高嶋哲夫/作
NHK出版
高校生の部の課題図書です。
まずは、出だしに引き込まれる。
北海道の小さな町、内知町の小学校4年女子児童が「ふるさとの絵」で文部科学大臣賞を受賞する。
この事が全国紙で紹介され、観光会社から問い合わせが相次ぐ。
「緑の丘、紺碧の海、青い空に輝く太陽、そして風車」
景色はその通りだが、実は風車はない。
風車がないというと、観光会社も電話を切ってしまう。
そこで町長が立ち上がり、「町に風車」を作る計画を立てるのだ。
これによって、町興しをしようという考えである。
一基三億もする風車の予算で、町議会は賛否両論。
結局、町長がホテルや観光協会から集めた、たったの500万円で規模の小さな風車を手作りで作る事に決定。
町に1軒しかない鉄工所にその仕事が依頼される。
著者は慶応義塾大学工学部、大学院博士課程修了。
原子力学会技術賞を受賞している、工学博士である。
その知識が存分に披露され、力学・構造学など、風車を作るのに必要な話が盛り込まれ、なるほどと思う。
鉄工所一家の家族関係を軸に、物語がすすみ、風車の仕事により、離れていた家族がひとつにまとまっていく。
500万円(後にプラスされて600万円)で、風車は作れたのか。
ネタばれであるが、完成したものの、失敗に終わり、不幸な事故もおきてしまう。
けれど、物語の本番は、この失敗からであり、主人公ともいうべき優輝が、ここから猛勉強をして、本格的な風車作りにとりかかるのである。
タイトルのように、さわやかな風を感じられる物語だ。
私は、風車というとオランダにある、色とりどりのチューリップと一緒に写っている写真を思い浮かべるが、ここで作る風車は、表紙の写真のように、台座に扇風機の羽のような「ブレード」がついた、シンプルなもの。
風力発電で、自然エネルギーを使用する、エコ環境に貢献するものなのである。
観光用の飾りでない、実用的なものなのだ、と初めて知った。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます