中日春秋 2021年11月9日 中日新聞

2021-11-09 10:17:00 | 桜ヶ丘9条の会

中日春秋

2021年11月9日 中日新聞
 たしか米国の富豪の誰かであった。金は稼ぐより、使うほうが難しい。そんな発言を読んだことがある。使い道に困るほどの金を持った特別な人の意見に現実味は感じなかったが、現実のずさんな使い手の例を、最近見せられた気がする。わが国の政府である
▼会計検査院の二〇二〇年度決算検査報告で、コロナ対策などに関する適切さを欠いた予算の執行や無駄遣いが明らかになった
▼コロナ対策費に、約六十五兆円もの額を計上しながら、約二十三兆円を余らせている。巨額の予算を積み上げる一方で、生活や病気に苦しんでいる人に、有効な使い方が見いだせていなかったということだろう
▼上方のしゃれ言葉なら「下手な将棋」か。「金銀持って苦しんでる」である。感染症の話に不適切な例えなのをおわびしつつ書けば、国民から預かった大切な金を手にしながら、指し手ならぬ政府はうまく使わず、人々が苦しいまま−そんな絵を思い浮かべる
▼例のアベノマスクを調達したのはいいが、八千万枚以上の在庫があるそうだ。数億円費やしながら保管しているという。中小企業支援の持続化給付金についてはどういうわけか、委託が何度も繰り返されていた
▼総選挙を経て、新たなコロナ対策も検討されている。先の会計検査院の報告に「兎(うさぎ)のとんぼがえり」だった人は、政府にどれほどいるだろう。「耳が痛い」人である。