

【事業者】 発生土の処理場については、確定していただきたいということですが、現在、岐阜県を通じて各市町の方に照会をかけている状況であります。実際、具体的な場所が決まればもうちょっと深い話もさせていただけ るということですし、どのようなスケジュールでやっていくのかというのも示すことができると思うのです けれども、現在のところでは、そこまでは示すことができないという状況です。ご理解いただきたいと思い ます。
車両基地のあたりのオオタカというお話がありました。オオタカにつきましては、代替巣は保全措置とし ては行いません。オオタカに対する保全措置は、発生源対策ということで、なるべく低騒音にするとか、防 音シートを使用するとか、トンネルの入り口の防音扉、発破等の騒音を低減するための措置を行うことで、 我々としてできることをまずやりたいということです。オオタカの行動に関しては、具体的に概要について 調査を行っておりまして、どのあたりに巣があるとか、どのあたりが主要な行動域か、そういったような解 析は行って把握はしております。そのうえで何らかの影響を受ける可能性があるというふうに判断をしてい るものにつきましては、事後調査をしっかりと行うと考えております。

【委員】 生息場所が改変されるということの心配に対してのお答えをいただいたと思いますけれども、やはり工事をする時期により、とても影響が大きいのではないかなと思うのですが、車が走ったり、残渣を運んだり、 営巣しはじめる時期とか、その時期の範囲といいますか、そういうことも対策として見込んでおられないと 理解が得られないのではないかというふうには思います。実際にコンディショニングというのは、騒音をで きるだけ小さく工事をするということでしたけれども、おそらく騒音対策だけではなかなか難しいのではな いかというふうに思います。

【事業者】 そういったところはご意見にありましたように、状況に応じて対策をとっていきたいというふうに考えております。よろしくお願いいたします。

【委員】 現段階でオオタカについての人工巣を設置する考えがないのであれば、この見解の中では代替巣を作ることもあるということで、対策としては目玉的な印象を取られがちだと思われるので、この辺の書き方とか出 し方をもう少し考えるとよいかなというふうに思います。

【事業者】 今回、私どもは、この調査で必要な、影響を受ける可能性がある猛禽類として、オオタカのほかにハチクマとサシバを入れております。こちらにつきましては、今申し上げたような人工の巣を設けて、そちらの方 に誘巣する対策というものを考えております。オオタカについては、今申し上げたような人工的な巣を作る ということは今のところ考えておりません。

【委員】 実際に気をつけながら工事を進めていく段階で、抽象的で答えにくい質問かもしれませんが、影響がなかったというふうに判断する根拠というかその辺は実際にはどうでしょうか。気をつけてやったから多分大丈 夫である、だから影響がなかったというふうに解釈するのか、それとも工事前と工事後、できた後で影響が あったかどうかという判断基準といいますか、事後に新たな対策を立てるということを考えるうえでの判断 基準について特に設ける気があるのかは、非常に問題となるところですが、もし何らかのアイディアとか参 考にされるような資料があるのであれば、教えてください。

【事業者】 具体的に国が定めた基準はありませんので、営巣地ごとに専門家の先生のご意見を反映していきながら進めていくことを考えています。事後調査につきましては、準備書の 8-4-1-111 ページのところに、動物につ いての事後調査の時期、場所、調査方法を示しています。ハチクマ等の猛禽類については、工事中及び工事 後の繁殖期に営巣地の周辺での生息状況について任意観測を行っていきます。実際どういった地点において、 結果を踏まえてどのように判断するのかということについては、私どもの調査結果と専門家の意見というも のをまとめて、示すことになると考えています。
【委員】 細かいところですが、事後調査の中でクマタカを外した理由というのは。

【事業者】 クマタカについては、私どもが改変する区域とは離れた区域に生息しているということで、影響を受ける
可能性はないというふうに判断しました。

【委員】 岐阜県での影響評価で行われたのでなんですが、多分、他県では入るところもあるのではないかというふうに想像するのですが、他県で調査されて岐阜の影響があるかというのは、岐阜の調査と抱き合わせで評価 をした方がどうせ県をまたいでいますので、そういう意味でここを埋めた方がいいのではないのかなという 考え方をご紹介したのですが。

【事業者】 鳥類、猛禽類を調査するなかで、クマタカがいた事例というのは当然存じ上げているのですけれども、距離が離れているということ、それから、彼らの生息環境は私どもが工事する場所から影響を受けない場所で あろうという判断をしたということです。例えば、長野県側から飛んでくるところを見たということはなか ったということです。ちなみに、数字で申し上げますと、私どもの工事範囲から3km以上離れている所と いうことですので、そこまでは影響はないであろうということで判断して今回は全く触れていません。


再び原発依存 あり得ぬ(中日新聞 2014年2月26日 特報)

2014-03-05 16:36:30 | 日記
 東京都知事選などの結果を受け、政府は二十五日、原発の再稼働を進めるべく、新たなエネルギー基本計画案を示した。来月中に閣議決定される見通しだ。原発について、当初案の「ベース電源」を修正し「ベースロード電源」と位置付けたが、要は原発社会に引き戻すということ。三年前の福島の事故直後、なぜ原発と決別しなくてはならないかが広く語られた。主要な理由を再び確認したい。

◆規制は最低基準

 基本計画案では、原発を「優れた安定供給性と効率性を有し」と記した。しかし、福島原発事故の原因はまだ分かっていない。東京電力や政府は津波説をとるが、国会の事故調査委員会は「地震動による損傷がなかったとはいえない」とする報告書をまとめた。

