明日、1月21日(土)より映画が公開されるので、それに合わせてUPしようと思っていました。
「僕の記憶は80分しかもたない」という博士。 その博士に合わせて心を砕く優しい家政婦と息子のルート。
登場人物が善人ばかりなので、とても純粋で静謐な物語である。
物語には、色々の数式が出てくる。 数学の苦手な私はいちいち理解できないのだけど、作者の小川氏は、数学者の藤原正彦氏に会ってインタビューしたり、数学の本を読んだりして、この本を書いており、数学という今まで別世界であったものにちょっぴり近づいた、親しみを持ったという感がある。
前にブックレビューした藤原氏の本にもあった、「フェルマーの最終定理」がここでも出てくる。 一生をこの証明にかける人がいるというのは、すごい事実である。
友愛数、素数の美しさには、なるほどね、と思い、ちょっとだけ数学に詳しくなった気がしてしまう。
ところで、主人公の私と、博士の間には、どんな友愛感情があったのだろうと考える。下世話な小説なら、博士と私の間で何かあったりするのだけれど、この小説では、そういうものが全くなく、まことに綺麗な関係なのである。
そして、それが12年も続いていくという、心と心の結びつき、尊敬、優しさ。
きれいな、きれいな物語である。