一般的な商取引においてはお金を払う側が優位であって、受け取る側はお礼を述べる。
が、田畑の借地料においては、年貢というだけあって納める側が礼を述べながら払って回るのである。
払いに行くと、留守の家も多いが圧倒的に老人が留守番の家が多い。
お年寄りは毎年挨拶に伺うのを楽しみに待っていてくれる。
振り込む方法もあるが、「今年もありがとうございました」
「今年はどうだったえ?」
「まあまあだったぇて言わんばなんがんでねぇか」
こんなやり取りをしてお互いが安心するのである。
勿論、農業委員会を通して正式な利用権を設定している畑がほとんどではあるが、中には酒一升とか、5千円、1万円と慣例による借地料のところも多い。
2町7反の畑で地主が20軒。昼と夕方に回ってさらに留守の家が4軒。
今年はついに、たった一人のおばあちゃんが亡くなっていて年貢を納められなかった家もあった。
後継人の勤めている会社に行ったところ、「渡しておくよ」と、受け取ってくれた。
大した金額でないのでこんな方法でもトラブルにはならない。
耕作しなかった畑もあるが、納めるものを納めてすっきり納得して年を終わらせるのが自分の務めなのだ。