 国会事故調のメンバーの一人で、元原子炉圧力容器設計者の田中三彦氏は「原因に加え、シビアアクシデント(過酷事故)に至った過程など分かっていないことは多い。津波以外に原因があるとなれば、さらなる対策が必要になる。だから、政府や東電は認めたくないのだろう」と話す。

 計画案は再稼働について「原子力規制委員会の専門的な判断により、世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には進める」と明記している。

 だが、市民団体「たんぽぽ舎」(東京)によると、先月二十日の国会内の集会で、原子力規制庁の担当者は「規制基準を満たした原発でも事故は起きる。この基準は最低のもので、あとは事業者の責任」と発言したという。田中氏も「そもそも規制委に審査する能力があるのかという問題もある」と疑問を呈する。

◆避難計画ずさん

 規制委は二〇一二年十月に原子力災害対策重点区域を、原発の十キロ圏から三十キロ圏へ拡大した。一三年二月には原子力災害対策指針が改定され、原発から五キロ圏は放射性物質の拡散前に避難、三十キロ圏は屋内退避、周辺で毎時五〇〇マイクロシーベルトの放射線量が測定されれば、避難するよう定めた。

 こうした方針に沿って、関係自治体では地域防災計画や広域避難計画づくりを進めている。だが、広域避難計画の有効性自体を疑問視する声がある。

 立石雅昭・新潟大名誉教授(地質学)は「五キロ、三十キロと範囲を決めたが、福島原発事故での被害は三十キロにとどまらなかった。風向きや強さによっては、さらに被害が広がっていた。範囲は原発の出力や地形によっても異なってくる」と、三年前の経験が生かされていないと指摘する。

 先月の中央防災会議では、高齢者ら災害弱者の名簿づくりを市区町村に義務付けることが決められた。立石氏は、先の大雪で関東甲信や東北地方で交通がまひしたことを念頭に「気候によっては、災害弱者の避難はさらに困難になるだろう」と推測。「地域住民の命を守る避難計画ができていない限り、たとえ技術的な基準をクリアしても、原発の再稼働はあり得ない」と断じた。

◆核のゴミどこへ

 原発は「トイレなきマンション」といわれる。使用済み核燃料の処分方法はいまだ見つかっておらず、再稼働させれば、状況が悪化することは必至だ。

 電気事業連合会によると、国内の原発に貯蔵されている使用済み核燃料は計一万四千三百七十トン。青森県六ケ所村の再処理工場には二千九百四十五トンある。貯蔵スペースに対する占有率が八割を超す原発は福島第一を含めて五原発に上り、再処理工場では98・1%に達している。

 国は地下深く埋める「地層処分」を前提に最終処分場の場所を探しているが難航。基本計画案には「国が前面に立って解決に取り組む」「対策を将来へ先送りせず、着実に進める」などの文言が並ぶだけで、具体策は示していない。

 北海道大の大沼進准教授(環境心理学)は「何十年も前から言われてきた課題だが、国も電力会社もずっと目を背け、ふたをしてきた。これ以上の先送りは許されない。原発への賛否にかかわらず、本気で取り組まなければいけない時期にきている」と指摘する。

◆悪夢のサイクル

 使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムとウランを取り出し、再び燃料とする流れが「核燃料サイクル」だ。回収したプルトニウムとウランで作る混合酸化物(MOX)燃料を高速増殖炉で燃やす計画が、福井県敦賀市の「もんじゅ」。MOX燃料を通常の原発の燃料とするのが「プルサーマル」発電だ。

 基本計画案は再処理とプルサーマルを「推進する」。もんじゅについても「克服しなければならない課題について十分な検討、対応」をするとして、断念してはいない。

 自民党の秋本真利衆院議員は「事実上、破綻している核燃料サイクルを継続すれば、負担は税金や電気料金として国民に跳ね返ってくる」と批判する。

 一九九七年の稼働開始を目指した六ケ所村の再処理工場は試験運転中。トラブル続きのもんじゅは実用化のめどが立たない。ちなみに、一二年度までのもんじゅの事業費は九千四百八十八億円に上る。

 再処理をやめると、六ケ所村の使用済み核燃料は青森県外に出す約束だ。核燃料サイクルを動かすための原発再稼働という本末転倒な構図が浮かぶ。

◆誰も責任取らず

 福島原発事故では、事故を起こした東電を破綻処理せず、責任をあいまいにしている。あれだけの事故で、東電も政府も誰一人、責任を取っていない。

 東電救済の枠組みは、事故後間もない一一年六月に決められた。政府は原子力損害賠償支援機構を通じて公的資金一兆円を出資。昨年十二月には、賠償や除染のための資金支援枠を五兆円から九兆円に拡大。汚染水対策にかかる費用六百九十億円も政府が肩代わりすることになった。

 そうした費用は、税金や電力料金の形で国民につけ回しされる。東電には生き残りのために、被害者への賠償額を圧縮しようという姿勢も見え隠れする。

 慶応大の金子勝教授(財政学)は「被害者を犠牲にし、加害者の東電を救う現在の政策はモラルハザード(倫理観の欠如)そのもの」と話す。事故を起こしても責任を取らずに済む前例ができれば、「再び原発事故を誘発する原因にもなりかねない」。

 東電だけでなく、株主や融資している金融機関を含め、責任をきちんと問うことは不可欠だ。金子教授は「ずるずるとした東電延命で、逆に将来的な展望が見えず、優秀な社員がやめている。事故収束作業にも影響し、被害回復の遅れにつながっている」と警鐘を鳴らす。

 (上田千秋、篠ケ瀬祐司)