核戦争回避声明 理念だけでなく行動を
核兵器を保有する米ロ英仏中の五大国が「核戦争を防ぎ、軍拡競争や核の拡散を行わない」とする共同声明を発表した。
声明は、米ニューヨークの国連本部で一月に予定されていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議=写真は二〇一九年四月の第三回準備委員会、共同=に合わせ、水面下で調整していたものだという。
中国を含む核保有国が対立を乗り越え、共通認識を示したことは評価に値するが、核軍縮は大きな進展がないままだ。理念だけでなく、具体的行動こそ必要だ。
そもそもNPTは六条で、核保有国に対し「誠実に核軍縮交渉を行う」ことを義務付けている。
ところが、二〇一五年に開かれた前回の再検討会議では各国の利害が対立。合意文書が見送られ、成果のないまま終わった。
当初二〇年春に予定されていた再検討会議はたびたび延期され、期待が集まっていた一月の会議も八月開催となった。コロナ禍とはいえ、交渉をこれ以上先延ばしするわけにはいかない。
世界にはまだ一万発以上の核兵器が存在する。米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約は二〇一九年に失効したまま。中ロは独自に核戦力を増強し、対抗策として米国は核の小型化を図っている。
北朝鮮が核開発を続け、イランも高濃縮ウランの製造を拡大するなど、核戦争につながる危うい動きは止まっていない。
核非保有国が危機感を強めていることは、核兵器を違法とする「核兵器禁止条約」を五十九の国・地域が批准したことでも分かる。
INF廃棄条約の実現に奔走した旧ソ連のゴルバチョフ大統領は昨年、本紙の書面インタビューに対し、米国とソ連は、何千ものミサイル、爆弾、核弾頭を蓄積し、自国軍を遠くまで派遣しながら、言葉では「平和を支持すると語ってきた」と指摘した。核大国の矛盾した姿勢を批判する発言だ。
ゴルバチョフ氏は、まず米ロが本気で核削減に取り組むことが大切と語る。この言葉を核保有国は真剣に受け止め、「核なき世界」実現のための行動を、直ちに始めなければならない。