COP26 最後にして最大の希望
2021年11月4日 中日新聞
気候変動枠組み条約第二十六回締約国会議(COP26)のシャルマ議長は言った。「この会議は、われわれに残された最後にして最大の希望だ」と。気候危機の拡大による壊滅的な被害を瀬戸際で食い止めるための重要な会議が、英グラスゴーで始まった。
温暖化対策の国際ルールであるパリ協定は、気候危機の回避に向けて、世界の気温上昇を産業革命前から一・五度までに抑えるよう求めている。
そのため各国はそれぞれに、温室効果ガスの排出削減目標を掲げているが、条約事務局は、各国が掲げた二〇三〇年までの目標をすべて達成できたとしても、排出量は一〇年比で約16%増加すると分析、国連環境計画(UNEP)も、今世紀末までに二・七度上昇してしまうと予想する。
先進国と途上国が足並みをそろえ、目標をどれだけ引き上げ、対策を上積みできるかが、今回の最大の焦点だ。
目標引き上げに不可欠なのが、発電に伴う二酸化炭素(CO2)国内排出量の六割近くを占める石炭依存からの脱却だ。
石炭火力発電は液化天然ガス(LNG)の約二倍のCO2を排出する。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、未曽有の気象災害を回避するためには、石炭火力を三〇年までに約三分の二削減し、五〇年までには、ほぼ完全になくすよう求めている。
欧州では廃止の動きが加速しており、議長国英国は洋上風力など再生可能エネルギーを増強し、計画を一年前倒しして二四年十月までに、フランスは二二年、イタリアは二五年に全廃する方針だ。
一方日本は、石炭火力に固執する。先月閣議決定された第六次エネルギー基本計画では、総発電量の約三割を占める石炭火力を三〇年度には19%に減らすという。だが一日の首脳級会合で、ジョンソン英首相は、先進国は三〇年、途上国も四〇年までに石炭火力発電を停止するよう強く促した。
国内のみならず、バングラデシュとインドネシアで石炭火力事業を継続するなど、脱石炭の方針を打ち出せない日本は、これまで以上に厳しい批判にさらされよう。
「最後のチャンス」と言われる今回のCOP。日本としても石炭火力廃止の方向性と時期を明確に表明し、削減目標引き上げに弾みをつけるべきである。