しいかのブックトーク

毎月読んだ本や日常の諸々を記録します。

ヴェルレーヌ詩集

2007-09-23 23:48:55 | インポート

Vurure_2  堀口大學  訳    新潮文庫

 なんといっても有名なのが

 『秋の日の ヴィオロンの ためいきの 身にしみて 
  ひたぶるに うら悲し。  
  鐘のおとに 胸ふたぎ  色かへて  涙ぐむ 

 過ぎし日の おもひでや。  げにわれは うらぶれて こゝかしこ 
 さだめなく とび散らふ 落ち葉かな。』

 これは、上田敏『海潮音』にある有名な名訳。

 すばらしい訳で、胸にぐぐっとせまるものがあります。

 けれど、堀口氏の訳はこうです。

『秋風の ヴィオロンの 節ながき 啜り泣き もの憂きかなしみに

わがこころ 傷つくる。

時の鐘 鳴りも出れば せつなくも胸せまり 思いぞ出づる 来し方に 涙は湧く

落ち葉ならぬ 身をばやる われも

かなたこなた 吹きまくれ 逆風よ』

 訳者によって、こんなに違うなんてね。

 この頃の訳し方って、美文調で、とてもゴロがいいのだけれど、翻訳者の個性が強烈に出ている感があります。

 それはともかく、ヴェルレーヌ詩集、初期の「土星の子の詩」から彼の人生の折々に心の内側を反映するような詩の数々、解説と共に読んでいくととても興味深い。

 ランボーとの事件、美少年好き、飲酒、不幸な晩年だけど、詩から湧き立つイメージは、心の叫び、ストレートな言葉で、これが読む人の心を揺さぶるのかなあと思う。


華族家の女性たち

2007-09-07 12:10:32 | インポート

Kazokuke  小田部雄次 著   小学館

  明治二年に華族制度ができてからの華族、特に女性を中心にして、制度が廃止になるまでの物語。

 特権階級であった華族の生活ってどんなもの?

 一般のお手本になるべき華族の女性達は、そのファッションや行動が注目を集めたそうで、美人が多いのは、権力のある男性は美しい女性を求め、また手に入れやすいところから、その娘も美貌を受け継ぐという事で、美の遺伝子が継承されていく。

 華やかな鹿鳴館時代もあったが、 戦時中は天皇や皇后の代理として、夫は戦地へ、夫人は慰問へと活躍したが、戦後の財産税法や華族制度の廃止で、生活の困窮や身を落とした華族も多々あったという。

 写真を見ながら、各華族の内実を追っていくのは、とても興味深い。

 巻末には全華族の一覧表が載っている。