甘い想定、計画ほころび 感染急拡大、医療体制新対策
2022年1月13日
■先手
「オミクロン株の急速な拡大の中でも患者が安心して療養できるよう、先手先手で対策を講じる」。十二日、後藤茂之厚生労働相は記者団に強調した。オミクロン株は重症化率が低い可能性が指摘されており、入院の必要がない軽症者や無症状者の対応が焦点となる。
「今後は自宅療養者の健康観察のボリュームが大きくなるだろう」。まん延防止等重点措置が適用された広島県。自宅療養するオミクロン陽性者も出始めている。
昨年十一月末、政府の要請を受け全都道府県が作成した計画で、一日当たり最大の新規感染者数を三百五十八人と見積もった。だが今月十日には最多の六百七十二人となり、想定を超える状況が続く。
自宅療養では「いかに症状の変化を見落とさないかということに尽きる」(担当者)とし、往診やオンライン診療などで健康観察に協力する医療機関の上積みを急ぐ。
東京都は十二日から、新たに約千の医療機関が協力し、都内全域で健康観察を実施する取り組みを始めた。都医師会と連携して自宅療養者用のオンライン診療システムも開始している。往診を行う医療機関も順次増やす計画だ。
■逼迫
昨夏の流行「第五波」では病床が不足し、自宅療養を余儀なくされた人が死亡するケースが相次いだ。要因の一つが、保健所の業務が逼迫(ひっぱく)し、健康観察が追い付かなくなったことだった。
こうした反省から、政府は保健所の業務を分散させるため、開業医などに健康観察を担ってもらう体制を推し進めて約一万六千医療機関を確保した。さらに厚労省は、保健所の指示がなくても医療機関が患者に治療を始めることも認めた。
厚労省中堅幹部は「保健所が再び目詰まりの原因になるのは避けなければならない」と引き締める。
■回避
政府は昨年十一月、第六波に備えて入院患者の受け入れ三割増を柱とする計画を決定した。岸田文雄首相は「感染拡大が生じても国民の命と健康を損なう事態を回避できる」と言い切った。
計画はデルタ株の二倍の感染力を想定し、ワクチン接種による抑制効果も加味されている。
ただ大阪府の幹部は「感染力は既にデルタの二倍を上回っている」と指摘。府は、今月下旬にも新規感染者数が想定超えの五千人強まで増えると試算する。ワクチン二回接種で感染する事例も相次いでいる。山口県の担当者は「現在は軽症や無症状が中心だが、新規感染者が沖縄県のような急激な増え方をしたら計画全体がどうなるか分からない」と危機感を口にした。
感染症に詳しい関西福祉大の勝田吉彰教授は、自宅療養者らへの支援を強化する政府方針を肯定しつつ「想定を超えた場合に備え、さらに代替策を作っておくのが望ましい」と訴えた。